-事業内容を教えてください。
当社の事業は一言でいうと一般輸送事業全般となるのですが、主要業務としては、一つ目は月ぎめで車両・ドライバーの専属契約、定期・定時の配送を請負う常用契約輸送業務、二つ目は引越及び不用品(不要品)回収業務、そして梱包・発送・倉庫保管業務があります。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災発生時、私は若手経営者対象の講演の最中であり、即各社各地域の被災状況などが話題となりました。東日本に運輸会社は約2,500社ありますがある県の代表は3日間連絡がとれず、どこもトラックを出せない状況に陥ったことにより、緊急対応の備えの不備を痛感した次第です。
当社は、トラック4台を工面、当局の許可を得て超法規的対応で改造し、570のご遺体を東京に移送、火葬をしたうえでお返ししましたが、緊急物資輸送も含め業界としての社会的使命を果たせるような備えの必要性を痛感しています。当社の立地条件は都内でも屈指の地盤の脆弱な地域で、すぐ横を川が流れており地震による津波・洪水には非常に弱いにもかかわらず、災害に対する危機管理と意識が低かったと反省しました。早急に改善したいと考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社はBCPを策定するに当たり、「従業員とその家族の生命と安全を守る」事を第一に、次に「お客様への輸送機能供給責任を果たす」と共に、災害時における緊急物資の迅速な物流責任を担っていきたいと考えております。
そのためには、オフィス内で就業中の従業員の安全確保のための地震、津波等に対する予防策を講じるとともに、運行中のドライバー・車輌の安全確保を行うことが重要であると考えました。自社拠点への安全な帰庫や緊急退避のための事前の備え、本社・事業所からの支援をどのように行うか、またドライバーが独自で判断せざるを得ない状況下における行動指針や判断基準を事前に決め、携帯させるなどの対策を実施することにしました。
そして安全を確保した後、お客様や行政のニーズに迅速に応えるためには、ドライバー・車両の現在地把握、配車可能性を判断し、配車計画の練り直しなどの対応が必要となりますが、発災直後は平常時の運行能力を確保する事が難しい場合も考慮して、主要なお客様と非常事態発生時の積荷保全や運行開始時期などについて事前にご要望を確認し調整しておくことが必要だと痛感しました。
対象事業 | 一般貨物輸送(常用契約輸送業務) |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ドライバー30名帰庫不能(初期状況確認取れず) ・堤防決壊による浸水のため本社及び本社倉庫は立入不能 ・社内基幹システムは使用不能 |
対策 | ・乗務員常備セットの準備(携帯充電器、緊急避難拠点リスト、非常時心得等) ・荷主さまとの積荷保全に関する事前協議 ・燃料、庸車等優先供給契約締結 ・社員、自車情報の確認(安否、位置、燃料、交通/道路状況)と自発的な判断 ・燃料確保(自車両タンク、優先供給契約先)及び庸車要請 ・紙媒体による運行計画策定 ・代替道路通行可能であれば状況により運行開始 |
-苦労されたポイントはありましたか?
本社事業所の立地上、従来からリスクは感じていましたので、今回のBCP策定では液状化・津波の荒川遡上河川決壊、本社事業所の立入不可との被災想定も加味して対策を検討しました。本社機能を他事業所にて代替する復旧策は、具体的に検討するとなかなか難しく、課題は残っていますが、心構えはできたと考えています。
一方で、配送中の車両が災害にあった時の対応策については万全の対策には至っていません。常用契約輸送については配送ルートが特定できるので緊急避難場所は事前想定ができることが救いです。これについても今後の活動計画の中でさらに確かなものにしていきたいと考えています。いずれのケースも当社単独では想定しきれなかったことであり、今回の事業に参加させていただいたことで、具体的な検討になったと考えています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
業界の中でBCPを先行して策定したということで、今後、どう実行できるかにかかっています。ぜひかたちにしたいと思いますが、後々、他の事例で良いものができていたらぜひ教えていただきたいと思います。BCPに限らず、メンバーであるトラック協会全体で取り組み、共有し、業界を守るため、会社としても行った方が良いことは今後も積極的に取り組んでいきたいと思います。