EUの「企業サステナビリティ報告指令 (CSRD)」 実施に向け、解説書「CSRD Essentials」を発表 GRI
掲載:2024年05月27日
リスクマネジメント速報
目次
グローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)は5月15日、2022年12月に採択された「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」の実施支援を狙いとして、新たに「CSRD Essentials」を発表しました。この文書は政策立案従事者やサステナビリティ(持続可能性)報告者に向けた、指令の重要なテーマをわかりやすく説明する無料の解説書です。
CSRDとはサステナビリティの問題が企業のパフォーマンスに与える影響と、企業活動が社会および環境に与える影響を報告することを義務付けたEUの法律を指します。CSRDは、2014年から存在していたNFRD(Non-Financial Reporting Directive、非財務報告指令)を改訂・拡張する形で2023年1月に発効され、EU域内の約42,500社のほか、EU域外企業でも域内に対象となる子会社もしくは支店があるなどの場合には義務の対象になるとされています。企業規模に合わせて段階的に適用され、早い企業では、2024会計年度から報告対象となります。この法律により、サステナビリティ報告の要件とデータ収集が強化され、報告精度の向上が期待されています。
しかしながらCSRDは、非常に詳細で複雑な規制枠組みです。たとえば、CSRDに加えて、その報告の基準として「EUサステナビリティ報告基準(ESRS)」が別に制定されています。また報告のために実施すべき調査・評価プロセスについて定めた「企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)」があります。企業がこれらの規制を完全に理解し、適切に適用するには、専門的な知識と解釈が必要です。
こうした複雑な情報を分かりやすく整理し、具体的な手順や要件を明示することで、企業が効率的に規制に準拠できるようにするために策定されたものが今般公開された「CSRD Essentials」です。この解説書では、CSRDの前進NFRDとの違いや、ESRSの適用開始のタイミング、ESRSの概要やバリューチェーンの考え方、監査や罰則など、幅広い項目をカバーする内容が記載されています。
英語版のみではありますが、CSRD EssentialsはGRI公式サイトより無料でダウンロードすることができます。
参考文献
おすすめ記事
- 事業活動およびサプライチェーンにおける強制労働のリスクに対処するためのEU企業のデュー・ディリジェンスに関するガイダンス
- 人権デュー・ディリジェンス(人権DD)
- 経営者のリスクマネジメント姿勢が企業価値にダイレクトに反映されていく理由と企業に求められる取り組みとは
- 「ESGリスクに関わるガイダンス」をERMに適用するには
- ESG
- サステナビリティ
- 民間企業の方のための気候変動適応ガイド
- カーボンニュートラル
- コージェネレーション
- TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
- 日本版のサステナビリティ開示基準の草案を公表、金融審議会ではSSBJ基準の適用義務化に向けて検討開始 SSBJ/金融庁
- サステナビリティ情報の開示と保証のあり方を検討するためのWG設置へ、金融審議会資料を公表 金融庁
- 企業に求められる人権尊重責任を解説、「生命保険会社における人権対応ハンドブック」を公表 生命保険協会
- 環境マネジメントシステムを活用した環境DD(デュー・ディリジェンス)の手引書を作成 環境省
- 「サステナビリティ・トランスフォーメーション銘柄」(SX銘柄)の募集要領などを公表 経産省
- 「サプライチェーンと人権」に関する政策と企業への適用・対応事例(改定第九版)を公開 JETRO
- 人権や環境などへの取り組みについても調査、日本企業の海外事業展開に関する調査結果(2021年度速報版)を公表 JETRO
- 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン順守へ、実務参照資料を公表 経産省
- すべての企業が対象、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定 経産省
- サプライチェーンにおける人権尊重の取り組みに関する初の調査結果を公表 経産省・外務省
- サステナブルファイナンスの取り組みと課題を整理、有識者会議が第4次報告書を公表 金融庁
- TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
- TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
- サステナビリティ関連情報の開示を促進、「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」を公表 金融庁
- 「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第1版)」を公表 JETRO