コンサルタントコラム

センセイの誤算

2014年09月24日

コンサルタント

滝沢 紀子

コンサルタント 滝沢 紀子

こんにちは。コンサルタントの滝沢です。
すでに夏が遠く感じられる昨今ですが、
私には、夏というと今でも忘れられない“冒険”の思い出があります。

今を去ること20余年。
小学校4年生の夏の課外授業のことです。
川の上、中、下流の形態や流れの違いを調査するために
山から海へ、市内を流れる地元の川を訪れました。

遠足気分の楽しい雰囲気の中、
上流でのお弁当タイムの後、ひとつのレクリエーションが行われました。
川幅(1メートル程度)を利用した、
5~6人のチームによる対抗リレー戦です。
ルールはいたって単純、
「川面に顔を出した石を伝って川岸を往復する」
「足を滑らせて川に足をついたら減点」
というもので、
まさか「足をつく」どころか、
流れに両足ごととられて、
木の葉のように流されてしまう運の悪い子がいるとは、
誰も想像していませんでした。
そしてそれこそ、ほかならぬ私だったのです。

引率の先生たちは流れに追いつけず、
私の手を掴んでくれた男子がいたのですが、
せっかくの手もなぜかうっかり外れてしまいました。
幼いながらにも絶対絶命の危機を感じた私でしたが、
しかしなんとか岩にしがみつき、ことなきを得ました。

さて、リスクマネジメントの視点からこの事件を振り返ると、
問題は総じて「リスク認識の甘さ」にあったように思います。
リスクは、「特定」し、「分析・評価」することで正しく認識され、
妥当な対策を導き出すことができます。
このレクリエーションにおいては、
まず、先生側におけるリスクの特定が不十分でした。
生徒が流されるという事態など想定すらしていなかったのでしょう。
そのため分析も評価も行われず、
当然、対策も欠けてしまったのです。
一方、私自身にも問題がありました。
その頃の私は、自分のバランス感覚や運動神経を
「あまり信頼できない」ぐらいにしか評価していませんでしたが、
蓋を開けてみると、
その性能は、私自身の認識をはるかに下回っていたのです。
私はせいぜい、
「減点されたときチームメンバーにどう謝るか」
といったことぐらいしか“対策”を講じていなかったのですから。

事件の後のことですが、
私の両親が学校に乗り込むこともなく、
他の保護者から意見があったとも聞いていません。
色々な意味でおおらかな時代であり、
リスクに対する意識も今に比べて格段に低かったため、
事が起きなければ問題にはならなかったのです。
対して現代は、レピュテーションリスクを恐れるあまり、
過剰な対策を必要としている印象をうけます。
背景には、
インターネットによる高度な情報伝達と共有が可能となったことや、
クレーマーの台頭等があります。
リスク回避のために対策を講じることは必要ですが、
過度な対策は効率化や機能の枷となったり、
本来の主旨や目的を損なうことにもなりかねません。

予想外のトラブルはあったものの、
課外授業の目的であった
「川の上流は流れが速い(入って遊ぶのは危険)」という学びが、
我々100名強の児童たちに実感とともに刻まれました。
危険を重視してレクリエーション自体が行われなかったら、
これは得ることができない成果だったかもしれません。

ちなみに、思わぬ冒険をした私は一時的に級友からちやほやされ、
まるで死地から帰還した英雄のような気分を味わったことを
今もまざまざと思い出すのです。