「AIディスカッションペーパー」第1.1版を公表、顧客向けサービスへの本格実装を見据えリスク低減策や規制解釈に言及 金融庁
金融庁は3月3日、金融分野におけるAI活用の論点をまとめた「AIディスカッションペーパー」の「第1.1版」を公表しました。2025年3月に公表された第1.0版からの改訂であり、「金融庁 AI官民フォーラム」(2025年6~12月開催)で得られた知見を反映しました。
金融庁 AI官民フォーラムの開催によって、金融機関におけるAI利活用が非常に速いペースで進展していることが判明しました。2024年秋の調査時点では極めて限定的であった、AI活用の顧客向けサービスは、範囲や条件を絞った上でサービスを提供したり、検討を進めたりする段階に進んでいました。具体的には、コールセンターでの顧客対応や営業支援システムへの組み込みが始まっているほか、2025年8月からは問い合わせや手続きに生成AIを組み合わせたアバターが対応するサービスが開始されています。将来的には、資産運用の相談対応やコンサルティングなど金融サービスの本業に近い領域で顧客向けに生成AIを活用する未来が展望されています。
AIの本格導入を支えるため、第1.1版では顧客向けサービスにAI活用を検討する際のポイント(共通的な目線)が追記されました。例えば、生成AIによる生成内容の不確実性やハルシネーションに対応するため、重層的なガードレールを設計します。具体的には、RAG(検索拡張生成)による回答範囲の制限や、断定的な判断および不適切な回答を防ぐためのフィルタリングなどを実装します。
生成AIによる回答であることや誤りが含まれうることを事前に注意喚起します。手続きの過程で顧客の理解を確認するステップを設けて理解できない限り次に進めないようにすることや、回答の根拠を明示すること、いつでもAI対応から担当者対応へと変更できる仕組みを用意することなども紹介されています。
AIと顧客の会話ログを保存して不適切な回答がないかモニタリングも必要です。具体的には、特定の金融商品に偏った勧誘をしていないか、推奨ロジックの文書化、第三者レビューを通じたモニタリングが示されています。さらに、これら全体を支えるガバナンスの観点から、経営陣を含む全社的な体制整備や現場職員のリテラシー向上、アジャイルなガバナンスの必要性も指摘されています。アジャイルなガバナンスとは、達成すべきゴールを明確化した上で、ライフサイクルを通じたリスクマネジメントを行い、環境変化に応じてルールや管理体制を迅速かつ柔軟に更新していく仕組みを指します。
このほか、事業者がAIを活用する際に生じる、法令上の疑問に対する見解が追記されました。例えば、証券会社がAIシステムの開発を委託する際、非公開情報を含む顧客との会話データを委託先に提供すると非公開情報の授受規制(金商業等府令第153条第1項第7号)に抵触するかどうか。システム開発業務は同府令の例外規定(「電子情報処理組織の保守及び管理」)に含まれるとされ、事前に会話データから当該部分を削除しておかなくても直ちに抵触するものではないと見解が示されました。
生成AIが直接顧客に金融商品の推奨などを行う場合、それが金融商品取引法上の「勧誘」に該当するかどうか。これについては、個別具体的な事案に即して実質的に判断されるとの考え方が示されました。AIが投資判断に与える影響や営業担当者の関与の度合いなどが考慮されます。