情報処理推進機構(IPA)のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)は、2026年6月16日、「サプライチェーン強靭化におけるデータ連携の仕組みに関するガイドライン0.1版(車載半導体関連)」を公表しました。自動車産業と半導体産業の間でデータを安全かつ円滑に連携し、有事におけるリスクの低減と安定的な部品調達の実現を目的として、ルールおよびシステム要件を整理したものです。0.1版は、2026年4月2日から5月7日にかけて実施された0.1 beta版に対するパブリックコメントの結果が反映されています。
背景には、自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大、各国による輸出規制など、予測困難な事象によってサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことがあります。特に自動車産業では、半導体供給の途絶により大規模な生産停止が発生し、供給網の可視化や情報共有の重要性が強く認識されるようになりました。
さらに構造的な課題として、自動車メーカー(OEM)が長期間にわたり旧世代の半導体を使用する需要特性と、継続的な技術更新を前提とする半導体メーカーのビジネスモデルとの不整合が挙げられます。その結果、旧世代の半導体が突然生産終了(EOL)となるリスクが高まり、計画的な世代移行、すなわち「新陳代謝」の重要性が一層高まっています。
こうした課題に対応するためには、OEM、部品メーカー、半導体メーカーの間で、平時には製品ライフサイクル情報(量産開始時期や販売終了予定など)を、有事には生産への影響に関する情報を迅速に共有・活用できる仕組みが求められます。しかし、直接の取引関係を持たない企業間で機密性の高い情報を共有することには、営業秘密の漏洩に対する強い懸念が伴います。
そのためガイドラインでは、経済産業省が推進する「ウラノス・エコシステム」に基づくデータスペースの活用を想定しています。データスペースでは、各企業はデータ主権を維持しながら、「誰に」「何を」開示するかを自ら制御し、安全かつ信頼性の高いデータ連携を実現することが可能となります。
具体的には、「半導体データプラットフォーム(半導体DPF)」が定義されており、半導体メーカーが製品情報の開示範囲を細かく制御できる仕組みが示されています。情報はOEMや部品メーカーごとに「ALL(全開示)」や「RESTRICTED(限定開示)」といった区分で提供され、競合関係にある半導体メーカー間では共有されない設計となっています。
共有される情報としては、平時には品番や仕様に加え、量産開始時期やEOL予定などのライフサイクル情報が含まれます。これにより、OEMや部品メーカーは代替品の検討や設計変更を計画的に進めることが可能となります。また、有事においては、平時から前工程、後工程、検査工程といった製造工程ごとの生産拠点情報も共有されているため、それらの情報に基づき、影響範囲を迅速に特定することができます。