主要ガイドライン20種をマッピング、OTセキュリティ調査報告書を公開 JNSA
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の調査研究部会OTセキュリティWGのサブWG2は2026年6月30日、「OTセキュリティに関する国内外の主要ガイドラインの調査報告書」とその詳細な分析結果をまとめた別紙資料(Excel形式)を公表しました。工場システムへのセキュリティ要件が複雑化する中、実務担当者が自組織に適した対応基準を的確に判断できるよう、国内外の関連文書の特徴や適用範囲、相互関係などを比較・整理しました。
DXや遠隔保守の普及、IoT機器の活用拡大などによって、工場のOTとITシステムのネットワーク接続が急速に進展しています。従来は外部ネットワークから分離された環境で運用されることが多かった制御環境ですが、現在は外部接続やデータ連携を前提としたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策が強く求められています。
しかし、OTセキュリティに関するガイドライン、標準規格、手引書などは国内外に多数存在しており、それぞれ対象とする業界、想定する読者層、記載内容、扱う領域が異なっています。日本では経済産業省の「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」(以下、工場セキュリティガイドライン)が代表的な指標となっています。今般公表された調査報告書は、この工場セキュリティガイドラインを基軸に、国内外の各文書との比較評価を行い、特徴、位置付け、および補完関係を分かりやすく整理しています。
調査対象としたOTセキュリティ関連のガイドラインは計20種です。それらを分析し、広範な領域を扱う「包括型」、特定課題を掘り下げる「特化型」、業界の運用実態に即した「業界特化型」、概念を示す「原則提示型」の4つの傾向に整理しました。
工場セキュリティガイドライン(経済産業省)を基準として各文書を比較したところ、共通して詳細に記載されている領域がある一方で、共通して記載が少ない領域もありました。例えば、技術的防護策や一般的な運用管理については、多くの文書で充実した記載が見られました。具体的には、「パスワードの管理」「マルウェア感染検査」「未使用アプリ・ポートの停止」といった項目では、国際規格IEC 62443シリーズ(※)などが詳細な要求事項を定め、「事業への影響度やリスクの分析」については、情報処理推進機構(IPA)の「制御システムのセキュリティリスク分析ガイド」が具体的な分析手順を提供しています。
その一方で、工場という特殊な環境特有の要件においては、詳細な記載がない文書も多くみられました。具体的には、「メンテナンス期間外に機器が接続されたときの異常検知ルール」や「協力会社へのセキュリティ教育のタイミング」といった内容についてです。
報告書では、工場固有の運用条件や現場実装に関わる項目については、工場セキュリティガイドライン(経済産業省)が他文書を補完する役割を果たすため、参照する意義が大きいと指摘しています。同ガイドラインを運用の基軸に置くとともに、自組織の目的や現場の状況に応じて国内外の適切なガイドラインを補完的に参照・活用していくアプローチを推奨しています。
※産業用オートメーションおよび制御システムのサイバーセキュリティに関する国際標準