-事業内容を教えてください。
進学を目指して来日する留学生や日本に居住している外国人に日本語教育を行い、将来母国や日本で意義ある仕事に従事する社会人の育成を目指しています。学生は留学生が80%、在日外国人が20%で、ほとんどの学生は中国人で、寮や徒歩圏に住んでいます。
進学コースは、専門学校・大学・大学院等の日本の高等教育機関に進学を希望する留学生の日本語教育及び進学指導を行い、生活日本語コースは、日本で生活する外国人のための日本語教育を行っています。また、外国人が勤務している企業や留学生が在学している大学への講師派遣や、日本語学習教材の開発・出版も行っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
3.11の際、外国人学生の安否確認、保護者から殺到する個別の問合せの応対に追われました。地震後2週間で約60%の学生が一時帰国し、その手続の支援をし、さらに原発事故後の不安が大きくなる中で帰国できない学生たちを教師が引率して10日間神戸に移動させ、その間に保護者との相談を含め、自分の身の処し方を決めさせました。これらの対応を通して、私たちは「外国人に対するサービスを行っていること」を改めて認識しました。
また、一連の行動は、その場で考え判断し実行しましたが、あらかじめ方針が定められていれば、対応・行動もよりスムーズにできたのではないかと感じました。「学生、職員・講師の生命を守る仕組み、保護者への正確な情報を提供できる仕組み」を軸に災害時の対応力を高め、事業の早期復旧ができるようBCP策定支援事業に参加しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
地震を想定し、対象事業である留学生・在日外国人向け日本語教育事業を早期再開するためのBCPを策定しました。当社は教育機関であり、海外から大切なお子さんをお預かりしています。そのため東京湾北部地震のような大災害を想定した場合には、まず学生たちの生命・安全を守り、被災情報の収集と発信を的確に行い、被災後の学生一人一人の生活を支援することが最優先事項であると考え、対策を検討していきました。
これらを迅速に行うために、本BCP策定中に、学生にアンケート調査を実施し、学生のニーズ、被災時の連絡方法などの確認をしました。その上で、まずは学生たちに策定したBCP方針の徹底・参加・協力依頼をすると同時に、緊急時の連絡体制と上級生への通訳の協力依頼、保護者への報告の手順などの体制を整えました。さらに食料・生活用品の備蓄などを行い、学生の生活支援も行った上で、早期の授業再開を目指します。
対象事業 | 留学生・在日外国人向け日本語教育 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・液状化により20㎝水没 ・副理事長・所長不在 ・所外学生連絡取れず、全員帰宅困難 ・サーバ、PC等機器使用不可 |
対策 | ・上級学生に他の学生への通訳の協力を事前に依頼(中国語・韓国語) ・緊急時の連絡項目の設定と連絡体制の構築 ・学生の安全な避難と保護者へ報告 ・学生の指導と緊急生活支援 ・発電機購入、連絡手段の確立 |
-何か新たな気付きはありましたか?
初めの段階ではBCPの考え方を理解するまでに時間がかかりました。現業の中での短期集中作業、準備会議の調整など、職員が少人数のため事務局の負担が大きくなりました。しかし、この策定に取り組んだことで、改めて「外国人学生を守り、保護者への責任を果たす」という使命を皆で再確認でき、所内であいまいにしていた課題がはっきりして、ITの強化策、属人化していた業務を多能工化するなどの改善策が検討できました。自分達だけでは、短期間でここまでの形にはできません。後はこれを改善していくことだと思います。学校のPRに使えるめどもつきました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回のBCP 策定は第一歩であり、今後、区の防災課や外国人課等との情報共有、学生への携帯BCPの配布、属人化している業務のマニュアル化などの対策を検討します。BCP年間運用計画では、4半期ごとの「職員による進捗評価」で管理サイクルを回したいと考えます。当支援事業のおかげで短期間でBCPが策定できました。まだ完璧ではありませんが、今後の演習や訓練を定期的に実施することにより、より効果・実効性の高いものに改善していきたいと思います。