-事業内容を教えてください。
弊社は金融系を中心にネットワークも含めたシステムインフラの構築、システム設計・開発、運用・保守に至るまでICT(情報通信技術)ベンダーとしてワンストップのソリューションをお客様に提供しています。また、ITコンサルテーションや、弊社開発の販売管理システムをインターネット経由でご利用いただけるクラウドサービス事業、日本発の開発言語Rubyを使った製品開発、E-ラーニングによる教育事業等の展開にも力を入れております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
弊社はインターネット経由で販売管理システムをご利用いただくクラウドサービス事業を展開しております。サービスを安定的に提供するためのバックアップ取得やサーバの冗長化は実施しておりましたが、大地震が発生した場合、自社サーバの倒壊によるデータ損失やシステム障害などサービスの継続が危ぶまれる事態が想定されます。被災時であってもシステムを継続稼働するための対策が早急に必要と判断したことがBCPに取り組んだ理由です。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
弊社は地震に対するBCPを策定しました。弊社の事業の中で、クラウドサービス事業は売り上げとしてはまだまだなのですが、将来性を重視し本事業を対象としました。被災想定としては、ASP、開発、ファイルサーバが使用不能、従業員の一部が被災した状況として、24時間以内に通常の80%のサービスレベルに復旧することを目指して対策を検討しました。
事業継続策としては、発災したその日のうちに、ワイヤレスで高速モバイルインターネットを実現できるWiMAXを使用したノートPCからの操作によって、弊社のクラウドサービス(SaaS 型)を提供しているASPのサーバ環境を、アマゾンが提供しているクラウドサービス(IaaS 型)であるEC2へ切り替え、このアクセス先を顧客へメールで通知することで、目標の復旧指標を達成するようにしています。
そして電気が復旧したのちに、使用不能となっているASP、開発、ファイルサーバの被災状況を確認し、業者へ修理を依頼もしくは自社でパーツを調達し修理します。その後ASP サーバの修理が完了した後に、EC2 からもとの状態に切り替えるという手順で本格復旧を行います。
対象事業 | クラウドサービス事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ASP、開発、ファイルサーバが使用不能 ・従業員の一部が被災 |
対策 | ・安否確認システムの開発 ・キャビネットのレイアウトの見直し ・キャスター止めの実施 ・アプリケーションやデータのバックアップ保管場所の変更 ・WiMAX を使用したノートPCからの操作 ・ASPサーバ環境のEC2への切り替え |
-何か新たな気付きはありましたか?
大地震により5日間の停電を想定致しましたが、システム会社は停電ではまったくビジネスになりません。いかに電源を確保しサービスを継続させるかが大きな問題です。建物の管理上発電機等の使用は制限されますし、蓄電池もかなりの投資になります。既存の設備でいかにこなせるかがポイントでした。
またクラウドサービス事業のBCP策定に際し、会社が被災した場合の対策が不十分であることに改めて気付きました。そこで停電状況であっても、公衆無線LAN(WiMAXなど)をテザリング機器として使うことで、安価にバックアップセンター(アマゾン EC2)を活用し、お客様にサービスを提供し続ける方法を確立することができました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCP策定の上で、このたびの支援事業は大変参考になりました。今後は、策定したBCPの運用と、その他事業のBCP策定を行っていく予定です。課題といたしましては、本社の総務機能のBCP 策定について、いまだ不明確な点があります。良いアドバイスをいただければ幸いです。また、予防・低減策のための物品購入や、食糧や飲料水の備蓄などの費用負担もかかりますが、前向きに取り組んでまいります。このたびは大変良い機会を与えていただき誠にありがとうございました。