-事業内容を教えてください。
当社は、明治19年に理化学、医療用ガラスの製造販売を開始したのが始まりで、その後、理化学商社へと形を変えながら、常に最先端の研究開発と生産技術の革新に対する支援を続けてまいりました。現在では科学機器、計測機器を主に関東圏の研究所、工場へ販売しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
防災対策として緊急時の連絡方法などをまとめたマニュアルの配布や、非常用の食糧や物資を本社ビルに準備するなどの対策は行っておりました。ただ、東日本大震災の際には安否確認に手間取ってしまったこと、また外出先で被災した社員のその後のバックアップ体制(被災後どのように過ごしたら良いかの指示)などに不安を覚え、これまでの防災の備えを改めて見直すとともにBCP策定を行う必要があると考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
地震についてのBCPを策定しました。当社の最も重要な資産は従業員とお客様です。そのため東日本大震災時の経験も踏まえ、“絶対に無理をしない” ということを大前提に発災時の従業員の安否確認や被害状況などの情報収集の仕組みづくりに加えて、お客様との連絡体制を確立しました。
例えば、安否確認は『携帯版BCP』を活用し、連絡がとれない場合、自発的に動けるようにするためのルールを決めました。現在では、従業員への教育を行った上で『携帯版BCP』を配布しております。
また被害状況の情報収集については「被害状況確認シート」を作成し、事業を継続するために必要な経営資源をいち早く確認できる状態にしました。これは経営陣不在の場合にも、従業員が主体的に緊急対応を行うためのサポートとなると考えております。さらに今回の被災シナリオよりももっと深刻な事態として、事務所への立入が不可能となった場合についても検討しました。その結果、本当に必要な最低限の経営資源を絞り込むことができ、機器や装置などがなくても代替拠点での事業継続の可能性が大きいことがわかりました。そしてそのために必要となる顧客データなどの情報資産の保管方法を再検討し、持ち出し用として別の場所にもう1組保管することを決めました。
対象事業 | 精密機械器具販売(うち主要顧客の80%) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・サーバ、ドットプリンタ故障 ・パソコン30%落下故障 ・一部商品の破損 |
対策 | ・複数の通信手段による社員緊急連絡網の構築 ・PC・サーバ・複合機の固定 ・バックアップデータの保管運用の変更 ・迅速な緊急対応及び危機対応体制の構築 ・手書き伝票による対応 ・バックアップデータの活用によるサーバの再構築 |
-何か新たな気付きはありましたか?
東日本大震災を経験したこともあり、やるべきことは理解しているつもりだったのですが、実際にプロジェクトが始まってみるとわかっていなかったというのが正直な感想です。特に被害想定の置き方や経営資源の洗い出しは自社だけで検討していたら、きっと判断ができなかったと思います。どの程度の想定とすることが妥当なのかということについても、コンサルタントの方にある程度前提を提示していただくことでスムーズに進めることができました。
また、普段何気なく使用している経営資源を細かく洗い出すのは正直大変でしたが、アナログ回線や複合機など平常時にあまり役立つものではないと考えていたものが、被災時には通信手段として有効であることが確認できたことは良かったと思います。通常業務と並行しての取組で大変でしたが、集合研修から実質2カ月程度でBCPを策定できたことは良かったと感じております。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回こうした議論をしたことで、当社の最も大切な資産が従業員であることや事業継続に最低限必要な経営資源を明確にすることができたことは良かったと思います。また、時間軸で必要となる経営資源を整理したことにより、発災後の10日間については、予想以上に具体的な検討ができたと満足しております。その後のサプライチェーンの問題は一部残るものの、今後継続して検討していきたいと思います。