AIの判断根拠を可視化する「説明可能なAI(XAI)」とは?メリットや課題を解説
| 執筆者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
AIは広く社会に浸透し、ビジネスに組み込まれることも一般的になりました。ただし、生成AI、エージェンティックAIなどいずれの利用でも、AIが誤った結果を出力する可能性を考慮することは必須です。もし間違いが発生したのであれば、どのような過程の中で誤ったのかを知ることが次の改善や成功につながります。AIがどのように推論・予測したのか、その過程を説明する機能を説明可能なAI(XAI)といいます。
本記事では、XAIの概要、求められる背景、メリットと課題、手法を解説し、AIガバナンスにおける役割についても説明します。
説明可能なAI(XAI)とは
説明可能なAI(XAI:Explainable AI)とは、AIが機械学習などにより行った予測や判断の根拠を示す技術、手法(※1)です。
※1:本記事では、AIが自ら判断過程を解説するよう組み込まれる機能ではなく、ブラックボックス化されたAIとは別に存在し、利用者が理解できるよう説明するための技術・手法を指す。
AIはビジネスシーンでも様々な形で活用されています。その中でも機械学習(ML:Machine Learning)は代表的な技術です。例えば、医療・ヘルスケア分野での診断、金融機関での審査、人材採用における候補者の評価支援、製造業での不良検知などでも利用されています。
一方で、AIは利用者の指示に沿って推論、予測、判断を行いますが、その仕組み(判断過程)はブラックボックス化している場合が多々あります。仕組みが不明なままAIの判断をそのまま利用することには、高いリスクが伴います。このような問題を「ブラックボックス問題」と呼びます。
これに対し、XAIはユーザーがAIの推論、予測、判断のプロセスを理解し、信頼できるようにするための方法です。また、AIを利用したサービスや仕組みの開発者にとっても、責任ある提供に重要な役割を果たします。
また、米国国立標準技術研究所(NIST)の報告書「NISTIR 8312 Four Principles of Explainable Artificial Intelligence」では、XAIが備えるべき基本的な特性を「説明可能なAIの4つの原則」として以下のように示しています。
- 説明(Explanation)
- XAIは、自身のアウトプットやプロセスに対してその根拠や理由を提供、または内部に保持していなければならない。これは説明の質や正確さを問うものではなく、まず「説明が存在すること」を求めるものである。
- 意味があること(Meaningful)
- 提供される説明は、想定されるユーザーにとって理解可能で意味のあるものでなければならない。ユーザーの専門知識や経験、タスクの目的によって、適切な説明の形は変化する。
- 説明の正確さ(Explanation Accuracy)
- XAIによって提供・保持される説明は、システムがアウトプットを生成した理由や内部のプロセスを正確に反映している必要がある。これは「システムの判断自体が正しいか(Decision Accuracy)」という基準とは異なる独立した概念であり、システムの真の動作プロセスを裏切らないものであることを求めるもの。
- 知識の限界(Knowledge Limits)
- システムは、設計された想定条件の範囲内かつ、そのアウトプットに対して十分な確信度に達している場合にのみ動作する。知識の限界を自覚し宣言することで、誤解を招く不当なアウトプットを防ぎ、システムへの信頼性を高めることができる。
これらの原則から、XAIは、法規制の遵守やAIの品質管理など、それぞれの状況に合わせて適切な形で説明を提供することが求められていると言えます。
重要視される背景
AIによる判断がどのように導き出されたかが不明なことを「ブラックボックス問題(※2)」といい、このような問題を孕むAIをブラックボックス型AIとも呼びます。
※2:ブラックボックスとは、内部の仕組みや動作が外から見えない状態や装置で、操作方法が分かっていれば利用できることを指す。利用者は、入力・出力は確認できても、その判断過程を理解できない。
特にAIが誤った推論をした際、そのプロセスや論拠を明確にする必要があります。ここが明確でなければ次にAIを利用するときに改善ができないためです。また、企業や組織での利用においては、原因不明の誤判断は避けたいところでしょう。
ブラックボックス問題を起こさないためにも、AIがどのようにアウトプットを出力したかの道筋が大切であることから、XAIが重要視されるようになっています。
メリットと課題
XAIを利用することで得られるメリットの代表例には下記が挙げられます。
- 信頼性向上
- AIの推論のプロセスを確認することで、誤判断リスクを低減することが可能です。より多くの情報から、根拠を踏まえた意思決定が可能になります。
- AIを用いたコラボレーションの実現性向上
- AIの判断根拠が説明可能になることにより、AI活用を他の分野へと拡大しやすくなります。特に判断の妥当性や説明責任が求められる業務では、XAIによって判断根拠が明確になることで、見通しが立ち、不安なく連携してもらえるでしょう。
- トラブルシューティングの迅速化
- AIのプロセスが可視化されることにより、トラブル発生時の対応速度向上が望めます。また、原因が分かりやすくなることで、プロセス全体の人間による改善がしやすくなります。
- 法令・規格などへの対応支援
- AIに関する法整備は途上であり、今後も変化が見込まれます。EU AI法(EU AI Act)やISO/IEC 42001などでは、AIの透明性や説明責任が重要視されており、XAIはこれらへの対応を支える技術となります。
一方、XAIについては現状では課題もあります。
- 出力が複雑
- AIの予測、推論、判断に必要なプロセスは複雑かつ多量であるため、人間が理解しやすいアウトプットの生成は重要な課題です。
- 計算負荷や運用負荷の増加
- XAIの手法によっては、同じ予測を条件を変えて繰り返し実行したり、多数の特徴量の影響を計算したりします。追加の計算資源や処理時間が必要になる場合があることには注意が必要です。
- セキュリティリスク
- 推論、予測、判断のプロセスはAI利用上の重要なノウハウです。説明可能なAIのアウトプットにはモデルの判断過程や学習データに関する情報が含まれる場合があり重要なデータとなるため、情報漏洩などセキュリティリスクの増大にもつながる点に留意する必要があります。
XAIは発展途上の技術であるため、こうした課題が残されています。今後は、技術の進歩や運用ノウハウの蓄積などにより解決されることが望まれます。
説明可能なAIを実現する代表的な手法
XAIは複数の手法、技術により実現されます。下記は代表例です。なお、ここでの「特徴量」はAIが予測などを行う時に判断材料となるデータのことを指します。
- Local Interpretable Model-Agnostic Explanations(LIME)
- LIMEはある入力が行われた場合の予測に対し、寄与した特徴量とスコアを可視化する手法です。
- SHapley Additive exPlanations(SHAP)
- SHAPはある予測値に対し、各特徴量がどれだけ貢献しているかを計算して、予測を説明する手法です。
- Permutation Importance(PI:置換重要度)
- PIは、特徴量の重要度を定量化して評価する手法です。
- Partial Dependence Plot(PDP:部分依存プロット)
- PDPは、特定の特徴量と予測結果の影響度合いを可視化して評価する手法です。
説明可能なAIはAIガバナンスの重要基盤
AIの利活用は、今後の事業効率化手段として重要性が高まっていくことが予測されます。しかし、組織の中でAIの活用に関するルールが適切に定められ、守られなければ、AIの誤判断などにより事業の効率化どころか損害が発生するリスクもあります。
説明可能なAIは、AIの活用上のリスクを抑える重要な基盤です。XAIによりブラックボックス化を避けることは、AIガバナンス整備の一環となります。