日本経済団体連合会(経団連)はこのほど、「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」を公表しました。2025年7月から2026年2月にかけて、HR部門(※)においてAIを活用している企業などへヒアリングを実施し、AI活用の実態や課題を取りまとめました。先進的な8社の事例も掲載されています。
報告書によると、日本のHR部門におけるAI導入の割合は、欧米諸国よりも低い水準にあるものの、国内先進企業では実用化が進んでいます。報告書では採用▽人材配置▽人材育成▽労務管理――の4領域における具体的なAI活用の実態が紹介されています。
採用領域では、応募者のスクリーニングや面接サポートへの導入が進んでいます。面接の録画や選考書類をAIが分析し、応募者の行動特性を評価します。時間や場所の制約を受けずに多数の選考が可能となり、創出された時間をOB・OG訪問などの対応に充てる動きが見られます。
面接官のスキルをAIで定量化・可視化し、フォローアップ研修と一体的に運用することで、応募者の満足度や内定承諾率の向上につなげた企業事例も紹介されています。
人材配置領域では、社員の経験やスキルをAIに学習させ、最適な異動先やメンターを提案するポジションマッチングや、職務記述書の作成支援に活用されています。AIによるマッチングプラットフォームを通じて、国や組織の垣根を越えたプロジェクト支援や人材配置を実現している企業もあります。
1on1などの面談をサポートするツールが登場しています。人材育成領域では、AIを相手にした対話シミュレーションを通じて、管理職が相手を尊重した対話力を身につけ、自身のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気づきを促す仕組みが導入されています。
労務管理領域では、就業規則や基幹システムと連携したAIチャットボットによる労務相談の一次対応が主流となっています。センシティブな内容や複雑な質問など、より配慮が求められる高度な業務に人事担当者が専念できるといった効果が期待できます。
一方で、AI活用を推進する上での課題と対応策にも言及しています。HR部門は社員のキャリアや処遇に直結する情報を扱うため、とりわけ安全性・公平性・透明性の確保のためのガバナンス体制構築が求められます。
具体的には、影響の大きい判断においてAIの結果のみで不利益な処遇を決定しない「安全性」、AIに性別や年齢などの属性情報を入力・学習させず結果に不合理な差がないか定期的に検証する「公平性」、採用や評価においてAIを利用していることを社員や候補者に明示する「透明性」の確保が重要です。参照先として「AI事業者ガイドライン」(総務省・経済産業省)などを挙げています。
AIを人事評価などに活用する際の大前提として、最終的な判断はあくまで人間が責任をもって行い、AIはその意思決定を支援する機能だと記されています。
※採用や人材配置、人材育成、労務管理といった人事・人的資源管理を担う部門