－事業内容を教えてください。

当社は、大手ゼネコンに対し、建設関連の専門的かつ特殊性の高いエンジニアを派遣する人材派遣を主力事業としています。当社ではエンジニアが安心して働けるよう正社員として雇用し、派遣先に派遣する常用型派遣としています。派遣される社員は、施工管理・設計・積算・事務等の業務に携わり、数百億円規模の建設現場を管理することもあり、社会インフラを支える業務を日々遂行しております。

－今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

社員が業務を行っているのは各派遣先なので、通信が混乱した東日本大震災の時は安否確認に大変手間取りました。当社にとっては社員が最大の経営資源ですので、まずは施工現場で働く社員の安全確保、社員家族の安否確認を確実に行う必要があります。また、それとともにお客様である大手ゼネコンのBCPと整合性を持った行動ルールを持ちたいということが取組の最大の理由です。

また、建設業への人材派遣を主力事業としている性質上、被災後の復興という局面において当社へのニーズが高まることも事実です。東日本大震災の時は仙台市内の補修・改修事業のニーズが増え、震災後の8月に仙台営業所を開設する運びとなりました。このように被災後の復興ニーズにも応えることも、当社が果たすべき社会的責任の一つと考えます。

－策定されたBCPの内容を教えてください。

派遣先である当社の顧客は既にBCPを策定済みの大手ゼネコンであり、安全面でもレベルの高い管理を行っています。今回、当社としては、このような環境に適応できるBCPを念頭に置いて策定を進めました。

対象事業は、当社の主力事業である労働者派遣事業としました。まずは東日本大震災時の反省から、派遣先社員の安全確保・安否確認を確実に行うため、緊急連絡網を整備し、行動指針を記した携帯BCPを身に付けることにしました。

当社は派遣先の特質上、発災後すぐに役務提供が求められる可能性があり、そのためには社員や派遣先の被災状況や稼働状況等を確認する役務管理業務を早期に起ち上げる必要があります。

今回はその業務に使用しているPCやデータの破損に備えて、ITのバックアップ対策を検討するとともに、ノートPCとポケットWi-Fiを利用して被災状況・業務再開見込み等の情報発信を暫定的に行うことにしました。また、万一、建物の倒壊等により本社事務所が利用できなくなった場合には、仙台事務所に執務場所を移動して業務を行うこととしました。

今後は、有事の際の行動基準や連絡方法、派遣再開時期、見込み請求手続き等について、お客様との調整を行う予定です。

－苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか？

発災直後の初動対応において、派遣社員は派遣先の指揮・命令系統に従わなくてはならないため、二次災害を防止するために、いかに本社と連携するか、柔軟な対応を様々に検討しました。プロジェクトメンバー全員でアイディアを出し合って様々な施策を検討し、有事に備えて事前の取り決めを行っておくことが重要という点に気付かされました。また、災害時の施工現場は危険な個所も予想されるため、災害時の行動指針を携帯BCPの裏面に印刷するといったアイディアも、そういった検討の中で生まれました。

－BCPを策定した感想をお願いします。

取引先である大手ゼネコンのBCPとの意識レベルをようやく合わせることができました。有事の際、何も準備していなければ、その場その場での判断になってしまい、適切な行動を取ることができません。今回BCPを策定したことにより、有事を想定した行動を取るための心構えができました。BCPの策定は、これがゴールではなく、策定したBCPをもとに、有事の際に迷わず行動できるように訓練・改定を継続していきたいと思います。今回の取組は本社中心でしたが、今後各部で検討を重ね、全社展開していく予定です。