-事業内容を教えてください。
当社は創業50年を迎える測量会社として、河川測量と地上測量全般を行っています。内容は基本測量、公共測量、民間測量、調査に大別されます。なかでも河川測量を得意としており、平時の河川の流量を定期的に観測しておく低水流量観測と、増水時の流量を観測する高水流量観測によって得たデータは、大雨等の増水時に自治体が避難勧告の発令を検討するときの資料となっています。さらにこれら報告結果の蓄積が治水事業の検討資料になります。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
長年、河川の流量観測を手がけてきたせいか、防災の意識は高い方だと思っていますが、これまでは防災訓練を実施するくらいで、防災対策は特に行っておりませんでした。ところが3年前に落雷によりサーバがダウンし、また雨漏りによる漏電も発生して、電気系統のトラブルにより業務に支障が生じた経験があり、それによってデータのバックアップ取得の必要性を認識し、実施するようになりました。今回、漏・停電だけでなく大地震の発生の可能性も高いと気になっていました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社は河川測量については長年の実績によって蓄積されたノウハウをもっており、大きな強みだと考えております。また、この事業は長期にわたってサービスを提供する当社の売り上げの柱でもあります。よって今回BCP策定の対象事業とし、なかでも平常時に行う低水流量観測を優先して対策を検討しました。
測量事業を継続するためには技術者、機材、車が必要で、観測結果のデータも重要です。しかし保管場所等の関係で機材と車は破損の可能性が低いことが確認でき、総勢10名という少人数で事業を行っている点を考慮し、主に社員を守る対策を検討しました。
さらに、お客様からお預かりしたデータや測量データのバックアップについては大地震を想定してさらなる強化を検討していきます。
また、当社では加盟している東京測量調査設計事業協同組合が受注した共同受注案件にも参加しておりますが、今回の検討によって、河川測量の復旧で確保した経営資源で並行して対応できることが確認できました。
対象事業 | 河川・地上測量 |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・技術者5人外出中2人負傷 ・現場との連絡困難 ・サーバ内の情報資産が破損 |
対策 | ・食料と小銭、手動充電器付携帯ラジオを常に携帯する ・各種耐震対策を実施する ・技術部長と連携して社員の安否情報を収集し、稼働可能な要員を把握することに より、作業再開に向けて行動予定の見直しを行う ・サーバ破損の場合は代替機器を使用する |
-何か新たな気付きはありましたか?
測量には大きな装置は必要なく、技術者と器材があれば何とかなるものなので、まずは社員の身の安全と安否確認が事業継続を左右すると言っても過言ではありません。まして当社は、10人規模の会社なので、1人が業務をできない状況になったときの事業への影響が非常に大きいことに気付きました。社員の身の安全がいかに大切であるかを痛感しました。
また、以前よりそのように感じていましたが、今回BCP策定のために検討を重ねた結果、通信の確保が当社の復旧に与える影響が極めて大きいことを再認識しましたので、対策を強化していきます。
-BCPを策定した感想をお願いします。
家族が災害に対する意識が高いため、普段から家族の連絡先メモ(今回策定した携帯用BCPのようなものです)を持ち歩いており、外出時には水や食料や小銭を常に携帯するようにしています。それでも、被災の想定をしないと、災害時に何をすべきかがまったく見当がつかないことがわかりました。普段は予期もしていなければ、準備もしておらず、考えることさえありませんでしたが、改めて真剣に考えることにより、災害への対応力を身に付けたいと思います。今までは自分の身を守ることだけでしたが、このプロジェクトにより会社の事業継続を強く意識するようになり、災害に強い会社にしたいと考えています。