-事業内容を教えてください。
弊社は都内に3拠点、仙台に1拠点を置き、貨物の保管、流通加工、輸出入業務、トランクルームなど幅広い物流サービスを展開しています。物流を通じての社会貢献を理念としており、社会インフラとしてお客様のあらゆるニーズに応えるべく多くのメニューを用意しています。特殊なものでは品川営業所にてアクアクララ株式会社様と提携しミネラルウォーターの製造を行っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
3~4年ほど前からBCPというキーワードを耳にするようになり、独自でいろいろ調べ、理解を深めてきました。災害時への対応だけではなく、今後は入札条件になってくる可能性もあり、あらゆる意味でBCPを策定することが、会社にとってのアドバンテージになるという認識が強くなってまいりました。ところが、製造業の事例は良く目にするのですが倉庫業について参考にできるものがなく、何から着手したら良いのか手掛かりが見つかりませんでした。たまたま、同業の矢倉倉庫様が東京都BCP策定支援事業に参加されたことを知り、当プロジェクトが有効であろうと思い、これをきっかけに策定を開始することとなりました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当初は主体事業である倉庫業を対象に策定することを想定していましたが、事業影響度分析を行った結果、災害時の需要を考慮して、水の製造についても策定範囲に含めることとしました。倉庫業については予防・低減策として、貨物のラッピングやベルトによる固定、片寄らない積載など、庫内の安全を従来以上に徹底することにより被災時のダメージを最小限に食い止めることを決めました。災害時においては誰がどの拠点に出社できるのかを洗い出し、緊急要員体制で早期復旧できるよう計画しました。
一方、水製造業は水道が回復するまではプラントの復旧状況すら確認できないという事態になりますから、それまでの間、シュリンク・キャップ・ミネラルといった原材料の確保、チェックリストによるプラントの被災状況の把握とメンテナンス対応を確実に行い、水道の回復と同時に製造が開始できる体制にしておくこととしました。
また、情報の集中、意思決定、拠点への指示を災害対策本部が適切にコントロールするための手順を明確にしました。
対象事業 | 倉庫業、水製造業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・貨物散乱、一部破損 ・シャッター、エレベーターの使用不可 ・水製造プラント設備の破損 ・水道水の供給停止 |
対策 | ・倉庫内の安全対策の徹底 ・緊急時代替要員の確保及び事前周知 ・水製造プラント設備用被災状況チェックリストの用意 ・緊急時対応マニュアルに従った顧客対応 ・緊急時代替要員による復旧作業 ・被害状況の早期把握とメンテナンス対応の実施 |
-苦労したポイント、何か新たな気付きはありましたか?
とにかく、被災状況を想定するのがつらかったです。仙台での被災を体験しているので、それが首都圏で発生したらどうなるのか、ある程度は予想できます。電気も水道も止まる、道路の封鎖で配送もままならない、人も足りないという状況の中、やれることは限られており、それらを一つ一つ再現していく作業は決して楽しいものではありませんでした。しかし、現実的に考えて、社員の誰がどこに出社できるのか、顧客やメンテナンス業者への対応を、非常時でも混乱することなく行うためにはあらかじめ手順化しておく必要があるなど、普段思い至らない点について具体的に議論できたのは、新たな収穫だったと思います。
これまで東日本大震災の経験を踏まえ、備蓄や防災マニュアルの整備を進めてきました。今回のBCP策定において活用できるものもあり、決して無駄ではありませんでしたが、意外にモレが多かったなという気付きがありました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
まずは社員に見せるかたちができたという段階ですので、これから全社で共有し意識を高めていきたいと思います。少なくともBCPを作っておいて損はありません。災害に脅えて不安な気持ちで過ごすより、少しでも対策を具体化することで平時から心のよりどころとなりますし、他社へのアピールにもなります。迷っているならすぐにでもBCP策定に着手すべきでしょう。