コンサルタントコラム

自転車で行く世界最南端 ウシュアイアまでの1500km

2016年08月19日

コンサルタント

奥 はる奈

コンサルタント 奥 はる奈

6月よりニュートンのコンサルタントとなりました、
奥 はる奈です。

私は以前、約6か月をかけて、
南米のペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチン、
パラグアイ、ウルグアイ、ブラジルをめぐりました。

プロジェクトの振り返りのように、
経験したことを、少し時間を置いてから振り返ることで、
その瞬間には見えなかったことが、見えてくると思います。
今回は、そんな中でも、
南米チリ・アルゼンチンのパタゴニアに位置する、
“アウストラル街道”、さらに世界最南端ウシュアイアまで、
約1500kmを1か月と少し、キャンプ生活をしながら
自転車で巡ったときの振り返りたいと思います。

一年を通して気温が低く、「風の大地」と言われるパタゴニア。
私が訪れた晩夏~初秋でも、最低気温は5度前後にもなります。

毎朝、まだ暗い5~6時に起床し
朝ごはんで身体を温め、テントをたたみ自転車に荷物をつめ、
日が目覚め始めた朝7~8時頃、かじかむ手でハンドルを握り出発します。

長いときで3時間、休みなしに走り続けます。
食事休憩では、できるだけおおきな木の陰を探します。
立ち止まると、パタゴニアを象徴する、つよく、つめたい風が
汗と一緒に、一瞬にして体温をうばうからです。

それを日が暮れる直前まで、3~4回繰り返し、
林の中でキャンプを張り(たまに民家の軒先をお借りして)
晩ごはんを作り、22時には疲れ切った身体を休めます。

「世界一美しい林道」として名高いアウストラル街道は、
目に映るすべての景色が美しく、
道程に違う、美しい景色を追うのだけでも、もう必死です。

地球の歴史を思わせるダイナミックな氷河や滑らかな地層、
コバルトブルーの絵の具をこぼしたかのような蒼い湖、
地球の生まれを感じるような黄金の色彩を放つ朝焼け。

その一方で、その美しさの裏には、
氷河で作られたフィヨルド地形が生み出す、
自然の厳しさや過酷さがありました。

姿形を変え、いきものの息吹のようにうめく、つよい、つよい風。
その風に応えるかのように、土の地面は呼吸をし、動き、
海の水面のように波打っています(コルゲーション現象と言います)。

すべてのものが変化していく中で、
大地も同様に、必要に応じて姿を変え、
生きているということなのだと、感じました。

そんな人智を超えた自然の摂理が調和している中に、
私がぽつんとたたずむと、どうなるでしょう?

コルゲーションを起こした波打った道は、
容赦なく自転車とわたしの頭を激しく揺さぶり、
身体のあちこちにいたみをたたきつけました。
自転車のネジが、いつの間にか飛んでいくほどです。

巻き起こる風に車体は煽られ、
大きな石や深い砂利に何度も車輪を取られ、
転倒を繰り返す度に、くじけそうになりました。
向かい風で進まないペダル、幾重にも立ちはだかる峠。
時には雨が降り、視界と進路を阻みます。
膝や肘、全身が痛み続ける中、それでも進むしかありません。

しかし、風や土は、彼らの姿をしなやかに変化させ、
あるがまま、生きているだけなのです。

それをどう捉え、受け入れるかは自分次第で、
「つらいという気持ちは、あるように感じているだけで、
実は存在しないものなのかもしれない。」
そう理解し、なにも考えず、1ペダルずつ、前に進む瞬間は、
つらい、という気持ちがなくなっていたように思います。

今になって考えると、
その瞬間は大地に溶け込んでいる自分がいて、
ある種の、身土不二(からだと環境が繋がっている状態)を
体感したのだと思います。

想像をはるかに超えた、険しい道にからだも心もついていかず、
自分のふがいなさや理不尽な部分が露呈し、
いつもよりおおきく、喜んだり、泣いたり、怒ったり
ざわざわと、ゆれていました。

太陽の光を全身に受け、氷河の溶け水を身体いっぱいにしみ渡らせ、
風と土を利き、自分も風となった日々。
頭、心、細胞、原子、全てが、惜しみなく呼吸をしていて、
しなやかな生命を育んでくれた期間であったように思います。

そのほかにも、
たった一枚の壁や屋根のありがたさ、
木や草が本当に暖かかったことなど、
本当にたくさんのことを学びました。
パタゴニアの厳しい自然からさずかった智慧や感覚は、
きっと、いまのわたしの日常で施すことのそこここに、
溢れているのだと思います。

ここまで、私の振り返りにお付き合いくださったみなさまと出会う時にも、
五感をめいっぱいに使って、向き合っていきたい、
そう思います。