副題は「経営者のためのランサムウェア対策ハンドブック」、被害から学ぶ教訓集を公表 IPA
情報処理推進機構(IPA)は2026年9月8日、国内の被害組織へのヒアリング調査に基づく「ランサムウェア被害から学ぶ教訓集」を公開しました。サブタイトルには「経営者のためのランサムウェア対策ハンドブック」と冠し、経営者の明確な関与が格別に重要であることを強調しました。経営者の関与(トップダウン)と事業継続計画(BCP)の整備を促しています。
ランサムウェア攻撃は暗号化が発覚した時点で既に攻撃の最終段階に達しており、対応の時間的猶予がありません。攻撃は業務停止や情報漏えいなど、多角的な問題を同時に引き起こすため、IT部門だけに任せるのではなく、全社的な経営課題として対処する必要があります。そのためIPAは、平時から情報システムと事業部門が連携する体制の構築や、判断基準をあらかじめ策定しておき、有事に迅速な意思決定ができる体制整備を求めています。
教訓は全部で11項目あり、経営者と総務、経営企画、法務、広報、事業部門などリスク管理に関わる部門を対象とした「経営・リスク管理編」(6項目)と、情報システムやセキュリティに関わる部門を対象とした「インシデント対処編」(5項目)に整理されています。
「経営・リスク管理編」では例えば、「サイバー攻撃に対応したBCP策定の指示」といった教訓が挙げられています。システム停止時の実業務への影響は情報システム部門だけでは把握しきれないため、復旧判断や業務再開には事業部門との連携が欠かせません。
事例として挙げられていたのは製造業です。製造業では生産管理システムが停止すると在庫があっても納品できない事態となります。こうした事態を回避するには、システムが停止した状態を想定し、手作業などによる代替運用を平時から準備し、BCPへ反映しておく必要があります。
BCP策定を含む事前準備が実効性を持っていたことは、危機を乗り越えた組織に共通して見られる点として挙げられています。サイバー攻撃を直接想定していなかった組織であっても、地震や台風などの自然災害に備えて手作業による業務継続手順を定めていた場合、その手順を応用しランサムウェア攻撃時にも深刻な業務停止を回避できました。
このほか、教訓集には致命的な業務途絶を防ぐバックアップの保護やEDR(End-point Detection and Response)の導入、外部ベンダーとの連携といった具体的な対策が掲載されています。