事例紹介: 共進倉庫株式会社

共進倉庫株式会社 取締役営業部長 田澤 宏和氏

受託品を地震から守り、
顧客の依頼に応えて発送を再開

共進倉庫株式会社 ロゴ

取締役営業部長 田澤 正行氏

想定リスク: 東京湾北部地震
業種: 運輸業

-事業内容を教えてください。

当社は調布・府中地区で40年以上倉庫業を営んでおります。お客様の90%は法人です。昨今はいろいろな業界で物流アウトソーシングが盛んになってきており、3PLなどを活用し、倉庫を主体にしたいろいろな物流ソリューションサービスをお客様へ提供しております。当社の特徴的なサービスの一つが「映像コンテンツ物流」です。調布近隣には映画や映像コンテンツ制作スタジオが多いこともあり、創業時から映像コンテンツ業界の物流を取り扱いさせていただいております。映像コンテンツ業界の物流は取り扱いが特殊であり、長年の取引で蓄積した専門知識やノウハウによって、全国の劇場にロードショー映画のフィルムやハードディスクを発送する業務などを行っております。また、最近は映像コンテンツ業界のニーズを捉え、フィルム原版や、ビデオマザーテープ、セル画、関連書類などを専用の空調倉庫に保管するアーカイブ&レコードマネジメント事業を推進しております。

もちろんそれ以外にも新たな物流業界の潮流である「EC物流」、「フルフィルメントサービス」など、あらゆる業界、業務に応じた物流倉庫ソリューションを提供しております。

単にスペースを提供し保管機能を提供するだけではなく、ITを活用した保管品(在庫)検索・入出庫依頼ができる情報システムなどの開発・提供をすることなども推進しております。

日々お客様の多様なニーズやご要望にお応えできるよう努力しております。

-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

平成5年にトランクルーム専用倉庫を開設してから地震対策を調査研究してきましたが、主に建物の設備についてでした。阪神淡路大震災、新潟県中越沖地震やインフルエンザパンデミックでの事業継続の重要性を痛感し、大企業での「BCP」というものを知りました。倉庫会社としてどのように策定すべきか悩んでいたところ、中小企業庁のHPで策定マニュアル見つけ、そのマニュアルに沿って策定しました。しかしながら、実際に運用できるのか不安でした。そのような中、東日本大震災が発生し、既存の「BCP」が機能しないことが実証され、実態に沿ったものを社員が主体になって作成しなければ意味がないと思いました。東日本大震災後はお客様からもBCPについての質問が多数寄せられ、再度BCPの見直しに着手し、難航している折に東京都の支援事業を知って参加を申し込みました。

また、東日本大震災の時に仙台の倉庫会社に支援に行った経験も大きなきっかけになっています。現地の体育館や空き教室に支援物資が山積みにされたままで適切に配送されず、多くの物が廃棄されているような状況に接し、倉庫業者としては物流拠点機能を果たすことが社会的使命であると痛感しました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

対象事業としては、実際にお客様との契約内容にBCPが盛り込まれた物流アウトソーシング事業とし、負傷者の発生、本館倉庫が一部損傷、ITインフラも使えなくなるという被災状況を想定しました。

このような状態において、ロードショーの公開期日に合わせてすみやかに全国に配送しなければならない映画フィルム配送について、受託品を地震から守るとともに、いかにお客様の依頼に応えた発送を再開できるかを検討しました。地震は範囲が限定されるものであり、当社の被災が他の地域の物流に支障になることがあってはならないのが基本です。

入庫・仕分け・出庫の業務を優先して復旧する必要がありますが、これらには外部クラウドを使用した入庫システム、人員、本館倉庫、フォークリフトやエレベーターなどの設備、バーコードプリンタ等が必須になります。また、発送業務には全国で1,200箇所に及ぶ発送先情報を管理するシステムサーバも必要です。

負傷した人員については近隣居住の従業員で業務を代替し、本館倉庫が使用できない場合は隣接する新館倉庫で業務を継続します。停電により使用できない設備については人海戦術でカバーする予定です。出庫に使用するシステムサーバも同じ本館にあるため、入庫システムと同様に外部クラウドに移管するとともに、非常用電源の導入を検討することにしました。

対象事業物流アウトソーシング事業
対象リスク東京湾北部地震
被災シナリオ・ 担当業務部門負傷者発生
・ 本社倉庫本館一部損傷で作業継続不可
・ 社内ITインフラの損傷
・ 受託品ダメージ発生
予防・低減策・ 配送管理システムのデータセンターへの移管
・ 転倒・落下防止策と重量物の移動防止策の強化
・ 本社倉庫本館の耐震補強(予定)
代替策・ 本社倉庫新館にスペースを確保し入出庫作業を継続
・ 非常用発電機の利用(導入予定)
・ バックアップネットワークの利用(導入予定)

-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?

BCPを作成する過程で会社全体を見渡したため、様々な気付きがありました。例えば従業員の多くが近隣居住のため、被災時の出勤率が大きく下がることはないことや、出庫業務がシステムサーバへのアクセスに大きく依存しているため、サーバ保護対策の必要性が大きいことを再認識できました。またITシステムや消防組織を見直す機会にもなりました。

お蔭様で物流拠点としての機能を復旧するBCPは策定できましたが、最終的にはお客様に物を届けるには運送手段の復旧が必須です。今後は、首都圏直下型地震で交通規制や渋滞など混乱をきわめる中、円滑な運送をどう実現するかを業者と詰めていきたいと思います。

-BCPを策定した感想をお願いします。

以前策定したBCPを見直そうとしても何から手を付ければいいのかわからず、社内だけでは進められませんでした。例えば、被災時に発生する怪我人対応の文書化、緊急時の安否確認手順の明確化や訓練など、自社だけで作ったBCPでは不足していましたが、今回の取組によって、発災時の混乱を最低限に抑えられるようになったと思います。

BCPは作ったら終わりではありませんので、改善していかなければなりません。第三者認証を取得したわけではないので、外的な強制力なしに社内に定着できるかという点では不安がありますが、有事への備えに踏み出すことができ、実行計画で決めた対策をこれから着実に進めていきたいと思います。

共進倉庫株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

取締役営業部長田澤 宏和 氏
業務部本部長柴山 満 氏
業務部管理部長水野 正 氏
営業部営業課長中村 智之 氏
会社情報
称号: 共進倉庫株式会社
本社所在地: 東京都調布市飛田給1-34-1
設立: 1971年10月
資本金: 5,000万円
従業員数: 50人
代表者: 代表取締役社長 田澤 正行
事業内容: 倉庫を主体とした多様な物流ソリューションサービスの提供
URL: http://www.kyoshin-soko.co.jp

(2012年12月末日現在)

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