-事業内容を教えてください。
創立以来、一貫して、東京都内全域にわたる上水道の管路布設設計を行っており、お客様からも技術的に高い評価を受けております。現在では、管路の耐震化設計・施工管理にも業務の幅を広げ、社会貢献事業の一翼を担っております。また、その他にも、一般の地上測量はもとより、最近は公園、学校グラウンド施設の設計も手がけております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
仕事の関係上、過去の災害においては、復旧活動に少なからず従事してきましたが、今まで意識はしていても防災対策はまったくと言っていい程講じてきませんでした。まして、BCPという言葉すら知りませんでした。
今回、BCPについて紹介され、地震とインフルエンザを現実に体験してきたことにより抱いていた経営的な危機感を再認識いたしました。また、当社では経営者を含め社員の若手化をしていかなければならない時期に来ており、そのためには、社員の団結とモチベーションをどのように上げていくかが数年来の課題でした。これらの課題を解決するには、このBCP策定が今一番にやるべき事ではないかと思い、即決で策定することに致しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は①自社単独事業である設計事業(上水道管路設計)、②所属組合との連携事業としての共同受注測量事業、③同じく組合連携事業である緊急支援事業の3事業をBCP対象としました。東京湾北部地震を想定し、①に関しては、定められた手順と記入フォームによる被災時の社内及び現場の迅速・適確な状況把握と、状況に応じた技術要員・必要器材の調達を実行することにより、被災後2週間で60%の仕掛設計業務再開という高い目標を実現できる対策としました。
また、②に関しては、当社が所属する練馬測量業協同組合との有事の際の相互連絡・支援システムを構築することで、相互扶助の基本精神に基づき、被災により中断した共同受注測量事業を適時に立ち上げます。
さらに、③に関しては、行政(練馬区)から組合への緊急測量等の緊急支援要請に対しても、組合に対し、当社社員の安否状況及び被災状況・業務遂行能力に関する情報を迅速に提供することにより、スムーズな受け入れを可能とします。
対象事業 | 設計事業、共同受注測量事業、緊急支援事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・社員の50%は出社困難 ・サーバ、PC、複合機、測量機器は損傷 ・社外の社員とは連絡取れず |
対策 | ・防災・救命訓練への積極的参加、救急箱の充実 ・機器等の固定 ・オフィス内の整理整頓の徹底、不用物の廃棄 ・迅速・適確な状況把握 ・状況に応じた、必要要員と必要機器の調達 ・有事の際の組合及び組合員会社15社との連携体制を確立し、活用する |
-何か新たな気付きはありましたか?
当社のBCPは、東京湾北部地震を想定していますが、対策を検討するに当たり、問題は大きく二つありました。第1に社員及び家族の安否確認。第2は地震発生時におけるシステムデータの破損でした。有事の際の混乱した中で、この二つの課題に対して、どのような実行可能な解決策があるのかを考えるには苦労いたしましたが、参加した社員たちの頑張りで、なんとか第1版としての解決策をまとめることができました。
また、社内の家具、什器、備品等の地震対策をどのようにするかは、比較的参考例が良く出ておりますから、当初は簡単かと思いましたが、現実にそれらをすべて耐震化・固定化するとなると、オフィスの壁や床に傷が残るとか、機器を固定してしまうと使い勝手が悪くなるとかの問題があり、具体的な方法までは決定できませんでした。しかし、BCP策定のこの時にやらなければと思い、今回、オフィス移転を機に環境を整えようと決意をしました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
年度末の非常に忙しい時期にBCPの策定をするということで社員に参加をしてもらったわけですが、最初は乗り気でなかった者が、ステップが進むにつれ、その重要性を理解し、徐々にモチベーションが上がっていきました。また、社員の防災意識向上においても、とても意義がありました。最近は同業者に、今このようなことをやっておりますよ、と話をしております。