「人間中心のサイバーセキュリティ(HCC)」提唱、ガイドライン策定に向け意見公募を開始 NIST
米国国立標準技術研究所(NIST)は2026年8月12日、サイバーセキュリティ対策における「人間的要素」に焦点を当てた「人間中心のサイバーセキュリティ(Human-Centered Cybersecurity: HCC)」に関するコンセプトペーパー(※)を公表し、ガイドラインやリソースの策定に向けた意見募集を開始しました。意見の受け付けは2026年9月30日(米国時間)まで。
NISTが提唱するHCCとは、サイバーセキュリティのポリシー、プロセス、技術、サービスの設計や意思決定において、人間とそのニーズ、能力、限界を最優先に位置づけることで、セキュリティ成果を向上させるアプローチです。現在は技術主導型になっているセキュリティ対策を、人間の特性や心理的負担を考慮した持続可能な仕組みへとシフトさせることを目指しています。
従来のセキュリティ教育や運用体制についてコンセプトペーパーでは、一般の従業員に対して煩雑で理解しにくいルールを押し付けがちであり、結果として「セキュリティ疲れ」や不満を引き起こし、ルールを迂回する行動を助長していたと指摘しています。さらに、日々進化する脅威に対峙するセキュリティ専門家自身も、過度な緊張とプレッシャーからストレスや燃え尽き症候群に直面しており、これが組織全体のレジリエンス(回復力)を損なう要因になっていると課題を提起しました。
そのためNISTは、人間を「ミスを犯す脆弱性」と捉える従来の考え方を改め、セキュリティを共に向上させる「アクティブパートナー(能動的な協力者)」として位置づける重要性を強調しました。従業員のニーズに寄り添い、安全な行動が取りやすいシステムをデザインすることで、セキュリティリスクの低減と従業員の生産性保護を両立させることが、今後の組織の競争優位性につながると提唱しています。
今後は、意見募集で得られたフィードバックを反映し、HCCの定義や目標、組織的な利点を整理した基礎的な文書を策定する予定です。例えば、既存の技術的ガイドラインの中に人間中心の観点を盛り込むアプローチや、NISTの「Risk Management Framework(RMF)」や「Cyber Security Framework(CSF)」などのフレームワークとマッピングさせた文書として公開する方法などが検討されています。
※Human-Centered Cybersecurity Guidelines and Resources Concept Paper(https://tsapps.nist.gov/publication/get_pdf.cfm?pub_id=962460)のこと。