-事業内容を教えてください。
1927年の設立以来、化粧品や医薬部外品の製造販売業と、不動産賃貸業を営んでいます。主力ブランドはスキンケア商品の『ウテナモイスチャー』『シンプルバランス』など、またヘアケア商品の『プロカリテ』などがあります。これらのブランド以外にも数多くの商品を展開しており、幅広い年代のお客様から長くご支持をいただいています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
これまで防災対策として、毎年行う消防訓練のほか、社内備品の転倒防止対策、安否確認システムの導入、会社と自宅間の距離から想定される帰宅困難者の確認、避難用品(ヘルメット・手袋・ホイッスル等)の配布、滞在用品(水・食料・毛布・簡易トイレ等)の備蓄などを行ってきました。しかし実際に東日本大震災を経験し、今のままでは不十分だと感じ、BCPの策定に取り組みました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は地震災害にあった場合のBCPを策定しました。
対象事業は売上の大半を占める中核事業の国内向け化粧品事業とし、対象業務はお客様に商品を供給するために必要不可欠な、受注出荷業務と製品発注(調達及び生産計画)業務を選定しました。今回のプロジェクトでは被災シナリオをかなり厳しく想定し、その結果、事業の継続に最低限必要な経営資源(帳票類、機器、要員、代替要員)を、具体的に特定することができました。
受注出荷業務については通信手段が確保できる場所であれば、業務を継続できることがわかりました。
また、製品発注業務については、原材料と包材の供給が一時ストップした東日本大震災時の経験を生かし文書化しました。その内容は、課題ごとにクロスファンクションミーティング(サプライヤー含む)を開催し、その中で取引先被災状況と原材料や包材の供給状況を把握し、各商品別の生産・出荷スケジュールを調整し決定することなどです。
対象事業 | 化粧品事業(国内セルフ) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・従業員または家族の被災による出勤率の低下 ・サーバの破損による受発注システムの停止 ・サプライヤー(購買・生産・物流拠点)の一部被災 |
対策 | ・サーバ周辺の倒壊防止 ・サプライヤー被災時の代替先調査 ・業務スキルとスキルシートの活用による対応可能人員の明確化 ・バックアップデータの活用による受発注システムの復旧とファクスの活用 ・各サプライヤーの代替先の活用 ・生産拠点からの配送 |
-何か新たな気付きはありましたか?
BCP策定の過程で改めて事業や業務を分析し、必要となる経営資源への具体的な対策を検討することに、たいへん苦労しました。個々の経営資源には依存関係があり、そのことに注意しながら対策を検討しなければならなかったためです。その中で気付いたことは、BCPを策定する際には「事業継続計画ライフサイクル」を想定し、ステップごとに状況や目的、ゴールを明確にしながら、常に結論を出し合意していくことが重要だということでした。
以前に行っていた自社での危機管理は、各部門で個々にマニュアルや実行計画を策定していましたが、今回は事業に関わりのある全部門の責任者が集まり、具体的に対策を検討し決定できたことが一番の違いだと感じています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
自社のノウハウだけではこれだけ完成度が高いBCPは策定することはできなかったと感じています。ステークホルダーを念頭におき、幅広く自社内外の連携を模索しながら合意し、具体的に文書化することの困難さを改めて思い知らされました
今回参加したメンバーは、被災時に中心的な役割を担ってもらうことになりますが、彼らを中心に全社員が理解し実行できるよう、取り組んでいきたいと思います。