事例紹介: 株式会社国分電機

株式会社国分電機 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。有事の際の3拠点間の業務振替は机上の空論。手順に落とすと動かないことばかりでした。国分電機 ロゴ

-事業内容を教えてください。

当社は建築設備や工場などで使われる配電盤の製造・販売・メンテナンスを行っています。配電盤を製造している企業は国内に400社程度あり、非常に競争の激しい業界です。当社は比較的高電圧な製品やデータセンター向けの特殊な分電盤(PDU)を製造する高いノウハウを持っていることが強みです。配電盤は注文住宅を作るのに似ているのですが、用途のヒアリングから始まり、設計・修正を経て実際の製造工程に入ります。当社はトヨタ生産体制の流れを汲んだ製造ラインを構築し、短納期を実現しています。

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

国分電機代表取締役社長 国分 直人氏
国分電機
代表取締役社長 国分 直人氏

一昨年の中越沖地震の際に、当社のお付き合いのある業者さんが被災され、事実上工場の操業がストップしてしまったことを目の当たりにし、振り返って、自社が同じ状況に置かれたらどうだろう、と考えると、非常に厳しいと感じたことがスタートです。

前述のとおり、当社は競合他社が非常に多い業界で、国分電機の製品でなければならない、というものが殆どありません。被災など理由は何であれ、当社が納品できない、となれば、お客様はすぐに他社に行ってしまうことが想定されます。配電盤は一度入れたら20年~30年は使うものなので、一度離れてしまったお客様を取り戻すことは大変困難です。そのような当社のビジネス環境を考えると、お客様を失わないようにするためにはどうしたら良いのか、という観点からBCPの必要性を感じておりました。

そこで、昨年から私と担当者で紙ベースでの策定を開始しました。わかっている範囲で必要だと思われる対策を盛り込む、という形で作成し、業務ごとに担当者なども割り当てていたのですが、社員への教育、訓練などの検証作業などはまた行っておりませんでした。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

当社は東京に本社、茨城と鹿児島に生産工場がありますが、今回は茨城工場が地震災害に遭った場合のBCPを策定しました。

前述のとおり、当社は厳しい競争下で事業を行っておりますので、早期に生産ラインを復旧する必要があります。地震災害の際には出荷待ち製品は破損してしまうという想定で納期の遅れをできる限り短縮するために、2つのことに留意しました。一つは、生産計画をつかさどる工務課の機能をいちはやく立ち上げて、被災した製品や仕掛品の再出荷計画をすばやく立てられるようにすること。もう一つは、鹿児島工場に一部の工程の機能を移して代替生産を行うことです。

当社の生産パターンは、設計、板金、塗装、組み立てといった各工程をモジュールのように独立的に扱うことができるので、例えば板金工程が被災したり、人員不足で業務を遂行できなければ、外部の板金業者に依頼するか、鹿児島工場で加工制作することができます。一番早く立ち上げなくてはならない設計の機能については本社にも工場と同等の機能があるので、そちらを利用することができます。ただ、現時点では拠点間のデータの共有が完全ではなかったり、鹿児島工場のキャパシティは茨城工場よりも小規模なので、2直交代での生産が必要になるなど、検討しなくてはならないポイントがあります。

また、人員確保の側面では、一企業の復旧よりも隣人同士の共助が優先される地域社会の特性を考慮して、より現実的な人員配備戦略を考える必要があること、遠方出張に慣れていない社員が緊急時にどこまで協力的に参加してくれるかといった課題も残ります。

【BCPの概要】

対象事業配電盤の製造と販売
対象リスク茨城北部地震(震度5以上)
被災シナリオ生産ラインの停止(機械装置の位置ずれ、仕掛品・製品の転倒、人員の欠員、電気・水道・通信インフラの停止)、サーバの停止による設計データのアクセス不能
予防・低減策部品・仕掛品・完成品の転倒防止
バックアップデータ(CAD/CAM/BIBLE)の遠離保管
PC(タレットパンチプレス含む)・CAD・什器の固定
WEBページに緊急時の顧客向け問合せ窓口を掲載
事業継続策東京本社、カスタマーセンター、鹿児島工場を連携させ、代替生産を継続する。

-自社で策定された際との違いはなんですか。

一部の人間の頭でっかちでやってもダメだということを痛感しました。

たとえば、鹿児島工場で代替生産を行うことは元々のプランにも入っていたのですが、その際には「有事の際には鹿児島で生産を継続する」ということが書かれているだけで、具体的な手順などについては考慮できていませんでした。ところが今回現場の人間と確認してみると、図面データの共有が完全でなかったり、現状ではとても目標としている2週間で同等の製品を出荷することは無理だということがわかりました。

今回社内の人間をもっと巻き込んで、じっくりと話したおかげで、より実践的な計画ができあがったと考えています。ただ、実は現状のものもまだ机上だとは思っているんです。実際には訓練と修正を繰り返して、もっと作りこんでいく必要を感じています。

-苦労されたポイントはありますか。

最も難しかったのは、被災想定をどこに置くのかを決めることです。あらゆる事に対応できるようにしたい、という思いと、でも、割り切って制限して決めないと議論が拡散して何も進まない、という2つの極限の間で悩みました。早い段階で制限したシナリオを決定して進めたので議論はスピーディだったのですが、そうするとどうしても参加者の中に、「これ以外の想定に対しては対応できない」という割り切れない思いが残ってしまいます。

当社の場合、新潟の知り合いの企業の大変な事態について多く聞き及んでいたからこそ、本当にこれだけで大丈夫なのか、という気持ちを捨てきれなかったという面もあります。実際先方では保守業者が公共サービスの保守・修理を優先させて、まったく修理に来てくれなかったということや、工場の思いもかけない箇所に故障が出てしまい対応が全面的に遅れてしまったことなどがあったそうです。

ただ、今回こうした議論をしたことで、当社が遠隔地に拠点を複数持っていることのメリットをもっと活用すべきだということにも気が付きました。効率の観点からすると一極集中すべきですし、普段の収益にはまったく寄与しないところが経営者としては悩みどころではありますが。

-今後の運用計画を教えてください。

まずは年内はすぐに手がつけられる対策を進めます。そして、年が明けたら訓練と費用がかかる対策を実施します。今回は茨城工場を対象としているので、鹿児島工場と本社への横展開も考えています。

また、当社はISO9000とISO14001を取得していますので、運用面において、統合していくことも検討しています。今回策定したBCPは生きた内容になったと自負しているのですが、この二つの認証については、認証を取るために取り組んだという側面が強かったので、統合することで、より実践的な対応ができるようになればと考えています。

こうしたマネジメントシステムは放っておくと運用できないばかりか、決めた内容さえ忘れてしまう危険性があります。訓練などにより身に付けることと同時に、定期的に見直しをして、その時々のお客様の求める水準に合わせて対応も修正していく必要があると思います。

国分電機代表取締役社長 国分 直人氏

-取組を検討中の企業へメッセージをお願いします。

今回取り組んでみて、やはり事前の準備は重要だと実感しました。個人情報の取り扱いの問題などもありますが、やはり会社としては社員の家族構成など(要介護者の有無など)はやはり把握しておかないとまずそうだ、ということがわかったり、帰宅困難になった時の対応など、考えなくてはならないことがたくさんあります。

また、最近になって避難訓練の重要性も感じるようになりました。たとえ目的意識もなく、面倒くさいと思ってやっていたとしても、それでもきちんと経験しておく、ということは大事なことだと思います。何かあった時には必ずその経験が生きてくると感じます。BCPもそのような観点で取り組まれたら良いと思います。

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

代表取締役社長国分 直人 氏
取締役業務本部長赤司 善治 氏
会社情報
称号: 株式会社国分電機
本社所在地: 東京都品川区東五反田2丁目7番地18号
設立: 1948年7月
資本金: 8,000万円
従業員数: 215人
代表者: 代表取締役社長  国分 直人
事業内容: 配電盤、制御盤、分電盤等の電気設備製造・販売及び同改修工事
URL: http://www.kkd.co.jp

(2010年9月末日現在)

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