「シールドライト」とは、システムの運用段階で行うセキュリティ対策の考え方です。設計・開発段階でセキュリティ対策を施す「シフトレフト」と対比するもので、DevSecOpsを前提としつつ、運用中に顕在化する脅威への対応を補強するアプローチとして登場しました。開発段階の対策だけでは対応しきれないセキュリティ課題の解決手法として、近年、注目を集めています。
シールドライトという考え方が生まれた背景
従来のDevSecOpsやシフトレフトといった主に開発段階を中心としたセキュリティ対策には、未知の脅威や運用段階での設定ミスに対応しきれないという課題がありました。具体的には、以下の3つの課題が挙げられます。
1. 未知の脅威への対応不足
既知の脆弱性リストに基づく事前の対策だけでは、ゼロデイ攻撃のような「まだ知られていない脆弱性を突く攻撃」に対して、防御することは困難でした。
2. 運用段階での設定ミス
システムの運用中に発生する、閲覧権限の誤設定などの人為的なミスが、情報漏洩やシステム停止のリスクを高めていました。
3. 迅速な復旧・原因究明の遅れ
攻撃を受けた際に、被害を最小限に抑えて迅速にシステムを復旧し、原因を究明するための体制が不十分でした。
このように、DevSecOpsやシフトレフトでのセキュリティ対策だけでは防ぎきれない脅威が数多く存在していました。これらの脅威はシステムの運用開始後に顕在化することが多く、事前の対策だけでは対応が困難です。
こうした脅威に対応するために、システムの運用段階においてセキュリティ対策を行うシールドライトという考え方が生まれました。シールドライトは、システムが稼働している間も継続的に挙動を監視し、新たな脅威や脆弱性に迅速に対応することを目的としています。
シールドライトを実践するためのセキュリティ対策
それでは、シールドライトに取り組むためには、どのような対策が必要となるのでしょうか。シールドライトの実践においては、システムの運用段階で未知の脅威に対応する必要があります。そのため、脅威による被害が最小限になるようにシステムを守り、もしシステムに不具合が発生しても素早く復旧できるよう、以下のようなセキュリティ対策が求められます。
ログのリアルタイム監視
システムの挙動をリアルタイムで監視し、マルウェアなどによる異常な動作を検出します。これにより、サイバー攻撃の兆候をいち早く捉え、被害を最小限に抑えることが期待できます。また、異常なアクセスパターンや不審なファイルの実行などを検知し、即座にアラートを発することも重要です。なお、対策の一例としては、SIEM(Security Information and Event Management)ツールによるログの一元管理と分析などが挙げられます。
設定ミスの検出
提供中のシステム環境が、セキュリティ基準や設定要件を満たしているかを継続的に監視することで、設定ミスを検出します。これにより、公開してはいけない情報が外部から閲覧できる状態になっていないか、不要なポートが開いていないかなどを即座に検知できます。クラウド環境の普及により、設定ミスはセキュリティインシデントの主要な原因の一つとなっており、自動化されたツールによる継続的な監視が不可欠です。なお、対策の一例としては、CSPM(Cloud Security Posture Management)ツールによるクラウド環境の設定ミス検出などが挙げられます。
デジタルフォレンジック
攻撃が検知された際に、その前後で実行されたプロセスや変更されたファイル、利用されたネットワーク通信といった詳細な記録を収集し保全する「デジタルフォレンジック」を行います。そして、これらのデータを用いて攻撃の手口や侵入経路を特定することで、発生した事象の原因究明が可能となり、再発防止につなげることができます。デジタルフォレンジックは、今後のセキュリティ対策を一層強化する上で有効な手段となります。なお、対策の一例としては、EDR(Endpoint Detection and Response)ツールによるエンドポイントの監視などが挙げられます。
このように、シールドライトはセキュリティ対策を考える上で欠かせないものとなっています。なぜなら、サイバー攻撃の手法は日々巧妙かつ高度化しており、シフトレフトなどの事前の対策だけでは防げないことが当たり前になっているからです。最悪の場合、たった1度のサイバー攻撃で会社の経営が傾く可能性もあります。
しかしながら、攻撃を完璧に防ぎきることが非常に困難であるのも事実です。この事実を踏まえた上で、「いかに被害を最小限にするか」、そして「迅速に復旧できるか」という点で、シールドライトの考え方が極めて重要になるでしょう。シールドライトは、現代の複雑なサイバー脅威環境において、企業が事業を継続し、顧客からの信頼を維持するために不可欠なアプローチといえます。