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コラム

「SDGsへの取り組み×ビジネス」により業界のけん引役に

2018年07月13日

コンサルタント

玉川 朝恵

コンサルタント 玉川 朝恵

リスクマネジメントを構築、日々運用している各企業において、近年それらの活動をコストではなく投資として考えていくことが求められています。

そんな中、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。SDGsとは、2015年国連サミットで採択された行動計画であり、世界が抱える問題を解決し、持続可能な社会をつくることを目的としています。そして経済活動を行う企業も持続可能な社会の実現のために、SDGsへの貢献が求められています。本稿ではSDGsを概説しながら、企業がリスクマネジメントの一環としてSDGsに関する活動に取り組むメリット、および取り組まないことによるリスク解説します。その中で、4社の取り組み事例を参考としてご紹介します。

SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)とは

SDGsは2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳参加のもと全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた目標のことです。2030年までに貧困撲滅や格差の是正、気候変動対策など国際社会に共通する17の目標が達成されることを目指しています。

SDGsはそもそも前身としてのMDGsに代わる形で採択されています。
MDGsとはミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)を指し、貧困と飢餓の撲滅や乳幼児死亡率の削減から成る8つの目標を掲げ、2000年に採択されました。達成期限である2015年、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「ミレニアム開発目標(MDGs)報告2015」を発表し、「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくせるところまで来た」とMDGsの成果を強調しました。しかし、MDGsへの取り組み期間であった15年の間に環境問題や気候変動問題や格差の拡大など、問題も多様化し、新たな枠組みが必要となり、ポスト2015年の開発アジェンダとして採択されたのがSDGsです。

MDGsとの主な違いは3点あります。

 

  1. アジェンダの検討体制
    MDGsが国家主導で策定されたゴールだったのに対し、SDGsは国連加盟国のみならずNGOや民間企業、市民社会の人々も積極的に議論に参加して策定されました。
     
  2. 民間企業が課題解決の主体に
    国連は、目標の達成に関しても民間企業を課題解決を担う主体として位置付けています。
     
  3. 目標の細分化
    MDGsが8ゴール21ターゲットだったのに対し、SDGsは17ゴール169ターゲットと多岐にわたる目標が設定されました。気候変動や人々の生産や消費にまで言及されています。また、途上国の問題のみならず、都市問題など先進国の課題も盛り込まれました。
     

【SDGs全17目標アイコン】

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出典:国際連合広報センター

以上ご紹介した通り、SDGsは国際社会に共通する課題の解決をその目標に掲げており、多くのグローバル企業にとってSDGsは取り組むべき課題として認識されていますが、日本企業ではまだまだ浸透していません。公益社団法人市民社会協議会(CBCC)は2017年1月31日~2月28日、CSRの実態を国内外に発信することを目的に経団連会員企業およびCBCC会員企業1,363社を対象とした調査を行い(内167社回答)、「CSR実態調査」を発表しました。調査の結果、調査対象企業の半数以上がSDGsに関しては未対応あるいは対応の検討も行っておらず、対応している企業でもその取り組み状況を公表している企業は3割に満たない状況となっています。取組状況の公表が少ないことにより、他社の事例から学び、追随するのが難しい状況であると考えられます。

SDGsによるリスクマネジメントと企業価値向上

投資家が投資活動を行う際に考慮する企業の社会的価値を計るための指標としてはSRI(Socially Responsible Investment: 社会的責任投資)がこれまで主要な評価軸となっていましたが、近年ESG(Environment, Social Governance)が企業の社会的価値を評価するための新た評価軸として重視されつつあります。ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったものであり、SRI(社会的責任投資)とCSR(企業の社会的責任)を発展的に統合した考え方です。つまり、キャッシュフローや利益率などの定量的な情報のみならず、非財務情報である要素を考慮した投資を指し、投資家の社会的価値に対する意識の高まりなどにより近年特に注目されています。

そしてSDGsは、ESGに関する各企業の活動を評価し、企業の社会的価値を判断するための指標となっています。ESGという投資活動に使用されていることからもわかるとおり、SDGsに取り組む一番のメリットは企業価値の向上です。各企業においては、社会と自社の持続可能性を考慮しながら、コストではなく自社の社会的評価を高めるための投資としてリスクマネジメントを構築し、運用することが求められていると言えます。

日本政府も企業・団体に対してSDGs達成に向けた取り組みを推進しており、「ジャパンSDGsアワード」と題してSDGs達成に資する優れた取り組みを行う企業・団体等を選定・表彰していますが、国内の企業において戦略的に取り組んでいる企業は一握りであるのが現状です。

しかし、SDGsに積極的な取り組み姿勢を見せず、オブザーバーとして居続けることはリスクとなります。持続可能な社会の構築は各国政府や国連の働きだけでは限界があり、企業の取り組みが必要不可欠です。SDGsが対象としている範囲は多岐にわたっており、戦略的に取り組まず17の目標が未達となれば全人類に影響を及ぼし、ひいては人類社会そのものの存続にとってのリスクとなるのです。また、ビジネスチャンスを逃すというリスクも見過ごせません。企業がSDGsとビジネスを繋げることは、企業価値を向上させるだけでなく、新たな事業機会の創出に結びつきます。さらに、既にSDGsの目標と合致するビジネスを行っている場合でもその強化が可能となることが想定されるのです。

企業におけるSDGs取り組み事例

以上SDGsの概要と企業が取り組むべき理由を紹介してきましたが、実際に企業がSDGsに取り組んだ例としてはどういった事例が挙げられるのでしょうか。ここでは国内外の企業によるSDGsの取り組み事例を紹介したいと思います。

以下の4社はKPMGと国連グローバル・コンパクトが作成した『SDGs Industry Matrix』の中で取り上げられている事例です。SDG Industry MatrixはSDGsの達成に向けた企業の取り組みを支援することを目的に、関連する多くのイニシアチブや企業事例を紹介しています。

紹介事例の多くが国外の企業ですが、日本国内の企業も取り上げられています。現状では開発中の製品や提言レベルのものも重要事例として取り上げられています。そのため、まずはどのようなことができそうか、社会にとって何が重要かということを自社ビジネスと繋げながら具体的に発信するのも一つの手法だといえるでしょう。

【国外の企業】
●SDG2:ダノン
飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
同社は18か国の主に現地農業従事者約19,000人のスキルを支援し、訓練を提供、さらにスキル強化を行う「エコシステムファンド」を構築しました。本プログラムにより、農業従事者のスキルの向上が期待できるのみならず、彼らの作り出す製品の品質向上も見込まれます。

●SDG5:ユニリーバを含む数社の国際的な消費財企業
ジェンダー平等を達成し、すべて女性および女児のエンパワーメントを行う
女性のボディイメージの歪曲に立ち向かうため、印刷物を使ったキャンペーンでのエアブラシを使用した修正を行わないことを発表するなど、女性と女児のエンパワーメントを推進する広告キャンペーンとコンテンツ戦略を展開しています。

 

【国内の企業】
●SDG12:富士ゼロックス
持続可能な消費と生産のパターンを確保する。
同社では「クローズド・ループ・システム」を採用しています。本システムではたとえば複合機などの製品を使用後に回収し、部品を再生またはリサイクルしています。それにより、新しく使用する資源の量を減らすことができるとともに、埋立地に送られる廃棄物を削減させることができます。

●SDG13:味の素アニマル・ニュートリション・グループ
気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる
同社は飼料用アミノ酸のメリットを提唱しています。飼料用アミノ酸の活用は、結果的に土壌と水の品質保全、温室効果ガス排出量の削減、さらに限りある耕作地の効率的利用に貢献することにつながります。

重要なのは、「持続性」

SDGsに向けての取り組みには注意も必要です。例えば海外でのビジネス展開の際は、現地のルールに細心の注意を払わなければ、トラブルを引き起こす原因ともなりえ、その対応のため多額のコストがかかるケースも想定されます。また、自社のルールや制度を改定する必要がある場合はそのコストも発生します。

しかし、SDGsへの取り組みが一過性の社会貢献活動に終わってしまっては、当該企業にとっても社会にとっても享受できる利益が同様に一過性のものとなってしまいます。これまで事業とは別で社会貢献的に行っていたCSR活動をSDGs目標に単に当て込んだだけでは仮に企業に体力がなくなった場合、その活動がおざなりになりかねません。ESGによる投資の社会的意識の高まりとSDGsによる持続可能な社会のための活動をビジネス機会として捉え、上述の留意事項を考慮しながら長期的に取り組んでいくことで、企業と社会の双方の互恵関係が生み出されていくといえるでしょう。

参考資料:
  • United Nations Global Compact and KPMG (2016) 「SDG Industry Matrix-産業別SDG手引き-食品・飲料・消費財産業」
  • United Nations Global Compact and KPMG (2016) 「SDG Industry Matrix-産業別SDG手引き-製造業」
  • United Nations Global Compact and KPMG (2017) 「SDG Industry Matrix-産業別SDG手引き-エネルギー・天然資源・化学産業」
  • 日本サステナブル投資研究所(JSIL)(2017)「ESG投資とSDGsの関係について」
  • GRI, United Nations Global Compact, and wbcsd (2015) 「SDG Compass SDGsの企業行動指針-SDGsを企業はどう活用するか-」
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