-事業内容を教えてください。
オフィスビルなど建築物の清掃管理事業を都内、神奈川県内を中心に行っております。設立以来、建築物の増加に伴い当社事業の需要も伸びてまいりましたが、近年は同業他社との価格競争が苛烈を極め、価格と質の両方が求められてきています。
当社ではそのニーズに対応するため、他社にはない管理方法を強みとしております。常に現場状況や清掃作業進捗を把握して品質管理を行い、顧客へリアルタイムで報告することにより、顧客側のビル管理業務の一端を担い、業務軽減を図る積極的な管理方法です。他社でここまで踏み込んでいるところは少ないでしょう。
株式会社ダイラ
代表取締役社長 大良 昭夫 氏
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
これまでは会社としての取組はなく、顧客側のインフルエンザ対策に準拠するという対応をしておりました。各現場でマスクをする、消毒を徹底するなどです。しかし、世界的にインフルエンザが流行したことも記憶に新しく、業務が停止状態となった企業のニュースに触れるたびに危機感を感じてはいました。
そんな中、当社に東京都BCP策定支援事業のパンフレットが届き、概略を知ったことが直接のきっかけとなります。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社の事業はスタッフが顧客のビル内で業務を行うのが特徴で、顧客と接触する業務であるため、インフルエンザ対策のBCPを策定しました。
海外でインフルエンザが発生した時点で、対策本部を立ち上げ、発生状況と流行予測の日報が届くようにする初動対応をとります。日本で流行の兆しが出てから対応すると、現場の緊急対応にあせりが生じると考えたので、まずは、緊急対応をしなければいけない事態にならないような取組に重点を置きました。緊急事態が起こらないようにすることが顧客に対しての我々の責任だと捉えているからです。
また、管理する本部と現場の作業員をエリアごとにグループ化し、リーダーとメンバーという現場での縦のラインを明確にしました。パンデミック発生時には、速やかに人員の再配置を行い、緊急時代替サービスで日常清掃業務を継続することに決めました。
【BCPの概要】
対象事業 | 清掃事業/日常清掃業務 |
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対象リスク | 新型インフルエンザ |
被害シナリオ | 海外にて新型インフルが発生、1週間後に国内感染を確認。都内、取引先、自社での罹患者が発生に、6~7週間後には国内で蔓延。 自社の最大欠勤率は40%。 |
事業継続対策 | ・海外発生レベルで早期にBCPを発動し、前倒しで対策を実行する ・パンデミックレベルに応じて顧客の業務仕様を変更することによりパートを継続派遣する ・人員配置の権限を現場から対策本部へ移行し、一括管理することで再配置 |
-策定に当たって、何か気付きや苦労したポイントはありましたか?
これまでスタッフへの連絡経路を現場任せとしていたため、会社として管理方法を確立できていなかったことに気がつきました。それを体系的に整備できたことは、日常の情報伝達の速度もあがり顧客へのサービスの向上にもつながるはずです。また、これにより改めてスタッフの中で誰が本当の戦力となりうるかを考える絶好の機会となりました。
一方でさらに重要なのは、これらを訓練することだと考えています。本当に各現場への伝達事項がスピーディーに伝わるかは懸念材料として残っており、訓練を重ねることでブラッシュアップをしていく予定です。
今後は、3か月以内に今ある通常作業手順をマニュアル化する予定です。それをまとめた上で、主要リーダーを集めて緊急時対応についての理解を図りたいと考えています。訓練する内容は、緊急連絡網の使用訓練と別現場で緊急対応するための現場間でのクロストレーニングです。この関係づくりを今後一年かけて実行する予定です。
-取組を検討中の企業にメッセージをお願いします。
当社は現在、規模も小さく家業から企業へ移り変わる過渡期を迎えています。
社長が常に新規顧客の開拓をして、仕事を社員に渡すというやり方を続けてきましたが、やはりそれでは組織として脆弱です。社員一人ひとりが経営者同様「顧客の財産を管理している」という意識を養わないと管理にも様々な綻びが生じます。これまでは、コスト面、資機材などは他社に負けていなくとも、組織が追い付いていないという状況でした。
だからこそ、このプロジェクトは社長ではなくマネージャーを前面に立たせて、自社の将来像を具体的に描かせるための幹部育成としての意味を持たせました。今回の東京都事業は、当社のような企業の活性化にもつながる有効な手段となります。