-事業内容を教えてください。
弊社は、創業83年の歴史があり、主に通信機器関連の部品を製造する精密板金加工を行っております。近年、携帯電話や各家庭でのインターネット動画サイトなどの利用によって、通信データは増加するいっぽうです。それに伴い、その情報量に見合った通信設備も年々増設され続けています。
弊社は海底ケーブル用中継器や各基地局整備などのインフラ事業の中で必要な通信機器の筐体をお客様のニーズに合わせて製造しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
以前から企業としてのBCP対応の考慮はしておりましたが、東日本大震災により弊社の大切なお客様も被災に遭われ、また弊社でも帰宅困難になった社員が何名かいました。その際、社員を帰宅させるべきか否かの判断に困ったため、どういう状況になったらどういう対応をするかという判断基準や具体的な対応策を明確にしたいと考えました。
また、日本の産業界で大半を占める製造業の一員として、このような不測の事態に遭っても、1日でも早く復旧し、事業継続を果たして製品を供給することが、自分達の使命であると感じたのがBCP策定に取り組んだ理由です。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
弊社では、お客様からの図面データをもとに作業指示書を作成し、これをもとに一部の製品を除き、自社で製造し、品質検査の後、納品するという工程で、通信機器部品を製造しています。工程によっては外注業者において2次加工をする場合もあります。今回のBCP策定の対象事業はこの通信機器部品の製造としました。本事業の中で、最初に復旧させる必要がある業務は設計で、必要となるのはCADシステムです。
今回の被災シナリオでは、本社工場や被災圏内の協力会社や外注業者が被災する想定ですので、まず上流工程で使用するCADシステムとして、被災を免れたPCにCADソフトをインストールすることによってCADシステムの代替システムとします。
そして、自社で納期内に対応できそうにないものについては、被災圏外の協力会社に外転し、これと並行して、被災した製造装置を調整もしくは修理していくことで、自社における製造工程を立ち上げて、目標の復旧指標を達成するようにしました。
対象事業 | 通信機器部品の製造 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・従業員の約半数が負傷 ・旧工場は半壊、新工場は一部破損 ・各製造装置は一部破損 ・サーバは全損、PCの大半が破損 ・被災圏内の協力会社や外注業者が被災 |
対策 | ・CADデータのバックアップの保管場所の検討 ・協力会社(4社)の緊急対応対策の明確化 ・基幹サーバの設置場所の検討 ・図面等をお客様からメールにて再取得 ・使用可能なPCをCAD用PCとして使用 ・被災圏外の業者に外注及び外転 |
-何か新たな気付きはありましたか?
電気・水道・ガス・電話など、日常当たり前にあるものがなくなってしまうことで、製造業が稼働しなくなる程ライフラインは重要ですが、今回のBCP策定によって、協力会社や外注業者などステークホルダーとの連携を確立することにより、即座に復旧し稼働する事前準備を導きだすことができました。
また、季節・時間帯により被害状況が異なる現実を考慮に入れなければならないことや、水害やインフルエンザなどについてもいろいろなパターンが存在することを改めて痛感しました。今後の課題としてさらに検討を進めていきたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
弊社のニーズにあったBCPを策定することができました。しかし、実際にはBCPを発動する機会がなければと祈る次第です。
地震大国である日本にいる限り、未曾有の事態に備え、BCPを策定することは必要不可欠であり、その重要性から今後、企業体にも求められる事になっていくであろうと思います。社員及びその家族の安全確保、企業存続のためにさらに予防・低減対策を強化し、日々改善することが真のBCPになると感じました。