-事業内容を教えてください。
当社の事業内容は、電熱技術を中心に真空・バイオ・光学・化学の各分野と様々な新規領域での技術も含めて、電熱を必要とするすべての産業に、電熱機器の開発・設計・製造・販売を行っております。
当社は、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドで対応する為、これまで、約300万点以上に及ぶオリジナル製品を開発してまいりました。この蓄積は当社独自の強みであり、お客様の個別のニーズにお応えできる体制を充実させてまいりました。
この実績を通して、各種公的研究機関や、日本の産業界を代表する各企業の皆様方に、当社製品を御愛用いただいております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
BCPの必要性・重要性は数年前から認識していましたが、新潟中越沖地震を契機に、お客様よりサプライヤーに対する要求の一つとしてBCP策定が増えてきました。自社でも検討を開始しましたが、実際に検討を始めると、お取引のあるお客様の多さ、また、BCP策定のポイントとなる、当社が取り扱う多種多様の製品の中での優先順位の決め方等、様々な問題が出てきました。この機会に専門家の方の力を借りて、防災対策を強固にした上にBCPを構築したいと思いました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
BCPの対象事業とした「面状ヒーター」及び「カートリッジヒーター」の製造は、受発注工程を墨田区にあるビジネスセンターで実施し、設計工程と製造工程は、千葉県の佐倉市にあるR&Dセンターで行っています(製造工程については、同じ敷地内にあるグループ企業に委託しています)。
今回想定した東京湾北部地震では、墨田区にあるビジネスセンターはかなり被害を受け、千葉県の佐倉市にあるR&Dセンターは一部被害を受けるというシナリオにしました。このシナリオに対し、受発注工程は手作業で対応し、設計工程は被災を免れたPCにCADを再インストールすることで対応し、製造工程は手作業や受注調整で対応することにしました。ただ受発注工程における手作業は、稼働効率が著しく低下するので、受発注工程で使用するサーバ群の仮想化とバックアップサーバのデータセンターへの設置を早急に検討することにしました。
【BCPの概要】
対象事業 | 面状ヒーター及びカートリッジヒーター製造事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・工場建屋一部の破損 ・製造装置、規格品、材料一部の破損 ・サーバ、PCの一部破損、基幹システム、CADの破損 ・基幹データ、技術データの破損 |
対策 | ・工場内の脆弱な施設の建て替え ・製造装置の倒壊防止用の櫓での固定 ・サーバ群の仮想化とバックアップサーバのデータセンターへの設置 ・従業員の被災に対する他部署からの支援での対応 ・通信手段の関西営業部への切り替えでの対応 |
-何か新たな気付きはありましたか?
策定に当たり、BCPのポイントである、中枢事業の選定がとても難しいものでありました。当社のほとんどの製品はオーダーメイドで対応している為、当社製品はお客様の主要な部分で使われるケースが多々あります。その中で、どういった観点で中枢事業を絞り込むか、様々なケースを想定しながら、メンバーそれぞれの立場で真剣に議論できたことが、今回の策定に大きく活かされました。
また、中枢事業の製造工程の洗い出しを行う中で、製造業でありながら大部分は社内情報システムが絡んでいることに気付かされました。システムがダウンした場合、復旧まではRTO・RLOが達成できる範囲での人的対応としましたが、システムの早期復旧が事業の復旧の一つのポイントであることがわかりました。これを機に、ハード面・ソフト面共に、被災リスクに対して不十分な面については早急に対策を取る動きができたので、良いきっかけになったと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
策定して直ぐに、東日本大震災が起きましたが、BCP策定のおかげで、メンバー全員、初動対応が素早かったので、効果があったのではないかと思いました。ただ、コンサルタントの方も仰っておりましたが、大事なことは計画で終わるのではなく、PDCAを回して、いざという時に動けることであると思います。今回、十分な議論をした中で形になりましたので、無駄にすることなく活かしていきたいと思います。