-事業内容を教えてください。
当社は私が32年前に大手事務用家具メーカーから独立して設立し、医療用事務機器と事務用品を販売しております。社名(Human Hospital & Office Total Planning Systemsの頭文字)の通り、開業医や調剤薬局など日々進化する医療事務環境を総合的にサポートしていくのが当社の経営方針です。
主力商品はカルテの整理・保管に使う自社ブランドのカルテ・ホルダーで、主要顧客は全国の病院、開業医、薬局です。また近年では、クリニック開業時の内装の請負施工、電子カルテ・システムの販売が急成長しており、売上の過半数を占めるまでに拡大しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
取引先が東京都の支援事業でBCPを策定したことを知り、当社も事業への参加を申込ました。東日本大震災の時には社長・専務とも外出中で、社員は隣接する学校の校庭に避難したものの、帰宅困難者も大量に発生するなど満足な対応がとれず、災害に対する準備不足を痛感しました。一方で、発災直後の週明け月曜には、被災された開業医様からカルテ・ホルダーなどの補充注文が舞い込み、災害後すぐに商品供給を求める現場のニーズが強いことを実感しました。このような経験から、BCPの策定を通じて当社自身が災害後もお客様のご注文に短時間でお応えできる体制づくりが必要であると同時に、当社の商品・サービスを通じて災害に強いクリニック作りの総合的なお手伝いができる力を備えたいと考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当初、主力のカルテ・ホルダーの販売事業を対象とする予定でしたが、今後は急成長している電子カルテ・システム事業に顧客が移行していき、両事業の連携が深まっていくことが予想されるため、医療用事務用品事業という形にまとめて対象としました。また地震による、従業員の負傷、在庫品の荷崩れ、本社の設備故障、本社サーバ等の停止などの被害を想定しました。
まず、電子カルテ・システム顧客のサポート業務を優先的に復旧させます。既存顧客数百件の30%からの着電を想定しましたが、主内容は停電等による不具合と予想し、応急対応を電話にて支援するのみの業務となります。これに対し、専任担当者の負傷を想定し、業務のマニュアル化や代替要員の育成を検討しました。また、カルテ・ホルダーの販売業務では、在庫出荷体制の迅速な復旧を目指します。本社倉庫の耐震対策や、運送業者の倉庫などに一時保管されている中間在庫を利用した代替出荷等の対策を採用することになりました。
対象事業 | 電子カルテ・システムを含む医療用事務用品の販売・保守事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 強震・停電により本社立体駐車場、シャッター故障 ・ 本社サーバ停止、PCの5割故障・停止 ・ 既存顧客の開業医等の3割で電子カルテ・システム故障 |
予防・低減策 | ・ 蓄電池の確保と併せた情報システムのデータ・バックアップ体制の整備 ・ 非常時の社外滞在社員との緊急連絡方法の整備と並行した代替要員の育成 ・ 本社倉庫の在庫保管庫の耐震対策の実施、飛散防止策 |
代替策 | ・ 他の拠点倉庫からの事務用品の代替出荷 ・ 蓄電池、ノートPC、WiFiを利用したバックアップ情報システムの利用 ・ 被災顧客への携帯電話でのサポート、代替機器手当の強化 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
当社の業務体制で強化すべき点が今回の作業を通じて、かなり明確になったと感じています。緊急時の対応も含め、重要な業務が限られた社員の個人的力量に大きく依存していたことを再認識し、これを組織的な運営へと進化させていくことがBCPを円滑に機能させるために必要だと強く感じました。
検討チームに参加した幹部社員たちも、コンサルタントから的確なアドバイスをいただきながら検討を積み重ねる中で、今までにない視点から自分たちの業務内容や職場の実態を見つめ直すことの重要性に気付き、安全性や防災に対する意識も高まったように感じています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
かなり盛り沢山の内容だったので、もう少し検討や内容を咀嚼する時間があればと思いましたが、多忙な業務の合間を縫って幹部社員を一堂に集めて議論するという試みは、やはりこのような機会がなければなかなか実現しなかったと思います。
カルテ・ホルダー販売事業事業も、成長分野の電子カルテ・システム事業も、これまで以上に組織力を強化して、災害時にも強い体制作りを目指し、平時の顧客対応力の強化にもつなげていきたいと考えています。また、書類飛散防止を考慮したカルテ・ホルダーや減災を考慮した新たな院内事務機器の提供など、新製品の開発も進めたいと考えます。