-事業内容を教えてください。
HARADAグループは世界トップクラスのアンテナメーカーであり、なかでも自動車用各種車載アンテナは国内・米国・欧州の自動車会社で広く採用されています。
生産拠点は、国内1工場、海外3工場で、生産した製品を日・米・欧・アジアの販売拠点を中心に事業展開をしております。また、日本国内拠点では、営業、受注管理、製品開発、モノづくり、品質保証機能を有し、OEM での商品開発を行い自動車メーカーの工場に製品供給を行っております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
リスク管理の観点から、甚大な被害となる恐れのあるリスクについて2年前から検討してきました。消防体制、地震対策基本マニュアル、緊急時行動フロー、緊急連絡網等の防災対策について整備してきましたが、東日本大震災では各自が自己判断で行動したため、初動対応など様々な混乱が生じてしまいました。
中小企業庁のBCPガイドラインをもとに4月からBCP策定を開始しましたが、BCP素人集団が手探りで進めてきたため、各種のマニュアルや行動フローはあるものの、それぞれの文書の整合性、連係を取ることが難しく、行き詰まりを感じ、コンサルタントからの的確な助言を受けたいと考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
東京における大規模地震を想定したBCPを策定しました。
本社では、お客様からの受注情報をもとに、海外3工場、国内1工場へ生産指示、生産された製品を、国内外のデポへ出荷指示をしています。多数のお客様へ多種の製品を指定の時間、場所に毎日数回に分けて出荷(かんばん納入)をしており、もし供給が止まればお客様に大きな影響を及ぼすことになり、被災時でも出荷指示を止めることはできません。そこで今回はこの受注出荷管理業務について事業継続策を検討しました。
注文はお客様ごとのEDIで受けており、ITシステム無しでは受注業務はできません。そのため顧客によっては営業担当が直接赴き、ファクスでデポへの出荷管理業務を代行します。これを実現するためには、平常時とは違う人員配置が必要となるため、社員・家族の安否確認、避難方法、帰宅困難者対応策をはじめ、居住地から出社可能な社員を選定し、緊急時の役割を確認しました。
対象事業 | 車載用アンテナ及及び周辺部品(OEM) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・1階テナントより火災発生 ・停電によりEDI、PC及び基幹業務サーバの停止 ・社内LAN・専用回線の一部不通 |
対策 | ・社員、お客様、デポ、取引先等への緊急連絡先と手段を整備 ・ノートPCによる受注取込データのバックアップ取得 ・社用車やPC蓄電池による非常用電源の確保 ・顧客と緊密な連絡をとり、緊急時の意向を確認する ・営業部顧客によっては被災地外の営業拠点にて出荷指示を代行 ・デポでは出荷業務を優先し、在庫管理は本社復旧後にまとめて行う |
-何か新たな気付きはありましたか?
当初自力でBCPを作成しようと、2011年4月より体制を発足しましたが、東京都BCP策定支援事業の存在を知り、外部のサポートを受けられ、短期間で策定ができるとのことでしたので参加しました。思った以上に詳細な議論まで行うことができ、良いたたき台となる文書が完成したと思います。今回の策定を通じて、BCP策定の過程でビジネスを見つめる視点や、どの程度まで掘り下げて検討していくべきかという加減がわかってきました。
お客様に対してBCPに対する考え方や自社の取組の概要を説明できるようになったと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回のBCP策定メンバーはBCPの初動において中心となって頑張ってもらうメンバーであり、今後も月1回など定期的に集まり、BCPの内容のさらなるブラッシュアップ活動を継続していきたいと思っています。
今後は、今回対象事業のBCPの充実化のほか、今回対象外の事業、さらには国内及び海外の各拠点へとカバー範囲を広げていき、グループ全体としての体制を構築していきたいと考えます。