-事業内容を教えてください。
当社は測量業を営んでいます。事業としては、一般測量、用地測量といった測量事業のほか、補償コンサルタント事業や建設コンサルタント事業を手掛けています。主要顧客は東京近郊の官公庁であり、なかでも地元の江戸川区に対しては、近隣の同業者と構成した「協力会」を通じて、地場の業者として実績を積んでまいりました。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
2年ほど前に知人企業がTVで取り上げられた際にBCPという概念を知り、平成21年の新型インフルエンザ大流行時には、区から事業継続に関する危機管理体制の確認を受けたこともありました。地震については、オフィスレイアウトの大幅見直し、通路の確保、背の高い棚や荷崩れを起こすような物を極力置かないようにするなどの対策は行っていましたが、特に防災対策を重視していたわけではありませんでした。
ただ3月11日以降、BCPの必要性を強く認識するようになりました。なぜなら、お客様や時代の要望の変化により、今や有事でもできるだけ早い復旧を実現する必要があるからです。これに応えるべくBCP策定に取り組むことは、平時からの体制のアピールにもなりますし、今回の取組のように組合と連動を図ることで、組合や、他社との機材・人の相互応援も可能となると考えています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
BCPの対象事業を、本業である測量事業(自社受注・共同受注)と、災害時の緊急時支援要請の受入(自社単体・組合経由)の両方としました。
当社の事業は一つですが、自社単独で受注している案件と共同受注案件に大別されます。また、災害時には行政から、緊急時支援として被災地の現地走査作業の要請があると想定しており、区から地元企業である当社に(「協力会」経由で)要請がある場合と、組合経由の場合が考えられます。これは、自社単独の動きのみならず団体の一員としての非常時対応を行うことであり、組合の共同受注案件の信用力向上に貢献でき、ひいては自社の競争力にもプラスになると思います。
また、災害時の緊急要請に対して、両方のケースを一元的に検討することで、自社と組合の相乗的な相互扶助の在り方を確認することができると考えています。ついてはこれらの要請に迅速に対応できるよう人員とデータ及び機器について対策を検討していきました。
対象事業 | 測量事業(自社受注・共同受注) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・社屋は一部損壊、室内乱雑化、立入りは可能 ・PCや複合機の大半、測量機器の半数以上が損壊 ・データマスターⅢ内の保存蓄積データが破損 |
対策 | ・オフィス安全化(ガラス飛散防止、棚の固定・連結) ・機器類の設置・保管方法の見直し(場所、配置、固定) ・データバックアップ方法の改善 ・携帯メールなどによる安否・被災状況連絡体制の構築 ・現場作業員の被災時対応方針の作成 ・作業計画の見直し検討を実施(人員不足の場合、協力業者に応援を依頼) ・顧客との作業計画の打ち合わせを実施 |
-何か新たな気付きはありましたか?
苦労した点としては、こうした理論に基づく検討作業に社員が慣れていなかったことです。営業の役割も担う私はともかく、それ以外の社員は日頃論語調の文書に親しんでいるわけでもなく、最初の頃は、アジェンダやコンサルタントから受け取る資料を読んで理解はできるものの、そこから生まれる考えを他者に伝えるには、文書としてどうまとめたらいいのかなど、戸惑いがかなりありました。また、通常業務と両立してBCP策定に取り組むことになったため、特に文書化作業を一手に引き受けた事務局には負担がかかっていたと思います。
他方で、新たな気付きとして、これまでも地震・津波のニュース映像などは見たことがありましたが、今回コンサルタントの方の説明を伺い、自社について検討を進める中で改めてご提供いただいた映像を拝見してからは、悲惨さが身に迫ってきて軽く考えてはいけないと思うようになりました。BCP策定に取り組んで、こちらの意識が変わったということだと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
これまでは個々人が資料を作成して隣の人などに見せることはあっても、オープンな場で討議と文書化を同時進行で行ったことはなかったので、なかなか面白い経験になり、その後会社の風土としても、検討課題を明示してオープンな場で議論を行うことが定着するようになりました。今後は演習を行う時に、例えば実際に避難経路の確認をするなどの体を動かすような実践的要素を取り入れて、より現実味を感じつつ取り組んでいくことを考えています。