公正取引委員会(公取委)はこのほど、生成AI関連市場の競争環境をまとめた「生成AIに関する実態調査報告書ver.2.0」を公表しました。報告書は、生成AI関連市場を「インフラストラクチャー」「モデル」「アプリケーション」の3層構造に分類して各層の実態や独占禁止法上の論点を整理したほか、生成AIの応用領域として自動運転分野の分析も行っています。
報告書では、各層において有力な地位を持つ事業者の実態を以下の通り指摘しています。まず、インフラ層では、学習用半導体チップでNVIDIAが一強状態にあるほか、AIクラウドサービスでは大手3社が有力な地位を占めています。次にモデル層では、豊富な資金力を持つビッグテック企業が汎用型モデルを牽引する一方、国内事業者は特定用途に特化したモデルで差別化を図っています。最後にアプリ層では、様々な生成AIプロダクトが提供されており競争が激しい一方、検索サービスやオフィスソフトといった既存のデジタルサービスにおいて圧倒的なシェアを持つ事業者が存在し、それら既存サービスと生成AIの統合が急速に進んでいます。
独占禁止法違反の論点からは、有力な地位を背景とした競争阻害リスクを指摘しています。公取委は参入者が排除されるもしくはこれらの取引機会が減少するような状態をもたらす恐れが生じるときには、独占禁止法における問題となる恐れがあると示しました。
報告書を取りまとめるために行った、国内外の事業者などへのヒアリングにおいて、すでに競争上の懸念が寄せられている行為として以下の2点を挙げています。
- 1)モバイルOSでのアクセス制限
- モバイルOSで有力な事業者が、スマートフォンの機能へのアクセスを制限し、他社のAIアプリやオンデバイスAIモデルの利用を実質的に妨げる行為。
- 2)既存デジタルサービスの抱き合わせ・接続制限
- 既存のデジタルサービスで有力な事業者が、自社の生成AIをセットで提供して他社の参入を阻む行為や、正当な理由なく他社製AIとのシステム連携(API接続)を制限する行為。
さらに今回の報告書では、生成AI技術(フィジカルAI)の応用分野として自動運転市場の分析が行われました。自動運転市場も「インフラ」(車載半導体など)「モデル」(AIベースの手法)「アプリ」(自動運転車やロボタクシー)といった同じ3層構造で整理されています。
現状、この分野において競争政策上のボトルネックが存在するという意見は確認されていませんが、公取委は今後のイノベーション促進のため、こうした応用分野の動向も注視していくとしています。