コンサルタントコラム

走り出す前に――あなたの歩き方、見直してみませんか

2013年10月09日

コンサルタント

南 明日香

こんにちは! コンサルタントの南です。
10月に入り、東京は涼しく、過ごしやすくなってきました。
運動の秋ということで、何か運動を始めようか、
とりあえずランニングから始めてみようか、と考える方も多いかと思います。
いいですよね、ランニング。
やる気と運動靴さえあれば今日からでも始められますし、
何より「走るにはどうすればいいか」は誰でも知っています。

でも、ちょっと待ってください。
あなたは「自分の歩き方」を客観的に人に説明できますか?
「歩くこと」はすべての運動の基本と言えますが、今までの人生の中で
「どうやって歩くか」を習ったことはあるでしょうか?

「歩き方なんか習わなくても、今、こうやって歩けるのだから問題ない」
と思うかもしれません。
しかし、本当に問題はないでしょうか?
歩き続けていると、体の同じ部位が痛くなったりしませんか?
それは体のどこかに負担がかかっているからに他なりません。
例えば、私は若干反り腰気味なので、
特に重い荷物をもって長時間歩くと腰のあたりが痛くなってきます。
そのたびに「ああしまった」と思って姿勢を正すことになるのです。
些細な不具合も、蓄積すれば慢性的な腰痛、
ひどくすれば腰椎椎間板ヘルニアといった故障につながります。
「歩き方」は運動をする上で、重要な意味があるのです。

また、「歩くこと」は、高齢になると特に響いてきます。
転倒して大腿骨を骨折し、寝たきりになってしまう…というだけではなく、
若いころから「歩く」ことで足腰を鍛えていないだけで、
老齢期の生活に大きく差がつくのです。
私の二人の祖母が良い例なので簡単にご紹介します。

私の二人の祖母は、ともに新潟県出身、
農家の長女で1歳違いという、非常に似通った出自です。
母方の祖母は90になる現在、
多少杖を頼りにしてはいますが、大過なく一人で暮らしていますが、
父方の祖母は何年か高齢者施設の世話になり、
特段足の骨折等の大きな怪我はしなかったものの、
最期の1年ほどは寝たきりに近い状態になって他界しました。
生まれの似ているこの二人の、
特に老齢期を迎えてからの生活の違いは、
「歩き」を含めた日常的な活動量の差でした。
父方の祖母は長く専業主婦で、腰を悪くしていたこともあり、
家事以外の用事で外に出たがりませんでした。
一方で、母方の祖母は70過ぎまで看護師として外で立ち働き、
85を過ぎるまで、必要があれば自転車に乗っていました。
このように、日常の些細な違いであっても、
「歩き」の蓄積は老齢期の生活の質に相当な影響を与えてしまいます。
老齢期になっても元気に過ごすためにも、
歩くことが苦痛とならないよう、一度「歩き方」を見直し、
故障の少ない「歩き方」を身に着ける必要があると言えます。

ところで、皆さんは
日本人と欧米人の歩き方が日本人と違うと感じたことはありませんか?
主な原因は服装の違いです。
日本でもこの100年ですっかり洋服が定着しましたが、
それ以前の日本人は和服に帯を締めて過ごしていました。
日本人に染みついた動き方の癖は、和服が基本になっているのです。
和服で望ましい歩き方は、
裾が割れないよう脚をほとんど持ち上げず、
小さい歩幅で地面を擦るように、
そして帯が崩れないように骨盤をあまり動かさない、
とても脚の動きの小さい歩き方です。
一方、スラックス、スカートが浸透している欧米では、
足を高く持ち上げ、広い歩幅で骨盤を前後に動かして歩きます。
遺伝子レベルで染みついた歩き方の癖を矯正することは大変ですが、
私たちも洋服に適した歩き方にシフトするのが理に適っていると思います。

そこで、脚の使い方、腕の使い方、足裏の仕方の3つについて、
人間の体の構造を踏まえた欧米人の歩き方のコツをいくつか紹介します。
ここから先は実践的な話になり、
「歩き」だけでなくランニング等にも応用できますので、
パフォーマンスを上げたい方も必読ですよ!

1.脚の使い方
皆さんは「脚はどこから始まっていますか?」という問いに
何と答えるでしょうか?
いわゆる「脚の付け根(股関節周辺)」と答える方が多いのではないでしょうか。
確かに、大腿骨は股関節で骨盤にはまっています。
しかし、大腿骨につながっている筋肉に目を向けると、
背骨の真ん中あたりより下から始まる「大腰筋」と、
骨盤を構成する腸骨から始まる「腸骨筋」で構成される、
「腸腰筋」という筋肉があります。腸腰筋は背中から始まり、
骨盤の中を通って大腿骨の内側にたどり着き、
上半身と下半身をつないでいるのです。
この腸腰筋は大腿四頭筋とともに足を持ち上げる役割を担っています。
つまり、欧米人のように足を持ち上げて大股で歩くためには、
大腿四頭筋と腸腰筋をうまく使う必要があるのです。
…と書くと、
「だったら解りやすい大腿四頭筋を鍛えればよい」
と考えるかもしれません。
確かに大腿四頭筋も重要です。
しかし、大腿四頭筋は人間の中で一番大きい筋肉のため、
多くのエネルギーを使うことになります。
皆さんは歩くたびにへとへとになりたいでしょうか?
私は嫌です。
そこで、効率よく疲れないで歩くために
腸腰筋を活用して歩くことが重要になってくるのです。
肝心の腸腰筋の活用方法ですが、
インナーマッスルである腸腰筋は意識がしづらいため、
まずは、背骨の真ん中あたりから
脚が伸びていることをイメージして歩くことから始めます。
これだけでも歩幅が広くなり、歩く速度がだいぶ変わるはずです。

2.腕の使い方
歩くときはどうしても脚の動きばかりに意識が行きがちになりますが、
「歩く」「走る」といった重心の移動を伴う動きは、
バランスをとるために上半身、特に腕を動かすことになります。
つまり、歩く際は腕の動きにも注意を払う必要があるのです。
しかし、欧米人に比べ日本人はあまり腕を動かさずに歩いています。
さてここで質問です。腕はどこから始まっているでしょうか?
もうお分かりかと思いますが、
筋肉を基準に考えると上腕骨の起点から先ではありません。
腕を構成する上腕骨には様々な筋肉がつながっているのですが、
そのうちの一つに広背筋があります。
広背筋は漢字のとおり、
骨盤の上あたりから始まっている背中を広く覆っている筋肉で、
腕を後ろに引くときに使います。
そして日本人は歩く際、特に腕を後ろに引く動作が小さいため、
意識的に広背筋を使う必要があるのです。
そこで、歩くときに腕は骨盤の上ぐらいから
始まっていることをイメージしながら
腕を動かして歩いてみてください。
背中、特に広背筋を使って腕を動かしていることが感じられるはずです。

3.足裏の使い方
脚、腕の使い方と同様、
着地から蹴りだしまでの足裏の動きは
歩くための推進力を得るために重要になります。
そして、歩く時でさえ脚(特に膝)には
体重の2-3倍の負荷がかかるため、
衝撃を脚やひざを痛めないためにも、
着地にも気を配る必要があります。
まず、着地は主に踵から。
これは、踵の骨は足首から先の骨の中では最も大きく、
荷重に耐えられる構造になっているためです。
そして踵から足裏全体を使って地面をグリップするようにし、
最後に足の指を使って蹴りだします。
特に足の指が使えるようになると、
地面をとらえやすくなり前に進むための推進力を得やすくなります。
なお、上記の着地の方法は
スニーカー等で足裏がある程度保護されている靴を
履いていることを想定した歩き方です。
近年流行りのベアフットランニング等では
違う着地方法の方が良いといった意見もあるようなので悪しからず。

いずれの場合も、
まずはどのような動きになるのか
一度頭の中でイメージしてみてください。
特に腕と脚の起点の考え方は、
見た目の体の構造とかなり違うので、
一度常識をリセットする必要があります。
イメージができるようになったら、
自分の体の使い方に意識を向け、まずは一つ一つ丁寧に実践してみましょう。

さて、体の構造と使い方の基本を踏まえた歩き方を
実践ができるようになったとしても、
人間の癖とは恐ろしいもので、気を抜くとすぐに元に戻ってしまいます。
そこで、今まで学んだ体の使い方を定着させるための方法について考えてみました。

それは、歩く中で簡単なPDCAを実践してみることです。
具体的には、

  1. どれぐらいの距離を歩くかを考え(=Plan)
  2. 歩き始め(=Do)
  3. 歩いている最中に歩き方や体に負担がかかっている箇所がないか意識し(=Check)
  4. 動きがおろそかになっているところがあれば修正する(=Act)

です。
いかがでしょう?
自分の体に意識を向けるだけで
簡単にPDCAを取り入れることができるので、
日常的に実践可能ではないでしょうか。

 

いやいやこれだけでは飽き足らない、
トレーニング等も盛り込んで徹底的に行いたいという方には、
もう少し長いスパンで、現状の把握から開始するPDCAサイクルを考えてみました。

自分の状態を知る(Check)
まずは時間をかけて丁寧に歩いてみて、
自分の癖を見つけてください。
この時、これまで私が紹介した体の構造や体の使い方を念頭に、
一つ一つの動作を意識して行うことが重要です。
併せて自分の関節や筋肉の中で不調がある箇所も
チェックしてみてください。
体のどこかに不調があるということは
そこに負荷がかかっていることになり、
何らかの改善策が必要になります。

歩き方を直してみる(Act)
Checkで改善点が見つかったら、
体の構造をイメージしながら、
一か所ずつ丁寧に歩き方を変えてみましょう。
例えば、私は腕を後ろに引く動作が弱いので、
腕は骨盤の上から始まっていることを
イメージして歩くことを心掛ける必要があります。

計画を立てる(Plan)
計画というと大げさになるかもしれませんが、
週にどれぐらい歩き、
どのようなトレーニングやストレッチを行うか…
といった計画を立ててみます。
また、癖というものは恐ろしいもので、
気を抜くとすぐに戻ってしまうので、
定期的にチェックする機会を設けることも忘れずに。

実行する(Do)
普段より長く歩いたり、普段よりも少し早く歩いたりすることでも
体を鍛えることは可能ですが、
ここでは+αのトレーニングやストレッチについてご紹介します。

1.腸腰筋を鍛える
腸腰筋には
以下のような比較的シンプルなトレーニングが効くといわれています。

(1) レッグレイズ:仰向けに寝て足を持ち上げる(できれば交互に上げ下げする)
(2) ランジ:立った状態から膝を90度に持ち上げ前に踏み出す

ただし、腸腰筋はインナーマッスルのため、
意識がしづらく、腸腰筋を鍛えているつもりが
他のアウターマッスルを鍛えていることが往々にしてあります。
そのため、特にレッグレイズをする際は、
できるだけリラックスし、ゆっくりとした動作で行うようにしてください。

2.ハムストリングスを鍛える
腸腰筋と反対の動きをするハムストリングスは、
体の後ろ側にある筋肉のため意識されづらいため、
腸腰筋とともに意識して鍛えておく必要があります。
レッグカール:うつぶせの態勢で膝を曲げ、踵をお尻に近づける
チューブ等で負荷をかける方法もありますが、
ハムストリングスを意識してゆっくり行うだけでも十分に効果があります。

3.足の裏を鍛える
見落とされがちな足裏を鍛えるには、
タオルギャザリングという方法があります。
やり方は簡単で、床の上にフェイスタオルを敷き、
タオルの端に足を置きます。
その状態で足指を使ってタオルを手繰り寄せてください。
反対側まで手繰り寄せたら1セット終了です。

4.ストレッチ
ストレッチというと
特定の部位を伸ばした状態で止める方法(静的ストレッチ)を
思い浮かべる方が多いかと思いますが、
実は目的に応じていくつかの種類があります。
ウォームアップには体を反復して動かす動的ストレッチか
バリスティックストレッチを、
クールダウンには静的ストレッチが適しています。
特に、静的ストレッチは体が温まっていない状態で行うと
逆に筋肉を傷めることもあるので気を付けて行いましょう。

以上で、現状の把握から始まるPDCAが1回実践したことになります。
このPDCAは歩きだけでなくスポーツでも応用可能なので、
定期的に運動されている方はぜひ試してみてください。

秋から冬にかけては絶好の運動シーズンです。
特に冬は外気温が低く、
体温を上げるために余分なエネルギーを消費することから、
実は運動によるダイエットに最適な時期でもあります。
故障を減らし、長く楽しく歩き続けるためにも、
今すぐご自身の歩き方をチェックし、歩きの中でPDCAを実践してみてください!