コンサルタントコラム

ジギー・スターダスト - 世界滅亡のリスクマネジメント

2016年07月20日

コンサルタント

山地 博之

こんにちは、コンサルタントの山地です。

リスクマネジメントについて考える日々を過ごす中、
折にふれて、私はある人物と
彼が残した作品を思い浮かべるようになりました。

それは、今年1月に69歳の人生を終え
故人となってしまったデヴィッド・ボウイと
彼が初期に残した
「Ziggy Stardust(ジギースターダスト)」
というアルバムです。

【デヴィッド・ボウイとはどのような人物だったか】

ロックをアートの世界にまで高めた人物の一人でしたが、
何よりもまず、世間一般の常識や価値観、人々の、世界観を
常に拡張していくアーティストでした。

奇抜な化粧を施し、非常に中性的ヴィジュアルでスターとなった
グラムロック時代のデヴィッド・ボウイ。
彼の登場により、これまで社会や周囲に違和感を抱え、
疎外されてきた人々が、その姿にどれだけ慰めを受けたことでしょう。

私は学生時代から洋楽が好きでしたが、
英語がわからない自分でも
彼の歌だけは理解できたような気がしました。

それは、彼が不特定多数のリスナー一人一人を
決して匿名の人間としてみるのではなく、
誰とも交換不可能な個として
とらえていたからではないかと思います。

それは彼の歌詞の世界にも、表れています。
エキセントリックなイメージが
先行しているかもしれませんが、
実は優しい。

「僕はアリゲータだ。僕はスペースインベーダだ」
自分は、子供たちを畏怖させるとともに魅了する
存在だという詞の間に、
「僕は君の元に帰ってくるパパとママだ」
という一節。

あるいは、
暗く心を閉ざした女性。
Bowieは詞の中で
彼女の家の全て鏡を割ってしまいます。
自分だけを見つめるのではなく、
彼女の心が他者に開かれるように。
そして
「カーペットの上には怖い絵を描いたから、
うつむくのはやめるんだ」という一節。

【「ジギー・スターダスト」が描く世界】

このアルバムは「Five Years」という
5年後に世界は滅亡する、
という非常に切迫感の高い曲で始まります。

不安に駆られる人類(特に子供たち)を導くために
ジギー・スターダストという名のロック・スターとなり
超越的な存在として世界に降臨します。

全ての曲の歌詞は、
それぞれ独立した世界を描きながらも
全体として一つの物語を紡ぎます。

ロック・スターとなったジギーは
真摯なテーマを掲げながらも、
オーディエンスを魅了していきます。
しかし、飽きっぽい大衆がだんだんと彼を見放し、
凋落していく。
焦った彼も目的を遂行するプレッシャーから
退廃的な生活に入りびたりになってしまう。
そして、手段であったはずのスターに
返り咲くことが目的となっていく。

アルバムラストの曲で、心身ともにぼろぼろになったジギーは、
周りに誰もいないのに、切実に叫びます。
「何かを変えるのには君の手が必要なんだ」と。

【コミュニケーションの力を信じること】

このアルバムで彼が本当に何を言いたかったか
完全に理解するのは難しいのですが、
私は若いころ、
以下のように理解していました。

それが心の支えになったからです。

破滅を乗り越える力は、
リーダーやカリスマの指導から生まれるものではなく
人と人のダイレクトなコミュニケーション
から生まれる連帯だ、と。

世界はますます不寛容になってきており、
人間はわかりあえないという意識が強くなっています。
それでも、私たちに最後に残される手段は
対話ではないでしょうか。

いざリスクが顕在化したとき、
リスクマネジメントを機能させるためには、
組織の枠を越えた社員間で
日ごろからどれだけコミュニケーションがあるか。
ということにかかっているような気がします。

世界滅亡という極限のリスクマネジメント
それに失敗したジギー・スターダスト。

ジギーが最後に頼りにしたのは
他の誰でもない「あなた」でした。