事例紹介: 株式会社メトロール

株式会社メトロール 代表取締役社長 松橋 卓司氏

世界No.1の信頼を維持する
供給体制をBCPで担保する

株式会社メトロール ロゴ

代表取締役社長 松橋 卓司氏

想定リスク: 多摩直下型地震及び立川断層帯地震
業種: 製造業

-事業内容を教えてください。

当社は、工作機械などの刃先の始動位置を2000分の1ミリメートルという単位で正確に測定する接触式位置決めスイッチの開発、製造、販売をしています。工作機械等の刃先は摩擦によりずれが生じますが、油や金属粉が飛び散る過酷な状況でも、接触式なら正しく検知してフィードバックでき、生産効率の大幅な向上が可能になります。これまでに、延べ40万台以上の工作機に採用され、世界シェア7割というワールドワイドな信頼を築くことができました。

-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

直接的にはやはり東日本大震災がトリガーとなっています。東日本大震災では、福島の協力工場が被災しました。幸い、短期間で復旧できましたが、実は考えさせられることがありました。当時は日本の物流が止まり、当社製品の供給も滞るのではないかという懸念から、早めの注文を顧客にお願いしました。すると、海外企業からの受注が3か月間急増したのです。急増した受注に対応するためには、残念ながら、より生産能力の高い会社に一部の外注を切り替えざるを得ませんでした。

もし、東京で地震が起こり、当社の事業が継続できなかったとしたら、一体どうなったのか。おそらく、当社が外注先を切り替えざるを得なかったように、顧客は他社へ切り替え、当社は失注したことでしょう。このように考えると強い危機感が湧きました。同時に、地震国日本に活動拠点を置く部品サプライヤーはこのような災害のリスクから会社を守る責任があると思うようになり、折から東京都の事業について紹介をいただき応募しました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

BCP対象事業は、工作機械用及び産業機械用位置決めスイッチの製造としました。理由は、売上構成比の4割を占める主力事業であること、また海外売上も6割であり、海外は直販体制を敷いているため、製品供給が止まるとシェアと信頼を同時に失いかねないことからです。

震度6強~7の地震が起こり、サーバ・会計システムPC損壊、クライアントPC30%損壊、従業員は事務系約5割、工場は約3割が出社不能という事態を想定しました。

重要業務にあたる生産工程には、資材・部品の手配(MRPシステム)、購買、ピッキング、洗浄、組立、研磨、検査、梱包、出荷という一連の業務があります。特に重要な業務は手作業を中心とした組立工程で、とにかく従業員に出社してもらうことが重要です。また、今回の策定で改めて認識したのは、受注から出荷、請求までを管理する生産管理や会計処理等、当社の業務にはシステムが欠かせないことでした。図面や設計図、見積、売掛、海外との取引データ等がなければ事業が立ち行きません。

これに対して、人的対応としては多能工化、緊急時勤務体制の構築、有事の国内外への外注化を図ります。情報資産・設備面では、生産管理サーバの代替機の準備とデータバックアップ、システム復旧の自動化等などを検討しました。

一方、顧客への製品供給を止めないために、従来の1か月程度の部品在庫に加え、今後は、当社あるいは協力会社で完成品の在庫を持つことも検討し始めました。当社の安心と顧客ニーズに応え続けるための投資と考えています。さらに、海外の製造や販売の拠点とはこれまでメールを使ったやりとりができていましたが、今回の策定を通じ、これまでFAXのみを使用していた国内でも、顧客のメールアドレスをリスト化し、有事の際にも、きちんとコミュニケーションを図れる体制を作っていきたいと思います。

対象事業工作機械用メカ式及び産業機械用高精度センサー事業
対象リスク多摩直下型地震及び立川断層帯地震
被災シナリオ・従業員の事務系約5割、工場は約3割が出社不能
・ラック・棚の転倒、サーバの損壊
・生産管理システムの非稼働、生産管理システムが稼働するサーバ損壊
予防・低減策・多能工化
・ラック・棚等の転倒防止
・データバックアップ
・システム復旧のメンテナンス契約、蓄電池の導入
代替策・国内・海外への生産移管、外注による代替
・代替サーバの活用
・システム復旧の自動化

-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?

今回のプロジェクトでは、手順を示してもらったので、大きな困難はありませんでした。策定の過程で改めて認識できた強みは、会社から徒歩圏内に住んでいる従業員が多いということでした。これは財産だと思います。反対に、弱みとしては、ある特定の能力や技術を持っている人に、いろいろな業務が集中してしまっていることが明らかになりました。候補者はいても、なかなか教育まではできていないのが現状です。今後はこれについて改善していきます。

副次的な策定の効果は、社員が一丸となって取り組み結束力が高まったことです。これは供給体制に責任を持つという自覚の現れとも言えるでしょう。また、今回、社員の携帯メール等で緊急連絡網を作ることになったのですが、今までは個人情報保護の観点から、なかなか会社として強制できない面がありました。しかし社員の意識が高揚したことで、互いの個人情報を積極的に公開しようという協力姿勢が見られたことは自社への帰属意識が養われたからだと思います。

-BCPを策定した感想をお願いします。

当社としてのBCPのたたき台、骨格が短期間のうちにできたことは、大変良かったと思います。

もし、自分たちで外部コンサルタントを入れるとなると、BCP策定コンサルタントを探すところからスタートとなり、多分、探すにも一苦労したはずです。でも、東京都の事業に参加することで、この段階がなくなりました。また、本来なら報酬もお支払するところを東京都のご負担で行うこともできました。このような機会をいただき感謝しています。

今後は、策定したものをブラッシュアップしていき、実際の有事の際にも機能するように避難訓練や演習を通じて、幹部や社員にも徹底して理解、浸透させていくつもりです。また、必要な投資も行っていきます。

株式会社メトロール BCP策定プロジェクトメンバーの方々

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

代表取締役社長松橋 卓司 氏
取締役専務刀祢 雅男 氏
マ-ケティング部 販売促進課 課長
マ-ケティング部 販売促進課 係長
会社情報
称号: 株式会社メトロール
本社所在地: 東京都立川市高松町1-100
設立: 1976年6月
資本金: 4,000万円
従業員数: 100人
代表者: 代表取締役社長 松橋 卓司
事業内容: 計測制御機器、省力化機器、精密機器、検査具などの設計製作と販売
URL: http://www.metrol.co.jp

(2012年12月末日現在)

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