-事業内容を教えてください。
わが社は2つの事業を展開しております。一つは出版企画事業で単行本・雑誌の企画・編集、もう一つはヘリテージ・サービス事業で、社史・記念誌の企画・編集・出版サービスを行っております。
設立当初は書籍の編集・出版、自費出版物の企画・制作、大手出版社への企画持込み業務から始め、すぐに資料に基づいて社史を作るための企業情報の整理・編集業務を開始しました。セミナー実施、大手銀行系企業と社史を中心とした出版サービスの業務提携等を行い、現在では累計約700点の社史受注をいただけるようになりました。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
大阪で阪神淡路大震災、そして東京で東日本大震災を経験し、災害はいつ起こってもおかしくないのだという危機感がより一層強まりました。社内ではISO27001の事業継続の一環で、危機管理手順などを準備してきましたが、取組を強化していかなければならないという思いが強まりました。しかしながら、いざ進めようとすると、どこから手を付けていけば良いかわからず、社内で困っていたところ、東京都のBCP策定支援事業でコンサルタントの指導があるという情報を知り、有事の際に、社員の生命を守り、事業・サービスの継続できる仕組みを構築したいと考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回対象としたヘリテージ・サービス事業の中では、特に社史の制作業務とそれに付随するフリーランスのライターへの支払い業務の早期復旧が重要です。社史はお客様の創立○○周年の節目として作成され、記念式典等の配布用などに活用されます。そのため、納期遵守が基本であり、遅らせるわけにはいきません
また、高品質な社史を作成するためには、お客様からの資料、OBのインタビューなどが必要となりますが、それらをまとめるその業界に精通したライターの存在は欠かせません。しかしながら、ほとんどのライターはフリーランスであり、大災害が発生し、わが社からの原稿料の支払いが遅れた場合には、ライターの生活に影響します。場合によっては原稿料の支払いが早い、他の仕事を優先してしまう可能性があります。作業途中でのライター変更などの状況を回避するためにも大災害が発生しても支払い業務を継続する必要があると考えました。
対象事業 | ヘリテージ・サービス事業(社史・記念誌の制作) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・経営者重傷(意識不明)、負傷20%、帰宅困難者60% ・PC(サーバ、クライアント)、PCモニタ、複合機故障 ・外部サービス(ライター、デザイナー、カメラマン、校正者、印刷会社)との連絡不能 |
対策 | ・社員の防災訓練 ・大阪に支払い業務システム導入、支払い業務指導 ・デイリーで大阪へのデータバックアップ ・緊急連絡網、安否確認サイトの定期的な整備と訓練 ・バックアップデータ(入稿前データ、基幹業務データ)の取得 ・大阪ヘリテージ・サービス、支払い業務の切り替え、実行 |
-何か新たな気付きはありましたか?
災害が発生した際には、社員・お客様・関係会社との連絡手段、人員、データのどれを欠いても、事業継続が危ぶまれるのだということに改めて気付かされました。
被災シナリオでは意図的に経営者を重傷にし、有事の際に経営者が指示を出せない状況で、社員がどう動けばいいのかを検討しました。これまでこういった状況を想像したことがなかったので、代行者の東京営業所長が避難指示、避難後の指示、事業継続策、事業復旧策をどのようなタイミングで誰に指示するかを決定するのに大変苦労しました。
しかしこういった具体的な役割や担当者を決めることにより、今まで見えてこなかった各社員の対応力・スキルの有無が浮き彫りになり、有意義なものになりました。演習を行うことによって判明した課題に対して、できる範囲での対応策がすぐに導き出せたのと、今後の課題が検討できたことは非常に有益でした。
-BCPを策定した感想をお願いします。
ISO27001の中で事業継続計画のマニュアルは作成していましたが、実際には具体的な行動指針にはなっていませんでした。今回、BCPを策定して行く過程で、被災シナリオを設定し、業務影響度分析・経営資源分析・事業継続策を通して、仕組みを構築できたことは非常に良い機会になりました。そして、事業継続のために必要不可欠な人材育成とBCPの維持継続の活動が極めて重要であると実感しました。