コンサルタントコラム

ガムラン音楽に学ぶローカルルールの魅力

2014年11月24日

コンサルタント

高橋 篤史

コンサルタント 高橋 篤史

こんにちは。コンサルタントの高橋です。
今回は少し毛色の違う音楽の話をしようと思います。

みなさんはガムランという言葉を聞いたことがありますか?
ガムランはインドネシアの民族音楽で、
打楽器を中心とした合奏形態で演奏されるものです。
民族音楽といいつつ、現代ポピュラーミュージックの中にも、
その要素を取り入れた曲は多くあり、
私も興味をひかれたきっかけは、80年代に坂本龍一さんが
アレンジにガムランの音色や音階を取り入れていたことにあります。

当初は民族音楽全集のようなCDを集めたり、
定期的に来日するガムラングループの
コンサートを聴きに行ったりして満足していましたが、
どうしても自分でやってみたくなり、
とあるワークショップに参加することにしました。

このワークショップは当時の日本では草分け的存在で、
実際に現地で修業を積んだ研究者の指導のもと、
週に1回のセッションと自主演奏会等の活動を
行うというものです。
そのうち、地域のイベントに呼ばれ、
野外や公会堂などで演奏する機会が増え、
徐々に本格的に活動することとなっていきました。

私はますますガムラン音楽に心頭したあげく、
現地で生の演奏を見てみたくなり、
1週間の休暇をとってバリ島を訪れました。

ガムランの楽器群はちょうどオーケストラのように、
主旋律パート、高音パート、低音パート、リズムを刻む
パートに分かれ、これらが複雑に絡み合って
独特のアンサンブルを生み出す仕組みとなっています。
現地に行って初めて気づいたのが、
村によってこれら1セットの楽器の「調」が
異なるということでした。

例えばバイオリン奏者が「ド」の音を出そうとする場合、
それは厳密に固定された世界共通の「ド」であって、
どんな楽団に持っていっても変わるということはありません。
一般的に西洋音楽では音の高さは厳密に定義され、
楽譜によって表される、いわば共通言語です。
全ての楽器がこの共通言語に合わせることで、
国や人種をこえて、いつでも、だれでも同じハーモニーを
作り出すことができるわけで、侵してはならないルールといえます。

ところがガムランの世界では、
「ド」の音はその楽器を作る職人によって微妙に異なるのです。
つまり、ある村の一種類の楽器を他の村に持ち込んでも
演奏が成り立たないということになります。

一方、ガムランの音程は演奏グループの中では共通ですが、
他のグループの音程と微妙な「ズレ」があります。
西洋音楽が「共通ルール」の上に成り立っているとすれば、
ガムランはグループ個々の「ローカルルール」に
準拠しているといえます。
この「ローカルルール」こそが、唯一無二の個性となり、
グループの音楽を際立たせる一因となっているのです。

さらに、多くの民族音楽がそうであるように、
ガムランも基本的に楽譜がなく指揮者もいません。
曲を盛り上げたり静めたりするのは、
リーダーとなる楽器の合図の役割で、
演奏者全員がこれに呼吸を合わせることで一体感が生まれるのです。

共通ルールに縛られない、
組織独自のローカルルールが閉鎖的ではなく、
表現力として解き放たれ、
強力にアピールするケースもあるのだという事実を目の当たりにし、
言い知れぬ感動を覚えて帰国の途についたのでした。