-事業内容を教えてください。
当社は、昭和24年に江東区で艀(はしけ)による穀物を運搬する会社として創業いたしました。今では、艀による海上輸送だけではなく、国際貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者として税関から通関部門、倉庫部門において日本版AEO制度の認定を受け、東京、千葉、神奈川の首都圏の港湾地区に拠点を置き、営業倉庫、通関、陸上輸送等を通じて輸出入貨物、国内貨物の取り扱いサービスを提供する総合物流企業として事業展開を図っております。
穀物を主体とした貨物の運送運搬や食品の輸出入関連業務の豊富な実績を認められ、大手製粉会社様や、輸入酒類・食品類を扱う企業様とお取引させていただいております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災が発生した際、幸いにも当社には大きな被害はありませんでしたが、お取引先の中では かなり大きな被害を受けたところもあり、当社にも被害状況と営業状況の問合せがありました。
この時の経験から、当社としては大地震のような自然災害も大きな経営リスクであると捉えるようになりました。社員とその家族の安全確保はもちろん、万が一重要な会社資産に被害があった場合でも、早期に復旧できる体制を構築することこそが、お客様からの信頼を確保することにつながると考えていたところに、東京倉庫協会から今回のBCP策定支援事業を聞き、応募させていただきました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
BCP対象事業を倉庫業とし、その事業の中でもすでに通関手続きの完了した商品の出荷依頼の受付、ピッキング、出荷業務を最も早急に復旧させる業務としました。震度6強の地震によって、社員(協力会社含む)が25%負傷して、受付業務に必要な情報システムが使用不可、フォークリフトが故障することなどを想定しました。
発災直後から停電を想定していますので、受付業務に必要な情報システムが稼働できない場合、蓄電池を使い、固定電話、メール・HPなど複数手段を利用した受付を実施することを検討しました。そのためには、緊急時受付連絡先を予めお客様に伝えておくことにします。
また、預かり商品の荷崩れ予防のため、高い場所に保管している商品はラックごと商品をラッピングして固定化を図り、それでも商品が落下してくることを考えて、倉庫内の作業員が逃げ込める場所を確保するためにラックなどを加工して避難スペースを作成する事にしました。さらに、ピッキングに必要な電動フォークリフトの充電を朝・昼の2回実施することと、荷役エレベーターの代替には、人海戦術で商品を運ぶ緊急人員体制を検討しました。そのための人員確保には、他部署と協力会社へ支援依頼をかけます。出荷に至るまでに必要とされるマンパワーをいかに確保して、少ない人数で機能させているかが重要となってくるでしょう。
対象事業 | 倉庫業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 社員(協力会社含む)25%負傷 ・ 荷役用エレベーター停止 ・ フォークリフト故障 |
予防・低減策 | ・ 倉庫内にラックを利用した避難所を設置 ・ 倉庫用発電機、蓄電池式LED照明の購入 ・ フォークリフト充電ルールの周知徹底 |
代替策 | ・ 他部署、協力会社へ支援依頼 ・ 受付方法を固定電話、メール・HPなど複数手段利用 ・ 代替機としてLPガスフォークリフトを手配 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
私も含め策定に参加したメンバー全員に言えることですが、震度6強の地震が起き、会社の設備、機器はもちろん公共交通機関、インフラが壊滅的な被害を受けるという想定を、受け入れることに時間がかかりました。ただ、一度受け入れたあとは参加メンバーから様々なアイディアが出てきて、お客様への思い入れや仕事への情熱が伺える発言が多く飛び出してきました。
また、会議の中で、討議ルールに沿って自由に意見をし、1時点1テーマについて参加メンバー全員で考えることが、新たに学べたと思います。自由に意見交換する会議等の機会が少ない中で、今回BCP策定という目的を共有しながら議論を重ねたことで、一体感が生まれたことも良かったと思います。
BCPの取組において、社員を守るためと、迅速に復旧するための対策を取るためには、ある程度のコストがかかります。このバランスをどのようにとっていくかが今後の課題です。
-BCPを策定した感想をお願いします。
厳しい被災想定の中で知恵を出しあうことで、ある意味、これくらいのことなら決してへこたれないという自信がでてきたのではないのかと思います。様々な制約のある条件下で、どのように私達がアウトプットをしていけば良いのかを考える訓練になりました。いつもは日々の業務に追われがちですが、自分で考え答えを探すという今回のプロジェクトは、平時の業務でも新しい課題を考え解決する力になったと思います。
今後は、年間計画に沿ってBCPの演習を繰り返して改善していくことを、当社の経営戦略の一環と捉えて事業施策に加えていきたいと思いました。