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ガイドライン

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)

2017年06月06日

HACCPとは、1960年代に開発された、食品原材料の受入れから最終製品までを工程毎に管理し食品の安全性を確保する手法です。従って、関係してくるのは、具体的には食品の製造や加工を営む組織となります。
HACCPはHazard Analysis and Critical Control Pointの略称で、一般的にはハサップもしくはハセップと呼びます。厚生労働省は「危害分析重要管理点」と日本語訳しています。ちなみにHACCPに基づく管理が十分機能するよう一連の過程が体系付けられた仕組みをHACCPシステムと呼びます。

HACCPの活用

HACCPの活用方法には2通りあります。1つは実質的に組織の食品の安全性向上を図るための活用です。つまり食の安全性に関する仕組みを整備導入する際の拠り所として活用する方法です。なお、HACCPはそれのみで機能するわけではないことに留意が必要です。食品製造に係る施設・設備の保守管理や作業従事者の衛生管理といった一般的な衛生管理事項を実施するためのプログラム*1の上に構築される必要があります。また、プログラムとはルールや計画の総称であり、ここではHACCP システムを効果的に機能させるための前提となる、施設・設備の保守管理、作業に関する衛生管理、従業員の衛生管理と教育訓練、製品の回収等のプログラムがあります。

もう1つは組織の食品の安全性が担保されていることの外部アピールを目的とした活用です。すなわちHACCP認証制度の利用です。HACCP認証制度とは、組織がHCCAPの定める要求事項を満たす形で体制やルールを整備するとともに、運用を行なっているかどうかを、独立公平な立場にある第三者機関に審査してもらい、認証書を発行してもらえる制度です。なお、認証制度のスキーム(認証スキーム)は、国内外通じて、1つではなく、複数存在しています。


*1:通称PRP( Prerequisite Programs)と呼ばれ、前提条件プログラムとか一般的衛生管理プログラムと呼ばれます。 HACCP システムを効果的に機能させるための前提となる、施設・設備の保守管理、作業に関する衛生管理、従業員の衛生管理と教育訓練、製品の回収等のプログラムがあります。コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission (CAC))*2が、食品の製造または加工における一般的な衛生管理に関する国際的規格として「食品衛生の一般原則」(General Principles of Food Hygiene CAC/RCP 1-1969)を発行し、それに基づき、厚生労働省がガイドラインとして「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」を発行しています。

*2:国際的な食品流通や海外旅行の増加が、容易に疾病の世界的拡散を生じてしまう時代背景の中で、消費者の健康保護および世界で流通する食品の安全確保を目的として、1963年に国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO))と世界保健機関(World Health Organization (WHO))が設立した政府間組織です(我が国は1966年加盟)。コーデックス委員会では食品の安全性と品質に関して国際的な規則・基準(コーデックス規格)を定めており、各国における食品に関する規則・基準は、このコーデックス規格との調和を図るよう推奨しています。

国内外のHACCP認証スキーム

1.国内認証スキーム

国内におけるHACCP認証スキームを表1.に示します。認証品目の多数化対応や、中小企業におけるHACCP認証の容易化等の目的により種々の制度があります。したがって、事業者は自らの事情に応じて選択する必要があります。
 
表1.国内におけるHACCP認証スキーム
 # 認証制度名 概要
1 「総合衛生管理製造過程の承認制度」によるHACCP認証 HACCPの考え方を取り入れ、厚生労働省が1995年に食品衛生法第13条1項に規定して開始した承認制度。業者からの申請に基づき、施設毎、食品毎に厚生労働大臣が承認。承認対象は6品目。現在、500施設(723件)が承認取得(2015年12月末時点)
2 自治体によるHACCP認証 各自治体(都道府県、政令指定都市等)が食品関連事業者を対象に、HACCPの考え方を参考にして独自に基準を設け認証している制度。但し、自治体ごとに特徴があり、統一された基準はない
3 業界団体によるHACCP認証   一般社団法人大日本水産会、一般社団法人日本卵業協会などの業界団体がHACCPの考え方を取り入れた業界独自の基準を設け認証している制度
4 大手小売業者によるHACCP認証 大手小売業者等が、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理基準を定め、取引先となる食品製造事業者に取引基準として要求するもの

ちなみに農林水産省では、食料産業のグローバル化、その一方でわが国におけるHACCP普及率の伸び悩み、国際的に通用する認証スキームがわが国にないことを背景に、2014年4月に「食料産業における国際標準戦略検討会」を設置、課題について検討を行っています。
 

2.国際的認証スキーム

国際的なHACCP認証スキームを表2.に示します。尚、本記事では各認証スキームの詳細説明は省略いたしますので、各スキームのホームページ情報等を参照ください。

 
表2.国際的なHACCP認証スキーム
 # 認証スキーム 認証団体等 認証取得数【日本】
1 ISO22000:2005
「食品安全マネジメントシステム―フードチェーンのあらゆる組織に対する要求事項」
 国際標準化機構(ISO)   1,043組織
(2014年)
2 FSSC (Food Safety System Certificate) 22000
「食品安全システム認証22000」
国際認定機関フォーラム(IAF)に所属する認定機関 1,187組織
(2016年)
3 SQF2000(Safe Quality Food 2000) SQF認可の認証機関 130件
(2008年)

HACCPの構成要素

HACCPは以下に示す7原則から成り立っており、自社の食品安全管理システムがHACCPシステムであるためには7原則全てを満たす必要があります。 
(原則1) 危害要因の分析・特定 
  ・工程ごとに原材料由来や工程中に発生しうる危害要因を列挙
(原則2) 重要管理点(CCP :Critical Control Point)の決定 
  ・危害要因を除去・低減すべき特に重要な工程を決定(加熱殺菌、金属探知等)
(原則3) 管理基準の設定
  ・危害要因分析で特定したCCPを適切に管理するための基準の設定(温度、時間、速度等々)
(原則4) CCPをモニタリングするシステムの設定 
  ・CCPが正しく管理されているかを適切な頻度での確認および記録の設定
(原則5) 管理基準から逸脱した時に取るべき改善措置の設定
  ・モニタリングの結果、管理基準が逸脱していた時に講ずべき措置の設定
(原則6) HACCPが効果的に機能していることの検証手順の設定
  ・HACCPプランに従って管理が行われているか、修正が必要かどうかの検討
(原則7) 文書化および記録と保管方法の設定
  ・HACCPが確実に実施されている記録、その保存方法の検討

なお、HACCPには、これらの原則を満たすに当たって、何をすべきかについては書かれていますが、どうやってについては記述されていません。従って、組織は関係省庁及び自治体等から出されている参考資料や外部専門家を活用しながら、自組織にあった方法を見極め、要件を満たすよう仕組みを構築していくことが必要になります。

HACCPの国際規格化の潮流

HACCPはその名前の冠にISOが付いていないことからもわかりますように、国際規格ではありません。ですが、食品の安全性を保証する手段として、HACCPシステムによる食品の安全管理の法令化が世界的な規模で推進されています。
その歴史を紐解くと1993年、コーデックス委員会は「食品衛生の一般原則」の付属書として、「HACCPシステムとその適用のためのガイドライン」(Guidelines for the Application of the Hazard Analysis Critical Control Point(HACCP) System CAC/GL 18-1993)を制定し、各国にその採用を推奨しました。ガイドラインは、2003年に小規模・発展途上の企業に対するHACCP導入を推進するための改訂が行われ、現在に至っています。
さらに、1995 年の世界貿易機関(WTO)発足に伴い,WTO加盟国は自国の食品安全の基準をコーデックス規格と調和させるよう努めなければならなくなり、したがって、食品の安全性を保証する手段としてHACCPシステムを食品の安全管理に適用しようという取組みが世界的な規模で推進され、法令化されています。

海外におけるHACCP法令化の状況

下表3は、まさにHACCPがどれくらい、世界各国の法令に取り込まれているか端的に示すものです。我が国から当該食品を輸出する場合、輸出先国が求めるHACCPを規定している法令等に対応しなければなりません。
 
表3.海外におけるHACCPのプレゼンス
 米国  【HACCP導入食品】
1997年より、州を越えて取引される水産食品、食肉・食 鳥肉およびその加工品、果実・野菜飲料について、順次、HACCPによる衛生管理を義務付け 

【食品安全強化法(FSMA)】   
2011年1月に成立した「食品安全強化法」は、  
① 米国内で消費される食品を製造、加工、包装、保管する全ての施設のFDA(米食品医療品局)への登録とその更新を義務付け
② また、対象施設においてHACCPの概念を取り入れた措置の計画・実行を義務付け
 
EU 【HACCP導入食品】   
2004年より、一次生産を除く全ての食品の生産、加工、 流通事業者にHACCPの概念を取り入れた衛生管理を義務付け(水産食品、食肉、食肉製品、乳、卵・卵加工品、ゼラチンなどは詳細要件有り)
※なお、中小企業や地域における伝統的な製法などに対しては、HACCP要件の「柔軟性」(Flexibility)が認められている
カナダ 【HACCP導入食品】   
1992年より、水産食品、食肉、食肉製品について、順次、HACCPを義務付け
オーストラリア 【HACCP導入食品】   
1992年より、輸出向け乳および乳製品、水産食品、食肉および食肉製品について、順次、HACCPを義務付け
韓国 【HACCP導入食品】   
2012年より、魚肉加工品(かまぼこ類) 、冷凍水産食品、 冷凍食品(ピザ類、まんじゅう類、麺類)、氷菓子類、非加 熱飲料、レトルト食品、キムチ類(白菜キムチ)について、順次、HACCPを義務付け
台湾 【HACCP導入食品】   
2003年より水産食品、食肉製品、乳加工品について、順次、HACCPを義務付け
出典:「HACCP導入普及推進の取組」 2015年2月 厚生労働省食品安全部 監視安全課 HACCP企画推進室

日本の法規制へのHACCPの取り込み状況

わが国にも、HACCPに言及する法令がいくつか存在します。わが国における各種法令等へのHACCP取込み状況は表4.の通りです。
 
表4.わが国における各種法令等へのHACCP取込み状況
   法令等 概要
1996年 食品衛生法の一部を改正
HACCPシステムを組み込んだ「総合衛生管理製造過程の承認制度」施行

    HACCPの考え方を取り入れ、厚生労働省が1995年に食品衛生法第13条1項に規定して開始した承認制度。業者からの申請に基づき、施設毎、食品毎に厚生労働大臣が承認。承認対象は6品目。現在、500施設(723件)が承認取得(2015年12月末時点)
 
1998年 厚生労働省と農林水産省が共同で「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」(通称:HACCP支援法)を制定 HACCP導入に必要な施設整備や、その前段階の衛生・品質管理等のための施設および体制の整備に対する日本政策金融公庫による長期融資支
本法は5年間の時限法として制定されましたが、2013年には中小事業者の食品の安全性向上の取組を後押しするための改正が行われ、2023年12月までの10年間の延長が決まっています
2014年 厚生労働省は「食品等事 業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」を改正 管理運営基準について、従来の基準に加えて、HACCP方式(危害分析・重要管理点方式)を用いて衛生管理を行う場合の基準の導入 
 

日本国内企業へのHACCPの普及状況

前述のような法制度が整備されてきましたが、農林水産省食料産業局企画課の「2015年度食品製造業におけるHACCPの導入状況実態調査」によると、2015年10月現在において、大企業(販売金額50億円以上)のHACCP導入率が87.9%であるのに比較し、中小企業(食品販売金額1億円~50億円)のHACCP導入率は34.5%に留まっています。HACCPの導入に当たっての問題点は、「施設整備に多額の資金が必要」が68.9%と最も多く、次いで「導入後の運用コストが大きい」(49.4%)、「従業員研修の余裕がない」(44.1%)となっており、中小企業におけるHACCP普及率の拡大が急務であると言えます。

HACCPの認証費用

HACCPの認証費用比較を表5.に示します。業者は自らの認証目的に応じて選択する必要があります。
通常はこれらに加え、外部専門家を入れる場合にはその費用に数百万円がかかります。また、ルールを守ることになるであろう現場も巻き込んだ構築推進が必要になりますので、そうした稼働工数も考慮しておくことが求められます。
 
表5.HACCP認証費用比較
 # 認証制度名 認証費用
1 「総合衛生管理製造過程の承認制度」 新規申請:239,700円(更新期間3年)
更新時 :170,200円
2 自治体によるHACCP認証  無料~数万円程度が多い
3 業界団体によるHACCP認証 数万~十数万円程度が多い
4 ISO22000、FSSC22000
 
認証規模によって大きく異なる
概略数十万~数百万円と推定される

参照先:
#1:食品衛生法施行令(昭和28年8月31日政令第229号)
#2:当該自治体(一般財団法人食品産業センター HACCP関連情報データセンターよりリンク)
#3:当該業界団体(一般財団法人食品産業センター HACCP関連情報データセンターよりリンク)   
#4:当該認証機関

(文責:小林 利彦

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