AIとオープン・ファイナンスの相互作用がもたらす効果とリスクを整理 OECD
経済協力開発機構(OECD)はこのほど、金融分野におけるAI(人工知能)とオープン・ファイナンスの相互作用について分析した調査報告書「Artificial intelligence and open finance」を公表しました。AIとオープン・ファイナンスは相互に作用することで金融サービスの利便性を高める一方、それぞれの持つ課題やリスクを増幅する可能性があると指摘しています。
金融分野では、数十年前からデータ分析、業務自動化、意思決定の高度化を目的として機械学習に基づく特定用途型のAIモデルが導入されています。他方、オープン・ファイナンスとは、銀行口座などの決済情報を対象としてきたオープン・バンキングを発展させたもので、利用者の同意を前提に、証券、保険、年金といった金融データをデジタル技術を通じて共有・活用する仕組みです。
AIとオープン・ファイナンスはそれぞれ単独では研究されているものの、両者が交差した場合、つまりオープン・ファイナンスによって大量の金融データをAIに活用させた場合の議論は十分行われていません。本文書では、その利便性や課題、トレードオフを検討し、今後オープン・ファイナンスが可能となるエコシステムにおいては、AIイノベーションの安全性や責任が担保されるガバナンスが必要であると提言しています。
まず、両者の相互作用として挙げられているのが補完性と相乗効果です。オープン・ファイナンスによって顧客の豊富な金融データがAIに提供されると、AIモデルの開発や精度向上につながると期待できます。その結果、顧客は自分の資産状況やニーズに合致したアドバイスやサービスを利用できるようになります。これは、オープン・ファイナンスが目指している、金融機関の効率化や競争の促進、包摂的な金融システムの実現を前進させるものとなります。
一方、相互作用によってリスクが増幅する可能性にも言及しています。適切なガバナンスがない場合、AIモデルは意図せず差別的融資や保険料設定を行い、特定集団の不当な排除や倫理的問題、投資の集中などを招く可能性があるとしました。また、オープン・ファイナンスのデータを大量に集約するAIシステムは、ハッカーの標的になり、消費者の金融情報全体が漏えいする危険性があるため、被害はより深刻になり得ると指摘しました。そのため、サイバーセキュリティ戦略については、新たなサイバー攻撃の経路への対応に加え、AIが利用するデータ共有インフラの強靭性を高める必要があるとの見解を示しました。
このほか、ブラジル中央銀行におけるオープン・ファイナンスのユースケースや、金融分野で実験段階にあるAIエージェントの導入についての考察などが記されています。