-事業内容を教えてください。
トラックを使った運送事業を行っております。主たる事業は、時間単位で利用できる運転手付レンタルトラックサービスの「レントラ便」になります。平成18年よりサービスを開始しておりますが、おかげさまで個人のお客様にも気軽にご利用いただける、引越し、宅配便に次ぐ「第三の運送サービス」として順調に成長しております。
弊社は「レントラ便」をサービスする企業として国土交通省国土交通政策研究所より、イノベーションモデル調査企業に選ばれています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
これまでに特に防災対策は行ってきませんでしたが、東日本大震災発生の翌日より被災地に赴き私自身の目で被災地の状況を見るに至り、自社が同じ状況下に置かれた場合「どうなるかわからない」と考えたことがBCP策定に取り組むきっかけとなりました。収益よりも自社を強い会社にすることが大きな目的です。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
東京湾北部地震M7.3、震度6強という災害が発生した場合に、下記のような制約が発生すると仮定しました。
●社会インフラ(電気、固定通信、交通機関、交通規制)の停止
●情報機器の故障による予約システムの使用不能
●運転手と車両の不足
このような状況下でも、緊急物資の搬送など社会的責任のある輸送業務が発生する可能性があるため、一刻も早く業務を再開し、インフラの一端を担うものとして責務を果たすための環境を整える必要があると考えました。
そこで、どんなに遅くとも発災日を含む3日以内に通常業務に加えて、緊急支援物資の運送業務を実施すべく、100% 以上のサービスを開始できるレベルまで、業務を復旧することを目標にBCPを策定しました。弊社のビジネスモデルでは受注が復旧できれば輸送業務が行える可能性が非常に高くなるため、発電機、インバーター、衛星電話・携帯電話、ノートPC(通信含む)を用意し対応することに決めました。新たに購入が必要であった発電機と衛星電話はプロジェクト終了前に装備をほぼ完了致しました。
対象事業 | レンタルトラックサービス |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・PCが落下、転倒し損傷(ノートPC以外は使用不能) ・データも一部喪失 ・業務中の車両3台が交通規制エリア内で被災 |
対策 | ・GPS機能付き無線機の搭載 ・高台への車庫の移転 ・PC・プリンター(伝票用)の落下防止・HDDの配置変更 ・従業員・協力業者への教育 ・場所を限定されない移動式対策本部の開設 ・ホームページに緊急時の連絡先を提示 ・衛星電話・携帯電話での受付対応及び伝票手書き ・業務委託先の活用によるドライバーと車両の確保 |
-何か新たな気付きはありましたか?
東京都BCP策定支援事業は集合研修も含めて計5回で策定から演習まで一連の手順で進めていくわけですが、業務上、事前にスケジュールを確定させることが非常に大変でした。しかしプロジェクトを進めていく中で、自社の守るべき経営資源が明確になり、ボトルネックもはっきりと確認できたことは、時間を捻出する意義が十分にあったと思っております。
弊社のサービスであるレントラ便を依頼されるのは個人のお客様が多く、ウェブ上からの予約が大半を占めるため、インターネットに接続できる環境(PC含む)と衛星電話、そしてトラックさえあれば業務活動を継続して行うことができることを策定支援が進む中で確認することができました。ただし、従業員の適切な行動とその行動を非常時にも実現できるような体制を実現するためには、継続的な従業員教育が必要であると認識しております。
-BCPを策定した感想をお願いします。
インフラを担う企業として「強くなった」と率直に感じております。今回、BCPを策定することができましたが、実際に東京湾北部地震などにより自社が被災した際に効率的に動けるのかどうかはこれからの課題と捉えております。実際、どこまで活かせるのかは定期的な実地訓練を行うことも必要ですが、日常業務の中での教育や心がけなどが重要と理解しております。実際に継続し定着させていく中で、しっかりとした土台ができると感じております。