-事業内容を教えてください。
1951年の創業以来、プラスチック製品の企画・開発から製造、販売までを一貫した体制で行っています。主な製品は、ケーブル類を束ねる結束バンドや衣料品についているタグファスナーで、家電、自動車、電気設備、土木建設資材、アパレル等、多岐にわたる業種のお客様に商品を提供しています。60年以上の経験とノウハウ、蓄積された技術を社内で継承し、金型から社内で製作することで、お客様の要望をいち早く製品に活かすことができる体制となっています。
また、東京本社と大阪に営業所、埼玉と山形に製造拠点を設けることで、以前から災害のリスクを考慮した拠点展開をしてきました。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
一昨年の東日本大震災の際、道路交通網の混乱で原材料の入荷が滞り、最終的には川崎市にある仕入先の倉庫まで樹脂原料を直接引き取りに行き、急場をしのぐという経験をしました。この経験から、災害発生時の取引先への初期対応の重要性を認識したことが、今回、BCP策定に取り組んだ理由です。
また、当社は日本国内で製造し続けることを経営の柱に据えていますから、日本で事業を継続するためには災害に対するBCP策定は急務でした。コストだけを考えると海外進出した方がメリットは大きいのですが、従業員のため、さらには日本の産業空洞化を避けるためにも、私は国内製造に固執し、海外には工場を持たないという方針で経営を続けたいと思っています。そのためには、当社自らの事業継続を真剣に考え、従業員、取引先を含めてBCPに取り組んでいくことが重要だと思っています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
対象事業は、当社の売上の90%を占めるプラスチック製品の製造・販売事業とし、発災後3日目までに営業部門がお客様や仕入先の状況を確認、その情報をもとに製造部門が生産計画を作成、7日目には製造を再開できるように目標を設定しました。
当社にとっては、従業員、設備・機器、そして受発注・在庫管理システムやファイルサーバ等が重要な経営資源だと特定しました。
従業員については、従来から進めていた5Sをさらに充実させ、工場内での負傷等を防ぎます。発災後に出社可能な従業員が減少することも想定し、スキルマップを作成。日頃から全従業員の技能を把握しておき、他のチームや事業所との人材交流を進めて多能工化を実施することで代行者による作業対応を可能にすることにしました。
設備・機器に関しては、固定化や定期点検の実施に加え、計画的に修理技術取得者を育成し、破損や故障が発生した際には自社内で修理して使用できるような体制を整えることにしました。
また、本社だけに置かれているサーバ類が当社の最も脆弱な部分であることを認識したため、東松山事業所にバックアップサーバを設置し、本社サーバが破損した場合は、正常に動作する東松山事業所のサーバを使用して受発注や出荷業務を行うこととしました。
東日本大震災で苦労した樹脂原料の仕入に対しては、仕入先との緊急連絡体制を構築するとともに、平時から他のメーカーや同業他社との関係を深めておき、できるだけ多くの調達ルートを確保できるように準備しておくことにしました。
対象事業 | プラスチック製品の製造・販売 |
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対象リスク | 地震 |
被災シナリオ | ・ 怪我、または交通手段の喪失で従業員の出社率が7割 ・ 一部設備の位置ズレ、破損、故障 ・ 本社にあるサーバの破損 |
予防・低減策 | ・ 転倒、落下防止策の検討実施 ・ 全従業員のスキルマップ作成と多能工化の推進 ・ サーバと受発注・在庫管理システムを東松山事業所でバックアップ |
代替策 | ・ 他チームによる業務の代行または鶴岡事業所からの応援 ・ 自社従業員による設備・機器の応急修理 ・ 検査機器・小型クレーン等は予備機器や代替手段の利用により業務を遂行 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
今回のプロジェクトには、経営への参画意識を持ってもらうため、東松山事業所の若手社員をメンバーに加えました。しかし、東松山事業所は東日本大震災での被害がほとんどなかったため、大地震が発生したときの被害や予防策について、最初はなかなか想定できず苦労している様子が伺えました。しかし、ミーティングを重ねるごとに彼らの意識も高まってきて、どのように業務を維持していくのかを考え始めてくれたことを大変心強く感じました。
当社は今年1月から、次世代の会社経営を担ってほしい若手を経営会議に参加させる執行役員制度をスタートさせました。BCPプロジェクトのメンバーの中にも執行役員に任命したメンバーがいます。BCPを作っていくということが、同時に彼らが会社全体のことを考えるきっかけになったと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCPは全社で取り組んでいかなければならないものだと感じました。今後は、外部認証を取得しているISO9001とISO14001の運用に合わせ、BCPの社内への浸透を図っていきたいと思っています。それに加え、プロジェクトに参加していなかった社員に携帯BCPの制作を依頼し、製造現場のチーム単位で訓練を行うなど、他地域の拠点も加えて、全社が一つとなって当社のBCPを作り上げていきたいと思っています。