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コラム

より効果的・効率的な支援の受け方とは ―内閣府『地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン』を策定―

2017年06月13日

コンサルタント

山田 真司

コンサルタント 山田 真司

2016年4月、熊本県を襲った最大震度7の大地震は、被害の甚大さと共に、行政機関に対して多くの課題を残しました。主なものとしては、以下の課題が挙げられます。

  • 自治体庁舎等の防災拠点の耐震化
  • 避難者情報、特に車中泊の避難者に関する情報の把握
  • 救援物資の避難所までの配送(「ラストワンマイル」問題)
  • 国職員やボランティア等の応援の受け入れ
内閣府をはじめとする関係省庁も、熊本地震の課題に対する対応を実施し、各種計画やガイドラインの見直し、そして新規策定を行って参りました。今回ご紹介する「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン(以下、「受援体制ガイドライン」と称します)」も、熊本地震の際に、県や自治体が国職員やボランティア等の応援を受け入れ、そして活用できなかったことの反省を踏まえて策定されたガイドラインの1つとなります。

本「受援体制ガイドライン」は、名称にある通り地方公共団体を主たる読者として策定されていますが、“応援を受け入れる”という点では、民間企業でも、本社等からの応援が来ることを前提にBCP(「業務継続計画」)を策定している支社や地方拠点においても十分に参考となるガイドラインであると言えます。

「受援体制ガイドライン」の構成と特徴

「受援体制ガイドライン」は、タイトルにある受援体制を如何に整備するのかについて受援側と応援側、更には地方公共団体以外の応援を受け入れる場合、とそれぞれの視点に立って構成されています。加えて、本ガイドラインの大きな特徴として、“応援とは何か”“受援と何か”について、災害の局面という視点、人的・物的資源の流れという視点など様々な切り口から説明を行っている点があります。

「受援体制ガイドライン」は、全9章で構成されています。構成は、以下の表の通りです。
構成 概要
第一章:応援・受援の基本的な考え方 ・受援体制を整備する理由や目的
・応援、受援の用語の定義(位置づけ)
第二章:ガイドライン策定の目的等 ・ガイドライン策定の目的、対象範囲
第三章:応援・受援の現状 ・各種の応援・受援の現状、対象となる業務
第四章:応援・受援の体制(被災県・被災市町村) ・市における受援本部/受援班の設置と役割
・県における受援本部/受援班の設置と役割
第五章:応援・受援の体制(応援県・応援市町村) ・応援本部/応援班の設置と役割
第六章:応援・受援の体制(自治体以外の主体との連携) ・NPO、ボランティアとの連携
・医療福祉分野との連携
第七章:応援・受援に関する基礎知識 ・必要資源の種類と調達の流れ
第八章:平時からの取り組み ・人的資源・物的資源の資源管理の推進
・研修や訓練の実施
第九章:海外からの支援に関する基本的な考え方 ・海外からの人的・物的支援のニーズの確認
・国に対する支援の要請

策定のポイント1:受援体制の類型

「受援体制ガイドライン」の特徴として、ガイドライン第四章から六章にある通り、受援側としての体制、応援側としての体制、そしてNPOやボランティア等と連携する際の体制と3種類の体制構築について記述している点にあります。何故、体制構築にここまで具体的である必要があるのでしょうか。

地方公共団体における受援の現状は、災害対策本部として編成された各班の要員が受援窓口として、応援側の地方公共団体やボランティア団体と調整しながら人的・物的資源の受け入れを行っています。この場合、メリットとしては災害対応に最も精通した現場部隊の要望や意見を基に応援を受け入れていることが挙げられる一方、デメリットとして地方公共団体全体の過不足を災害対策本部として集約・把握することが困難であり、班間での資源の融通、追加での応援要請の意思決定ができないことにあります。つまり、個別最適であるが、全体最適でないことです。

また、各班におかれた受援窓口要員は専任であることは少なく、応援側との調整や応援物資の管理に忙殺されつつ、本来の班としての活動を行う必要があり、窓口機能をしっかりと果たすことは難しいのが現状です。

上記の様な課題に対する解決策が、事前に受援体制を整備しておくことです。全庁的には、受援に関するあらゆる調整を担当し、情報を一元的に管理するため専任部隊を編制。加えて、災害対策本部各班にも、受援調整を行う専任担当を配置することが重要です。では、具体的にどのような体制を構築すべきなのか、紙面の関係上、市町村を例に説明いたします。

「受援体制ガイドライン」によれば、市町村が設置する受援体制として、全庁的な受援調整と情報集約を担当する「受援班」を設置します。「受援班」は班体制であるため、複数名の職員から構成され、班長にはそれ相応の役職者が充てられる必要があります。その為、小規模自治体においては「受援班」ではなく、「受援担当」を配置します。

「受援班」「受援担当」の主な役割は、以下の5つとなります。
# 役割 概要
1 受援に関する状況把握・とりまとめ ・各班からの応援ニーズのとりまとめ
・各班における応援受け入れ状況の把握
2 資源の調達・管理 ・資源の過不足の整理、管理帳等による資源の管理
・今後不足すると思われる資源の応援要請
3 庁内調整 ・受援に関するとりまとめ情報を各班担当に共有
・その他、庁内全体として調整すべき事項の検討
4 調整会議の開催 ・「3.」の調整すべき事項の検討結果を基に、全庁的な調整会議を開催・運営
5 応援職員への支援 ・応援職員に待機場所、適切な執務環境の提供
・応援職員による定例ミーティング等の会議を支援

以上の役割から判る通り、「受援班」「受援担当」は全庁的な情報のとりまとめと共有、そして調整を行います。その為、災害対策本部として「受援班」「受援担当」を位置付けた場合、各種の災害活動に従事する現場部隊よりも上位機関として位置付けることが可能です。一例ですが、「統括班/総括班」の様な統括部門として「受援班」「受援担当」を位置付けた時の体制図を下記に示します。
 
20160613_kumamoto1.jpg
<統括調整グループとして位置付け>
20160613_kumamoto2.jpg
<受援担当を統括班内に位置付け>

※なお、「受援班」を統括調整グループとして「統括班」と共に位置付けた際、「総括班」との役割分担や責任範囲について不明確な部分があるため、「受援体制ガイドライン」では「受援班」を<災害対策本部の1班として位置付ける>ことも推奨しています。
 「受援班」「受援担当」を統括部門として首長に近い位置に位置付けることで、全庁的な状況の把握や調整が容易になりますが、もう1つ重要な体制があります。「受援班」「受援担当」からの指示を受ける一方、災害対応中の現場各班からの要望を「受援班」「受援担当」に伝達する“橋渡し”的な役割を担う「受援窓口」も引き続き配置することです。

策定のポイント2:対象業務の整理

これまで受援体制の重要性をお話しましたが、体制と共に事前に検討・整理しておくべき事項があります。それが、受援対象となる業務です。つまり、応援を受けて実施する業務をあらかじめ特定し、その業務の具体内容を整理し、応援側に依頼する範囲を明らかにしておくことが重要となります。

災害が発生し自身も被災しているため十分な職員や資機材等の災害対応資源が不足する状況で、普段の業務(経常業務/通常業務)に加え災害時特有の応急業務を実施する必要があります。限られた資源を、過不足なく必要な業務に投入するためには、事前に重要業務(「非常時優先業務」)を特定しておくと共に「自組織の職員を投入すべき業務」「応援を受け入れる業務」を整理することが重要です。

応援を受ける目的は、自組織の職員では対応できない業務(例えば、消防や自衛隊が行う救助活動等)を実施すると共に、自組織の職員しかできない業務に対して、応援を受け入れたことで余剰が生じた自組織の職員を集中して投入することです。

事前に「非常時優先業務」を整理、更に「自組織の職員を投入すべき業務」「応援を受け入れる業務」を整理することで、本当に必要な応援が何であるのかを特定することができます。また、災害時応援協定を締結している他の地方公共団体やボランティア、民間企業等の応援側とも必要となる人的・物的資源の数量や仕様(人的資源(つまり応援職員)についてはスキルや経験)を事前に調整することできます。予め必要となる資源の量や内容が解れば、資源管理台帳などを作成し、発生時はこの管理台帳を基に応援資源の管理が可能となります。

では、どの様な業務が受援の対象となる業務となるのでしょうか。残念ながら本「受援体制ガイドライン」には、業務を特定する手順は具体的には記されていません。しかしながら、本ガイドラインを策定した内閣府の検討WGの資料 等を整理すると、概ね以下の業務が受援対象の業務と言えるでしょう。
  • 大量の人的・物的資源を必要とする業務(例:避難所の運営)
  • 経験や専門的スキルが必要な業務(例:救助・救急、消火活動)
  • 自組織の体制や能力では実施困難な業務(例:緊急支援物資の輸送)

連携訓練の重要性

これまで、応援を受け入れる際の体制や対象となる業務を整理してきましたが、他の計画と同じく受援についても平時からの教育や訓練が必要です。特に、応援側との連携訓練は必須と言えるでしょう。これまでの弊社の調査によれば、例えば、受援側と応援側で使っている地図や地名が異なっていた等、受援の落とし穴は意外なところに隠れています。

また、訓練を通じてより確かな応援-受援関係が築けるような取り組みを検証することができます。例えば、緊急支援物資の輸送や配送について、物資拠点や避難所の位置情報を一覧表でまとめるべきか、それとも地図上にまとめるべきか、地図上にまとめる際の表記の方法は何か。これは一見細かいようにも見えますが、実際に熊本地震で現場の職員と物流会社の間で生じた混乱の一部です。

自組織から見れば些細なことでも、複数の組織が集まれば、些細なことが大掛かりな問題となることは多々あります。平時からの訓練等を通じ、「顔の見える関係」を築き、そして有事に備えることが重要です。