－事業内容を教えてください。

当社は縫合関連製品を販売しており、なかでも手術用の縫合材は全体の売上の70%を占めています。扱っている縫合材は主に手術用縫合糸（絹・ナイロン及びポリエステル製等）、手術用縫合針、針付縫合糸があり、縫合針については韓国釜山の共同出資会社で生産し、全量輸入しています。
縫合糸については、国内に仕入先が2社あり、針付縫合糸は下請け会社2社でセッティングされたものを当社が販売しています。そのほかには手術関連医療用具、ヘルス関連製品、コンビウィズ育児関連製品などを扱っています。

－今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

共同出資会社がある韓国は、地震がほとんどなく、もし東京や大阪が地震で被害を受けたとしても、影響がでないため、すぐに生産、供給ができるという点が当社事業の強みです。ただ、医療用製品は認可の関係で東京経由でないと輸入できないので、東京で被害があった場合にどうするかということを考えておかなければなりません。
そういった事情の中、東日本大震災では当社としての被害はたいしたことは無かったのですが、何らかの対策の必要性を感じていたところに、日本医療機器工業会からお声かけいただき、BCP策定に取り組むことにしました。

－策定されたBCPの内容を教えてください。

対象事業は縫合関連製品販売なのですが、当社の製品は韓国及び東京以外の関東圏で製造しています。また配送は外部委託しているため、今回は販売受注処理業務の立ち上げを中心にBCPを策定しました。

まず、当社の最大の財産である社員を守るため、事務所内の防災対策（耐震等）を実施します。復旧に必要な資源としては、社員以外には販売業務システムがあげられ、これは現状での耐震性は十分と思われますが、停電し使用不能となった場合には手作業、紙伝票で対応することにしました。
また、社員、インフラ、作業スペースがダメージを受け、営業や納品活動ができない場合には、ある程度の在庫を持つ大阪営業所が東京分の営業活動をカバーすることにしました。また東京での営業活動が機能しても、道路被害、交通規制のため、東京の倉庫からの輸送が制限されると予想されますので、仕入先、下請け先からの直送を多くして、対応することも決めました。

－何か新たな気付きはありましたか？

今回のBCP策定では当たり前のことに気付かされました。例えば当社には、安否確認や帰宅経路情報、備蓄などについての対策がありませんでした。今回それらの対策を決定することができましたが、今までのように何となくではなく、具体的に何を、どの順番で、どうするのかを明文化することによって、手を打つべきところが明確になりました。

当初はBCP等の専門用語に戸惑いましたが、徐々に慣れ、大変勉強になったと実感しています。BCP策定は営業戦略的にも使えると思いますし、仕事の時間を使って取り組んだ価値は十分にありました。今後は、インフルエンザなども想定したBCPを作成するとともに、首都圏直下型地震ではけがをする人も多いと思われることから、縫合材（針、糸）の迅速な供給には、当社が会員になっている日本医療機器工業会とも連携を図りながら、全力を尽くしたいと考えています。

－BCPを策定した感想をお願いします。

BCPは演習が大事ということが印象深く、今後も実践していきたいと思います。東日本大震災後ということもあり、想定した被災状況がリアルに実感できるようになり、危機管理の意識が非常に高まったと実感しています。縦横の時系列で分析でき、BCPが明確になり、BCPに関する取引先からの問合せにも自信を持って取り組んでいると答えられるようになりました。自宅でも家族との連絡方法、避難場所などを確認するきっかけになったのは大変ありがたかったです。