2026年上半期はランサムウェア被害が過去最多、生成AIの悪用やIoT「踏み台」も深刻 警察庁
警察庁は2026年9月10日、2026年上半期(1~6月)のサイバー空間をめぐる脅威情勢と警察の取り組みをまとめて公表しました。生成AIの普及により、専門知識がなくても攻撃プログラムの作成や改変が可能となり、サイバー攻撃が高速かつ大規模に行われるリスクを指摘しています。2026年上半期には、生成AIを用いてランサムウェアを構築する手口のほか、感染端末の情報をAIに送信してユーザーの操作なしに不正な命令を実行させる、新種マルウェアの存在も確認されました。
公表された文書「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、上半期のランサムウェア被害報告件数は123件に達し、半期ベースの統計を開始した2020年下半期以降で最多を記録しました。被害組織の規模別では中小企業が全体の約6割(79件)、業種別では製造業が約3割(37件)を占めており、規模や業種を問わず広く標的となっています。
被害企業への調査では、調査および復旧費用が高額化しており、総額1,000万円以上を要した組織が全体の6割に達しました。また、1カ月未満で復旧できた組織は全体の5割弱にとどまり、復旧に1カ月以上を要した組織や回答時点で復旧中の組織が5割を超えました。感染経路の約5割はVPN機器などネットワーク境界機器の脆弱性悪用であり、未修正の脆弱性放置や認証情報の漏洩が侵入の主な原因となっています。
金銭目的の攻撃にとどまらず、機密情報や先端技術を狙う「サイバーエスピオナージ(情報窃取活動)」も深刻化しています。2026年上半期も政府機関や大手製造業者、学術機関への不正アクセスが相次いでおり、報告書では Salt Typhoon や MirrorFace といった中国背景の攻撃グループの手口を引き合いに、機器の脆弱性や設定不備を突く侵入への注意を呼び掛けています。
また、家庭内のIoT機器がマルウェアに感染し、所有者の認識がないまま通信を中継する「レジデンシャルプロキシ(家庭用回線の仲介)」として悪用され、サイバー攻撃の「踏み台」とされる被害も多発しています。そのため警察庁は総務省や通信事業者などと協議会「レジデンシャルプロキシ対策アライアンス」を設立、関係機関が一体となった技術的対処と注意喚起を講じていく方針です。また、利用者が安全なIoT製品を選択できるよう、セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度「JC-STAR」の適合ラベル付き機器の普及も推進していきます。
なお、警察庁は2026年4月に「警察におけるサイバー戦略」を4年ぶりに改定し、サイバー攻撃の未然防止に向けた取り組みを強化しています。ゼロデイ脆弱性や環境寄生型(LOTL)攻撃といった検知困難な脅威を自発的に探索する「脅威ハンティング」の推進に向け、被害未発生の段階から事業者などの依頼に基づく「セキュリティ診断」も実施しています。そこで抽出された潜在リスクや脆弱性情報を警察庁で集約・分析し、攻撃の実態解明や注意喚起に活かす取り組みを進めています。