-事業内容を教えてください。
弊社は生コンクリートの製造販売、及び左官材料・コンクリート製品・建築金物・建設土木資材・ガーデニング用品・ブロック・レンガ等の販売を行っています。製造工程においては太陽光エネルギーの活用やコンクリートを砕石として再利用するなど、エコロジーにも力を入れております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
以前から自社なりの災害時対策は実施してきました。停電時にはソーラー発電にて事務所を維持できるようにしております。また生コン製造に必要な水の確保と断水時の近隣への提供を想定し、雨水ドラム缶100本分の地下貯蔵タンクを用意しており、井戸水も使用可能です。さらに車の燃料は常時、半分以下にしない方針にしており、東日本大震災の折も仕事が滞ることはありませんでした。
弊社は災害時には地域に貢献したいと考えており、現行の事業やこれらの対策が本当に有効かどうかを検証すべく、この機会を利用してBCP策定に取り組もうと考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回はわが社の主要事業である生コンクリート製造を対象として、地震に対するBCPを策定しました。
大地震が発生した際、社員の身の安全を確保するため、日頃の安全対策を強化することを予防・低減策の中心に据え、試験機器メンテナンス業者への早期連絡、原材料の同業者間融通を事業継続策の柱としました。社員や家族の安全確保は当然のこととして、災害時に自社だけが生き延びるのではなく、近隣住民や同業者が協力し合って、復旧を果たすことを目標としました。
具体的に言いますと、現在でもヘルメットや安全靴の着用などを義務付けていますが、これらをさらに徹底し、現場で被災した場合は車内への避難、2次被害の防止として輪留めを実施し、身の安全の確保に努めるようにします。
一方、事業継続策については、災害時に入手困難となることが予想される骨材やセメントの供給を、近隣同業者同士で融通し合うよう協議することを決めました。もちろん状況によっては当方が被災した同業者に提供するということもあるため、その時に在庫しているものを対象に、エンドユーザーのニーズを考慮しつつ、互いの被災状況によって判断をしていくことになると思います。
対象事業 | 生コンクリート製造 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・事務所棚の落下及び室内乱雑、倉庫一部破損 ・生コン製造に関わる設備の破損 ・インフラの被災状況は都の想定に準拠 |
対策 | ・工事現場での安全対策の徹底 ・落下・転倒防止対策の実施 ・外部サーバの検討 ・重要顧客、重要仕入先、金融機関と2 日以内の対策協議 ・トンパック(コンクリート凝固防止用土のう)を使用した緊急廃棄 ・パートナープラントとの連携 |
-何か新たな気付きはありましたか?
当社は規模が小さいため、毎回の参加者が少数ということもあり、組織立ったBCP策定とはなりませんでした。また短期間で仕上げなければならず、対策についてもっと検討を重ねたかったという思いはあります。
ただ状況を細かく想定して検討する過程で、生コン車の発災後の対応や従業員の生命安全対策など新しい発見がありました。
当初コンクリートの緊急廃棄にトンパックの利用を検討しましたが、その後、参加した東京セメント建材組合主催の研修会でコーラを利用した凝固防止の実験などを実施(1週間固まらなかった)するなど、本策定をきっかけに新たな可能性も見だせました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCP策定以前の足りなかった部分や改善すべき点を文書にできたことが成果だと思います。対策についてもより具体的な検討が進み、安否確認手段に関しては自動車無線、通信手段として以前より検討していたPC—ファクスなど、災害を想定することによって導入が現実味を帯びてきました。また自社内での演習については、形がい化することのないよう、毎月各社員が持ち回りで演習担当者となり、計画・実施することで浸透を図ることに決めました。
今後はBCPを発動した時点で、基本方針である近隣同業者との業務提携ができるかが最大の課題であり、さらには同業者との連絡が速やかに行われるよう訓練することが演習の最大のテーマになると思います。今回東京セメント建材協同組合等で同業他社と同時にBCP策定を行ったことで、集合研修や合同演習で他社の意見を聞くことができ、新たな気付きがありました。