コンサルタントコラム

“最強の統計学”をモノにするには?

2013年08月28日

コンサルタント

山田 真司

コンサルタント 山田 真司

はじめまして。山田真司です。 本年4月に入社し、東京都BCP策定支援事業を担当しております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

今、東京都BCP策定支援事業では、過去に参加した企業様を対象に
策定後の取組状況についてアンケート調査をお願いしています。
私も調査担当として、皆様のBCPの発展に寄与できるように
責任をもって回答結果の集計・分析を進めたいと思っています。
そこで、今日は“統計”についてお話ししてみたいと思います。

近頃、新聞や雑誌で「統計学」という言葉を目にする機会が増えていますね。
昨今の統計技術の発展には、じつに目覚ましいものがあります。
生産年の降水量や平均気温のデータを分析することによって
10年先のワインの品質まで予想することができますので、
分析結果は将来のワインの価格決定に大きな影響を与えます。
また、大リーグの世界では、
セーバーメトリクスと呼ばれる統計手法を駆使して
プレイヤーの昨シーズンデータを分析し、
次シーズンの優勝チームを予測しています。
各チームではこの予測データを元に選手獲得に奔走しているのです。
このように、今や統計は、
何十年と経験を積んだベテランのワイン評論家や
大リーガーのスカウトマンに匹敵する強力なツールになっています。
統計学を使いこなすことによって、
情報化社会、リスク社会を乗りきるためには欠かせない、
素早い意思決定、確実な将来予測を行うことができるのです。

しかし、とはいえ、統計学は決してとっつきやすいものではありません。
無味乾燥な数字の羅列を相手にする地味なイメージ、
高度な数学や情報処理の知識を求められる難解なイメージが強いと思います。
私自身、もともと根っからの文系で、高校での数学の成績は散々でしたから、
統計学なんて自分とは縁遠いものと決めつけていました。
しかし、あるときアメリカのドラマを見たことがきっかけで、
その苦手意識を克服しようと思うようになったのです。
それは「NUMBERS 天才数学者の事件ファイル」という、
天才数学者が数学を駆使してFBIと難事件を解決するシリーズです。
銀行強盗が次に狙うのはどこの銀行か、逃走犯が次に向かう場所はどこか、
誘拐された人質はどこにいるか、どうすれば犯人に罪を認めさせられるか。
主人公は数学や統計学を駆使してすべての答えを導き、犯罪を解決します。
このドラマは私に次のようなメッセージを与えてくれました。

“数学は公式や定理の寄せ集めではない、現実の社会を見通すツールである”
“数字に表すことで、今まで見えなかった問題も見えてくる”

当時、学習塾で講師をしていた私は、
なぜか、よりによって数学を高校受験を控えた中学3年生に教えていました。
数学嫌いが数学を教えるという皮肉な状況で、
公式や定理を教えるだけで精一杯の空虚な授業に悩んでいました。
そんなときに上記のドラマで統計学に目覚めた私は、
“数式を使って何を知りたいのか。
 知りたいモノをイメージできなければ、解けるモノも解けない”
という観点から、授業のやり方を180度変えることにしたのです。

まず、授業の始めにトランプの“大富豪”を取り入れることにしました。
ゲームですから、勝たなければ意味がありません。
そこで、勝つために必要な情報、たとえば
“A君がジョーカーを持っている確率は何パーセントか”
“そのカードを今出しても大丈夫か”
といったことを問題に立て、黒板で確率を計算していくのです。
こうして、何のために数式を解くのかという目的を明確にしました。
この授業で生徒たちと見つけた“大富豪の必勝法”(?)をひとつ紹介しましょう。
ある一つのカードの出し方で相手の手札の強さがわかってしまいます。
“大富豪”は、配られた手札を順番に場に出して早く無くすゲームで、
カードには3・4・5……J・Q・K・A・2という強さの順位があります。
前のプレイヤーより強い手札を出さねばなりません(“パス”時を除く)。
どうしたら相手の手札の強さを知ることができるでしょうか?

答えを言ってしまうと、ポイントは「9のカードの出し方」なのです。
3・4・5……J・Q・K・A・2のちょうど真ん中にあるのが「9」。
まだ双方の手札が相当数残り、将来の見通しが不確実な段階で、
(言い換えれば、カードを切るのに最もリスクの高い状況で)
「9」を出すことができるのは、強いカードを豊富に持つプレイヤーです。
(厳密には、「四分位数」という統計手法で「9」の重要性を導きました)
この法則を発見することによって、生徒たちは、
ゲームを有利に進めるという目的を統計学の手法で達成する、
という体験をできたのでした。
ちなみに、生徒たちはその後、全員が志望校に進学することができました。

数学が苦手だった私は、今では、統計士の資格取得を目指して勉強に励んでします。
目的のイメージをしっかりともっていれば、
統計学ほど強力なツールはほかにありません。
大した意味をもっていないと思っていた身近なデータが、そのとき、
実は宝の山であることを発見できたりするのです。
たとえばゴルフや野球のスコア表……
もしかしたらそこに、アッと驚くような凄い法則を発見できるかもしれません。
皆さんも、日常の生活や趣味のスポーツを題材に、
統計を活用する第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。