-事業内容を教えてください。
ビザの申請代行業務と貿易・卸業が当社の主力事業です。ビザの申請代行においては17年の歴史があり老舗です。日本人にはその意識は薄いのですが、パスポートは重要書類です。当社は17年間に渡りその取り扱いを無事故で行っており、お客様の信頼を得ています。
-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。
実は「BCP」という言葉は知らなかったのですが、支援事業のご案内をいただいて説明を聞き、今まで自社で取り組んだことのなかったことだったので、良い機会だと思い申し込みました。
BCPというのは、つまりビジネスを継続させるにはどうすれば良いのか、ということです。今まではビルの消防訓練などには参加する程度で社内で特別な対策などは行っておりませんでしたし、ましてや天災の際にどうするかということは頭の中では何となく考えたことはあっても、情報としてまとめたことはありませんでした。
今回は非常に良い機会だったと思っています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社は立地条件や会社の置かれている状況などから地震による被害が一番甚大であろうということから、ビザ申請代行業務について地震を想定したBCPを構築しました。
ビザ申請代行業務では社員が外出していることが多いため、安否確認の仕組みとパスポートの保全、チェック、そしてお客様への返却がスムースに行えるように業務の見直しを行いました。
また、災害後にできるだけ素早く通常業務に戻すために、関係諸機関(外務省など)の状況を確認するなどのステップも盛り込んでいます。外勤スタッフが旅行代理店や大使館を行き来する途中で被災したり、事務所機能がストップすると、ビザ申請代行業務が止まってしまいます。私共はこの業務が停止してから48時間以内には再開したいと考えておりますので、通常とは異なる体制と代替手順でこれらの状況に対処することにしました。
例えば、安否確認には「携帯版BCP」を活用し、連絡がとれない場合に自発的に動くためのルールを決めました。また、事務所に立入不可能になった場合を考え、当社オフィスから徒歩でたどり着ける役員宅を代替事務所とすること、ここを拠点としてリーダー3名の携帯電話を駆使して旅行代理店様からの問合せニーズに応えること、また公共交通機関を利用できないときは、徒歩または自転車等を使ってリレー式に大使館や旅行代理店を回ることなどを決めました。
【BCPの概要】
対象事業 | ビザ申請代行 |
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対象リスク | 地震 |
被災シナリオ | 事務所への立入不能、外勤スタッフの被災、顧客データの消失他 |
事業継続策 | 役員宅の代替事務所としての活用、営業部からのスタッフ補充他 |
-今後の運用計画を教えてください。
今回作ったのはバージョン1、ここからがスタートだと思っているので、今後は今回議論に加われなかった現場担当者なども含めて、内容を深めていく活動になると思います。BCPは文書を作ることが目的ではなく、その概念が企業の中に活きてこそだと考えておりますので、社内にどれだけ浸透させられるかが重要です。
今後の運用としては、現在年に2回行っている集合研修合宿のメニューに盛り込むことを考えています。集合研修は事業計画策定と評価の場なのですが、全社員が集まる良い機会ですし、まとまった時間が取れますので、これを通して社内へ啓蒙したいと思います。
-取組を検討中の企業へメッセージをお願いします。
BCPは企業としては当然にして考えるべき課題であると思います。ビジネスの継続を実現する要素は人や金などいろいろあります。それらをどのように準備して何かあったときには生き残るのか、それをきちんと考えることは非常に重要です。
大企業なら形から入ってもこうした仕組みを導入することができるのかもしれませんが、中小企業の場合はやはりトップが理解しないと動きませんよね。まずはトップが感じて、率先して取り組むことが肝要だと感じます。