「2025年度 適合性評価SWG 活動報告書」公開、AI規制や標準化の動向についても整理 AISI
AIセーフティ・インスティテュート(AISI)はこのほど、「2025年度 適合性評価SWG 活動報告書」を公開しました。同報告書は、AIの安全性を評価・担保する「AI適合性評価」のあり方を検討している適合性評価サブWGが、2025年度の活動内容を取りまとめたものです。「人とAIの協働」(HMT)を題材とした評価手法の考察や、国内外の政策・標準化動向が網羅されています。
「HMT(Human-Machine Teaming)」とは、「人とAI(マシン)が協働してサービスを提供する仕組み」のことです。現代の情報化社会では、人間だけで膨大な情報を処理して意思決定することは困難になっています。一方で、完全自律型のAIにすべてを任せるには、精度や倫理面、予期せぬ暴走リスクなどの不安が残ります。そこで、人間の直感や倫理的判断と、AIの圧倒的なデータ分析能力を組み合わせ、お互いの弱点を補う「相互補完」の仕組みとしてHMTが注目されています。
例えば、臨床医(人)と医療用AI(マシン)が同等に協力して高度な医療を提供したり(Peer型)、人間がAIの暴走を抑制するために監視役として上位に立ったり(Human supervisor型)と、関係性に応じた5つの協働パターン(類型)が示されています。
このHMTを評価するにあたり、サブWGでは評価対象を大きく「AIサービス」「AIシステム」「組織(チームなどを含む)」「人とAIシステムの相互作用」などの要素に整理しました。最終的にエンドユーザーに提供されるAIサービスの安全性を保つためには、既存の「組織」の評価(ISO/IEC 42001など)を軸としつつ、AIシステム単体の評価などを連携させた、包括的なスキームが必要であるとの方向性が示されました。
また、評価制度を社会実装する前提として、ルール作りの現状が整理されています。国内では「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI法)や「AI事業者ガイドライン」などの枠組みが整備されています。並行して、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の合同技術委員会である「ISO/IEC JTC 1/SC 42(人工知能)」においては、日本主導でHMTを含むAI関連規格の開発が進められています。
AISIは設立当初から「他国の関係機関との国際連携」を主要なミッションとして掲げており、報告書では欧米やアジアにおけるAI政策の最新動向を整理するとともに各国機関とのパートナーシップを築いていることが示されています。
米国については、AIリスク管理の枠組み(AI RMF)の運用が進む中、「U.S. AI Safety Institute」が「Center for AI Standards and Innovation(CAISI)」へと再編されたことを取り上げています。これは産業界の取り組みを支え、標準化への関与を強める方向性だと説明されています。
段階的に適用が始まっている「EU AI法」については、「高リスク」区分の適用・執行開始に向けた動きが記載されています。ただし、EUは「デジタル・オムニバス法案」において、この高リスクAIへの義務適用を大幅に延期する暫定合意に至りました(※1)。これにより2026年8月2日とされていた適用は、独立型では2027年12月へ、製品組み込み型では2028年8月へと適用が後ろ倒しされます。この延期の背景には、「Harmonised Standards」(整合規格※2)の策定に時間を要していることなどがあるとされています。
韓国では、2024年12月に「AI基本法」が国会で可決され、2026年1月に施行されたことが紹介されています。
※1 デジタル・オムニバス法案の暫定合意に基づく適用延期
※2 整合規格に適合すればEU AI法の要件を満たしたと推定される仕組み