コンサルタントコラム

ポジティブ・リスクを取ること ー ラグビーワールドカップ2015 ー

2016年04月28日

コンサルタント

小林 利彦

コンサルタント 小林 利彦
みなさん、こんにちは。コンサルタントの小林です。
Jリーグやプロ野球も開幕し、
スポーツに関する記事が紙面を賑わす季節になりました。

その中で、昨年「五郎丸ポーズ」で大フィーバーを起こした
ラグビー人気は健在です。
人気が上昇した要因は、昨年行われたラグビーワールドカップにおいて、
南アフリカ、サモア、アメリカに勝利したからに他ありません。

過去の記録を紐解けば、
1995年第3回ラグビーワールドカップに出場した日本代表は、
ニュージーランド代表との試合で
17‐145という、大会記録となる1試合最多失点の大敗を喫しています。

体と体をもろにぶつけ合うラグビーでは体格差は如何ともしがたく、
以降も海外勢に全く勝つことができません。
昨年の大会までのワールドカップにおける日本代表の戦績は、
1勝21敗2分けという惨憺たるものです。

そのような日本代表が何故勝利できたか?
勝因についてはラグビー専門家等により数多く分析されていますが、
特に、ラグビーワールドカップでは最高勝率を誇る
南アフリカ代表(愛称:スプリングボクス)との初戦に焦点を置き
試合終了直前に発生した両チームのペナルティの選択を
リスク管理の観点から考えてみました。

ラグビーの試合は80分(40分ハーフ)で行われることを念頭において、
以下のシーンを取り上げます。

【場面1】試合時間72分
日本ゴール5m手前で南アフリカがペナルティキックを獲得しました。
得点は29 (南ア)‐29 (日本) の同点です。
世界一の体格とパワーを誇る南アフリカ代表という特徴から考えると、
マイボールのスクラムを選択し、
トライ(5点)を狙いにいくものと思われました。
しかし、南アフリカはより得点確率の高い
ペナルティゴール(3点)を選択し、
これを成功させ32 (南ア)‐29 (日本) とリードを広げました。

トライを取る為の攻撃では、日本にボールを奪取される、
もしくは、自身がミスや反則を犯し攻守が逆転する等の
大きなリスクが想像できます。
南アフリカがこのようなリスクを避けた背景には、
ワールドカップ優勝2回の強豪国でありながらも、
格下の日本に
現時点まで苦戦していた焦りがあったのではないかと思われます。

【場面2】試合時間79分
先ほどのシーンの6分後、試合終了1分前です。
南アフリカゴール5m手前で
日本がペナルティキックを獲得しました。
得点は32 (南ア)‐29 (日本)です。
ペナルティゴール(3点)を狙えば非常に高い確率で成功し
同点として引き分けで試合を終了させられると予想できます。

しかし、日本はリスクを冒してマイボールのスクラムを選択し、
トライ(5点)《逆転》を狙いにいきました。
ここでいうリスクとは、場面?でも説明しました。
試合時間から考えると、何か一つのミスが起こると、
その時点で試合は終了です。

なんと、日本代表はこのリスクを取りました。
日本代表の主将はこの対応を決断した理由について、
3年間にわたる過酷な練習により、
スクラムやモールで南アフリカと同等以上に競いあえていたこと、
反則退場により南アフリカのスクラムが1名少ないこと等の
冷静な現状分析によりトライ確率が高いこと、
且つ、フィールドプレーヤー15人全員が
同じ意識を共有できたためであると回想しています。

その結果、試合時間83分、日本がトライを成功させ、
得点32 (南ア)‐34 (日本) で試合が終了し
「ワールドカップ史上最大の番狂わせ」が完結しました。

両国とも試合に勝利するという目的は同一です。

日本勝利の一つの要因は、南アフリカに勝つことを目的に
ワールドカップ開催の3年も前から行ってきた過酷な練習や
綿密な準備等の成果が試合の最終局面において、
より大きなポジティブ・リスクを取ることを可能にしたと考えます。

この最後の場面が生んだカタルシスは、
日本を熱狂の渦に巻き込み、
私もますますスポーツ観戦から目が離せなくなりました。