-事業内容を教えてください。
弊社は自動車内外装部品、マークやエンブレムの製造を行っています。マークやエンブレムはプロダクトが持っているイメージに付加価値を加え、ブランドイメージを高める《顔》と言えます。そういった意味で、自動車の内外装部品を作ることを通して、お客様である企業の《顔》を作るお手伝いをしていると自負しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
弊社は労働安全衛生法によって定められている安全衛生管理組織による工場巡視(不安全箇所の指摘・改善活動)や、顧客指導による取引先企業災害防止協議会活動(輪番制にて各工場巡視及び指摘・改善活動)等、安全を重視した対応を行っています。
また、ISOを取得している関係で、個別のトラブルに関する対応もこれまでにノウハウとして蓄積しています。しかし東日本大震災を受け広範囲に影響が及ぶ場合、会社としてどのように顧客、従業員、地域社会に対応しなければならないのかということについて検討していないことに気付き、特に顧客からの要望も強くあり、今回本格的にBCP策定に取り組みました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は地震災害にあった場合のBCPを策定しました。
発災の際には完成品・仕掛品の一部が破損、機械設備が故障してしまうという想定で納期の遅れをできる限り短縮する必要が発生すること、また従業員とその家族の被災により出勤率が低下し、事業を継続するのに大きな影響が出るという想定で対策を検討しました。
完成品・仕掛品の破損に対しては、予防・低減策を中心としました。機械設備についてはその被災箇所の損傷具合に応じて復旧に必要とされるおおよその時間を整理し、復旧の過程では、各業務について目標復旧時間に至るまでの担当者ごとの役割分担を明確にしました。これによって自社の被災状況を迅速に把握するとともに、復旧の目安を早期に見通すことができるようになります。また万が一サプライヤーや協力工場等が被災した場合に備えて各代替先まで検討を致しました。
そして従業員及び家族の被災や社会インフラの停止等により想定される出勤率の低下は、他事業所からの応援で対応します。今回各業務で必要となる人員とスキル、施設内で被災が想定される場所と従業員を特定したことに加えて、全従業員の自宅と会社の距離を洗い出しました。これにより多能工化の優先順位が明確になりましたので、今後対応していきたいと思います。
対象事業 | 樹脂めっき |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・施設:損傷を受けるが立ち入りは可能 ・設備装置:一部破損 ・システム:稼動不可、図面データ消失 ・製品・部品・材料:完成品、仕掛品、部品在庫破損 |
対策 | ・被災状況確認シートによる迅速な被災状況確認 ・社員に対する教育・訓練の定期的実施(※多能工化) ・機械設備業者とサプライヤーへの緊急連絡網の構築 ・旭川事業所からの人員応援 ・バックアップデータの活用 ・旭川事業所による代替生産 |
-苦労されたポイントはありましたか?
弊社のコアビジネスである樹脂めっきは、工程も多く機械設備の集合体であるため、事業を継続するために最も重要な業務の洗い出しと、その業務の経営資源分析(人・施設・装置・情報資産・・・)に大変時間がかかりました。その結果を踏まえて、当たり前ですが一つ一つの機械設備に対しての予備の購入や保管を検討しながら予防・低減策と事業継続策をまとめるのは大変な作業でした。
しかしそういった細かい検討の過程で、被災した時には具体的に「誰が、どうする」と問い直した時…個人(担当者)に依存していることがとても多かったことに気が付きました。それを受けて今後は事業継続の視点も新たに加えながら、代替者の育成・多能工化に取り組みたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
“演習をやっていないBCPを持つくらいなら、持たない方がマシ” との格言を肝に銘じ、まずは全社員への教育そして演習から進めていきたいと考えております。
予算にもよりますが備蓄も必要になりますし、予防・低減策の準備も必要になります。まずはできるところから確実に進めていくことが肝要と考えます。