品川リフラクトリーズ様
―貴社の事業内容を教えてください。
児島常務: 当社は工業用耐火物の製造販売をおこなっています。おもに製鉄業、セメント業のお客様を中心に、工場の製造ラインで利用される耐火物を製造しております。売上規模としては常に国内で1~2位、世界でも4~5位に位置付けており、多くのお客様にご支持いただいております。
生産拠点は海外にもあり、輸出も一部おこなっております。
東日本大震災で製造ラインが半年ストップ
―BCPに取り組まれた理由を教えてください。
被害の内容としては、幸いにも人命に関わるものは無く、建屋の一部損壊と生産設備の破損だったので、一部新規購入や修理が発生しました。また、地域全体が混乱していたことで、鋼材の入手が困難だったり、復興にあたる人手が不足したり、輸送のための道路状況が混乱したりと言った事情から、通常よりもより時間を要してしまいました。もっと激しい被害であれば、どんなに悲惨な状況になっていたかと考えると恐ろしいです。児島常務: 当社は国内に製造拠点を3拠点と、各地に営業所を有しておりますが、そのうち福島県湯本にある製造拠点が東日本大震災の際に被災いたしました。この製造拠点では他の工場で代替生産のできない製品を製造しているため非常に重要な拠点だったのですが、復旧に半年を要しました。
社員ががんばってくれたので、早期の立ち上げができたと考えているのですが、それでも結果として半年間の事業中断が生じてしまいましたので、二度とこうした事態に陥らないように、事業継続計画の策定に取り組むことにいたしました。
多数の実績を持つコンサルの安心感
―何故ニュートン・コンサルティングを選ばれたのですか?
児島常務: 当初社内での構築を考え、担当を決めて、社外セミナーに参加したり本で勉強をしたりしたのですが、やはり未経験の素人には難しい作業であることがわかりました。そこで、しっかりとしたものを作るために専門家を活用したいと考え、数社にお声をかけさせていただきました。
児島常務: その中でもニュートンさんは、多くの会社を手掛けられ、実績を積まれているので安心感がありました。また、取り組みの姿勢も柔軟で、当社にマッチしたものを作っていただけそうだと感じたこと、また一生懸命やっていただけそうだと感じたことが決め手でした。
代替生産の効かないラインをどうするか
―今回のプロジェクトの内容を教えてください。
社内で推進チームを結成し、中長期的プロジェクトとして事業継続計画策定を開始しました。
まずは、緊急時の対応については全社展開をし、本社と一部の製造拠点を対象として、有事の対応策を策定しました。一方で、事業継続プランについては代替生産の効かない製造をおこなっている湯本工場を優先して取り組むこととしました。他にもいくつか代替のきかない製品を製造している工場があるので、そちらについては今年中にプランを策定したいと考えています。
もちろん理想論としては全ての製品について複数の製造拠点で代替生産がおこなえればベストなのでしょうが、装置産業ですので、それを実現するためには莫大な設備投資が発生します。現時点では体制は大きく変更することなく、いかに災害の被害を最小限に食い止め、早期に事業復旧を可能にするかということに力点を置いて検討・策定をしました。
もし湯本工場が再度同じような災害にあったとしても、今度はもっと早く復旧できる体制が実現できたと考えています。
また今回のプロジェクトの良かった点として、2つあります。
まずは、湯本工場の被災体験を全社に水平展開、共有・知識化できたことです。今までも当社は各製造拠点で防災規程やマニュアルなどは完備していましたが、拠点によって内容がマチマチで、全社として統一されていたわけではありませんでした。今回のプロジェクトで安全環境部の協力も仰ぎつつ、湯本の被災体験をベースにそれを高い水準に策定し直し、統一できたのは、大きな成果だったと感じています。
しかも検討しなくてはいけないのは建屋や装置の破損だけではありません。材料の調達や社員の参集など、今までのマニュアルにはなかった、他の製造拠点では考え付かないような項目を湯本の知見を活用することで反映できたのです。書面にもなりましたので、今後共有・活用されていくでしょう。
次に、プロジェクトの仕上げとして全社会議と机上訓練をおこなったのが非常に有効だったと感じています。全社会議にはニュートンの副島社長にご登壇いただき、専門家からのご講演をいただいたことで、参加した社員全員に危機意識が芽生えたと思います。我々素人が話すのとは説得力が違う、と感心いたしました。また、机上訓練には当社の社長、取締役が参加したことで、経営トップの理解が得られたことは非常に有意義でした。事業継続計画のような取り組みは経営トップの関与が不可欠です。実際に訓練に参加することで、有事にどのようなことが起こるのか、それに対して会社はどのように対策をしていこうとしているのかをきちんと共有できたことは、実際の災害時にも役立つのは間違いありません。
―苦労されたポイントや気づきはありますか。
今回のプロジェクトはまだまだ当社の事業継続の取り組みのとっかかりに過ぎません。これから湯本以外の製造拠点へも展開しなくてはなりませんし、さらなる改善が必要だと感じています。
ただ、前述のとおり全社会議を開催し啓蒙したり、防災カードやヘルメットを配布、社内数か所に災害救助用具等を設置するなどの取り組みを通じて、徐々に社員の意識も変わってきていると感じています。これをさらに推進して、災害につよい会社を実現していきたいと考えています。
ポイントをおさえた策定が可能に
―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか?
当初は自社内での策定を検討していたということは申し上げたと思うのですが、教科書だけを読んで作ろうとすると、膨大な作業で、どこに力を入れてどこを抜けばいいのかが分かりませんでした。ニュートンさんに指導していただいたお蔭でポイントをおさえた策定ができたと感じています。
また、今回のプロジェクトでは複数拠点を対象としたのですが、メンバーの参加状況に応じてミーティングの内容を変更してくださったり、作業を進める上でのスケジュール管理をおこなっていただき、大変助かりました。社内でおこなっているとどうしても相手の事情を斟酌しすぎて作業依頼がしにくかったりするのですが、そのあたりもうまくToDoリストを活用したり催促していただくことで、スムースにプロジェクトを進めることができました。
策定過程全般を通して、よくコミュニケーションが取れたので、満足のいくものができあがりました。
―今後の予定についてお聞かせください。
今年は、湯本以外の代替生産設備を持たない工場を優先して策定を進めていきます。机上訓練も再度おこないたいと考えていますし、さらなるブラッシュアップを図っていきます。必要に応じてコンサルの方のお力も上手に活用しつつ進められればと考えています。
利用サービス
プロジェクトメンバー
お客様 |
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取締役 常務執行役員 児島 眞太郎 氏 |
執行役員 経営企画部長兼内部監査室長 市川 一 氏 |
情報システム部長 片山 哲也 氏 |
経営企画部 主任部員 横井 誠 氏 |
経理部 主任部員 下山 隆行 氏 |
総務部 主任部員 土屋 好典 氏 |
総務部 石原 康行 氏 |
ニュートン・コンサルティング |
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取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介 |
担当の声
理想論に終わらない、真摯な検討の積み重ねに感銘しました
品川リフラクトリーズ様のBCPでは東日本大震災で被災し、代替生産の効かない製品の製造拠点でもある湯本工場を対象範囲にするということで、いつも以上に理想論ではなく現実的に何ができるのかを意識しながらご支援しようと心掛けてきました。
事業継続の対策を検討するに当たっては
・工場に被害が出たからもうダメだと投げ出すのではなく
・製造ラインの一つが使えない場合は代わりにどんな手段がとれるのか
・製造工程の中の一部の設備が使えないなら代わりにどんな手段がとれるのか
などを真摯に検討していただきました。
こうした誠意の積み重ねの結果が100年以上続く歴史ある企業の信頼につながるのかと、今回のプロジェクトを通して私自身にも大変勉強になりました。
1年目の活動を終えて、他の拠点へと展開していくフェーズへと移行いたしますが、これからも着実にBCPの取組を続けられるだろうと確信しています。