-事業内容を教えてください。
当社は光通信用部品の輸入・販売を行う商社です。輸入元は主に中国、台湾の海外メーカーで、国内の大手通信機器メーカーに販売しています。総勢7名と小規模な組織ならではのクイックレスポンス、迅速な意思決定が当社の強みです。また、単に商品を卸すだけでなく、自社での充実した品質検査に加え、海外協力メーカーの工場監査や技術指導を業界でも先駆けて行い、きめ細かく付加価値の高いサービスをお客様に提供しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社のお客様は国内の大手通信機器メーカーでBCPに対する意識も高く、毎年アンケート形式でBCPに関する評価を実施しているお客様もあります。そのご要望に応えること、つまりサプライヤーとして供給を絶やさないことは、当社が目指す顧客満足度の向上に直接つながるものであると思いました。また、経営者という立場から考えても、事業を継続し会社を潰さないことで従業員を守りたいという思いから、BCPに取り組むことにしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は震度6強の首都直下型地震を対象リスクに、単一事業である光通信部品の輸入販売事業を対象事業としてBCPを策定しました。
平時の業務フローでは、お客様と取り決めた仕様に従って海外のメーカーで受注生産を行い、大阪の発送センターで商品の受入、検査、発送業務を行っています。今回は首都直下型地震により東京本社のみが被災するという想定で、仕様取り決めが不要な継続品の受発注を早期に再開することと決め、東京本社で行っている受発注及び、既に受注分の商品の納期調整を重要業務として選定しました。
この業務に必要な経営資源は、受発注、納期調整を行う各担当者、PC、価格情報などのデータとファイルサーバです。これらを洗い出す過程で、すべての業務が特定の担当者に集中している、受注用EDI(Electronic Data Interchange)が特定のPCでしか行えない状態であるなど、業務のボトルネックが見えてきました。そこで、各担当者の負傷による勤務困難、さらに特定のPCとファイルサーバの破損という被害を想定した上で対策を検討しました。
まず人員については、作業マニュアルを作成し、担当外の社員が日頃から受発注業務をカバーできる体制を整備しておき、有事の際には代替対応します。また、大阪発送センターでも一時的に受発注対応をできるように連絡先等の情報共有をしておきます。さらに、大阪にもサーバを置いて二重化し、早期のデータ復旧を可能にします。PCについては、予備PCを災害対策本部の第2候補である役員自宅に整備するとともに、大阪でも同じ機能が使えるようにしました。
また、停電に備えて簡易の発電機を導入し、お客様との連絡に必要な携帯電話やPCの充電、作業用照明など最低限の電力を確保できるようにしました。
対象事業 | 光通信部品の輸入販売事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 受発注担当社員が負傷し出社困難 ・ 受発注業務に必要なPCが破損し使用不可 ・ 東京本社のサーバが破損しデータ利用不可 |
予防・低減策 | ・ 受発注業務のカバー体制の整備 ・ 大阪拠点へのサーバ設置 ・ 受発注業務用の予備PCの社外災害対策本部設置場所への整備 |
代替策 | ・ 代替要員、予備PCによる受発注業務の継続 ・ 大阪サーバへの切替え ・ 自家発電機による電源確保 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
毎回、頭を柔軟にしてアイデアを出さなくてはならず、内容が濃いのでかなり疲れましたが、良い経験になりました。2回目の策定ステップからは東京本社全員の参加で臨みましたが、改めて良い人財が揃っていることを感じました。
東京本社の現場点検では、多くの危険個所があることに気付いていなかったことを実感しました。また、サーバや販売管理システムのバックアップ体制等、平時、有事に限らず必要であるにもかかわらず、対応が漏れていた事項が検討の過程で洗い出され、対策を決められたことは大きいです。プロジェクト全体を通して、様々な角度から考え想定することが必要だということがわかりました。
今回のプロジェクトで養った視点を生かし、今後、仕入先の海外メーカーに対するBCPの対応状況の照会や、新規メーカー選定の際にBCPを一つの目安にすることなどを検討しています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
するべきことが明確に整理され、社員の安全を確保できるという自信につながりました。今後は計画に従って、オフィス内の転倒防止や避難訓練、サーバ対応などを順次進めていきます。今回は東京本社が被災する想定でBCPを策定しましたが、商品の受入と検査、お客様への出荷作業は大阪拠点に集中しているので、喫緊に水平展開していく予定でいます。
また、BCP策定中であることをお伝えしたお客様からは高く評価していただいています。業界の中ではまだBCPが十分浸透していないので、これを機に積極的に社外へアピールし、当社の強みとして営業活動に生かしていきたいです。
コンサルタントの方からは、BCPとは文書の策定で終わらず、演習を行いPDCAを回していくことが重要であることを教えていただきました。今後もそれを忘れず、PDCAをしっかりと回し、実効性の高いBCPを維持していきたいです。